開いていた大輪の菊の花

 どうも一度で上手く開かず心配していた大輪の菊の花が36,000km上空で12月26日に無事に開いていたことを今日の新聞で知ることができた。

 昨年12月18日に種子島宇宙センターからH2Aロケット11号機で打ち上げられた技術試験衛星「きく8号」が無事に初期の軌道に投入できたニュースは翌日の新聞で確認できたが、その後、12月25日から翌日にかけて行われた、折りたたんであったアンテナの展開作業で、超特大の送信用が上手くいかずに延期となったことも新聞で知ることができたが、果たしとその後の再挑戦が成功したや否やの報道が無く、郷秋<Gauche>は心配していたのであった。

 結局翌日の再挑戦で無事に送信用アンテナが展開でき、これでテニスコート1面分にもなるという超大型のアンテナが送受信用各1基、計2基開き、予定の静止軌道(東経約146度)へ約2週間かけて移動させ、その後に搭載された通信機器のチェックが開始される予定のようである。

 なぜ、静止軌道上にこれほど大きなアンテナをもった衛星を打ち上げたのかと言うと、より小さな電力での通信を可能にするためである。

 通信に用いる電波の周波数を仮に3GHzとすると(携帯電話の約2倍)その波長は10cm。1波長つまり10cmのアンテナで地上と通信を行うために1000Wの送信出力が必要だと仮定する。これに対してテニスコート1面ほどもあるアンテナを使えば、通信に必要な送信出力はおそらくは1/1000以下、つまり1W以下になるだろう。

 人工衛星搭載の機器が消費する電力(電気)は主に太陽電池から供給されるが、太陽電池の発電効率が極めて低いのはご存知の通り(宇宙空間での場合には地上の場合よりは相当効率が高いと思われるが)であり、いかに大きなパネルの太陽電池を用意しても通信機器に安定的に供給できる電力は限られる。つまり大出力の送信装置を利用するのが困難なのである。

 そこで考えたのが大きなアンテナ、つまり高利得のアンテナを使うことで送信出力を抑える、消費電力を抑えようという発想である。これは地上で用いる通信機器にもいえることで、だから衛星通信用の地上局は大きなパラボラアンテナを用いるのである。地上局が「固定」であれば電気も使いたいだけ使えるわけだからこれでいい。

 しかし、携帯電話のような可搬式・小型の通信機器を利用しようとした場合にはアンテナの大きさにも電力供給にも大きな制約を受けることになる。そこで考えられたのが今回「菊8号」に搭載した超大型のアンテナなのだろう。地上局用に大きなパラボラアンテナを用意するのではなく、宇宙局の送信出力を抑えかつ地上局のアンテナと送信出力を小さく・少なくするために、宇宙局、つまり人工衛星の方に大きなアンテナを搭載すると言う、逆転の発想である。素晴らしい!

 この超特大アンテナに助けられれば、地上で用いる通信機器はおそらくアンテナを含んで15年前の携帯電話程度の大きさのもので十分なのではないだろうか。いや、その程度の大きさの地上局用通信機器を想定し、今回のテニスコート大×2のアンテナが計画されたのだろう。

 かつて「イリジウム」という低軌道を回る多数の通信衛星を用いた携帯電話サービスがあったけれど「菊8号」はこれを静止軌道に打ち上げた1基の衛星でまかなう実験をするようである(サービスエリアは日本国内限定だろ)。低軌道を回る多数の衛星を運用するための経費が莫大だということで「イリジウム」は頓挫したはずだが、たとえ1基とは言え、静止軌道にでかい衛星を打ち上げそして運用する経費だって、結構なものだろ。

 そこで郷秋<Gauche>は、気球を使った通信システムを提案したい。日本の上空10,000~15,000m程(ジェット気流の影響も受けず航空機の邪魔にならないためにももっと高高度か?)のところに飛行船を飛ばすのだ。もちろん無人の飛行船だが、定点に留まっていられるように自動制御する。その気球に通信機器を搭載するのだ。これならば地上局の通信機器として今の携帯電話がそのまま使えるはずである。電源は燃料電池と太陽電池を併用し、定期的に地上に下して燃料の補給と機器のメンテナンスを行う。

 日本の上空に20個程の飛行船を飛ばせば全国をカバーできるのではないだろうか。人工衛星の場合、たった1基(良くても1基のバックアップ機)で運用するわけだから、故障でもしようものならアウトである。その点、郷秋<Gauche>方式「気球衛星」なら、付近の他の気球を少しずつ移動させて故障した飛行船のカバーエリアを他の飛行船が担当することも可能だ。その間に故障機を地上に降ろして修理すればいい。代替機だってすぐに上げることができるだろう。

 まっ、素人が考えるこの程度のことは既に誰かが考えているだろ。既存の技術ですぐにできそうであるにも係わらず実現していないところをみると、問題があるんだろうな。この程度のアイディアでは商売にはならないか・・・。

注:初出時に「気球」としたものを、定点に留めるためにはより制御しやすい飛行船型だろうと考え、そのようにあらためてみました。(1/9早朝)


 ちょっと寂しい冬枯れの写真が暫く続きましたので今日の1枚はこれ。乙女椿です。西洋のバラにも匹敵する「日本の銘花」と言われることもあるようですが、盛りを過ぎても木に付いたまま褐色に変わって行く姿か好きではないという方も少なくないようですね。
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