アブソリュート・エゴ・レビュー

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続・座頭市物語

2011-01-19 19:25:31 | 映画
『続・座頭市物語』 森一生監督   ☆☆★

 座頭市シリーズ二作目。あの名作『座頭市物語』の次でありながら、妙に評判が悪い作品である。座頭市シリーズはここまでモノクロで、次の『新・座頭市物語』からカラーになる。

 評判が悪いのでこれまで観ていなかったが、やっぱり観てみたいというのでついに観た。そして納得した。確かに出来が悪い。部分部分がうまく噛みあってないし、プロットは痩せている。オマケばかりが多い。まあそれでも、『座頭市あばれ火祭り』よりはましだと思うが。

 今回の敵である片腕の浪人を演じるのは城健三朗、後の若山富三郎。勝新太郎の実兄である。あまり映画で観たことはないがぱっと見貫禄があるので、そんなに悪くもないんじゃないかと期待したが、ダメだった。演技もヘタ、殺陣もヘタである。他ではどうか知らないが、少なくともこの映画ではヘタである。殺陣は片腕ということでやりづらかったのかも知れないが、ぶんぶん刀を振り回すだけでとても強そうには見えない。妙に無口な役なのだが、人に話しかけられて何も答えない、という場面が最初は特に多く、そういう時の芝居に含蓄も何もあったもんじゃないため、ひょっとしたらセリフを忘れたんじゃないかと心配になる。こんな感じだから、この浪人がどんな奴なのか後半になってもさっぱり分からない。

 それから音楽。初期の座頭市は伊福部さんが音楽をやっているのが多いが、あれが大きな魅力になっていると個人的には思う。『座頭市物語』『新・座頭市物語』『座頭市兇状旅』どれもそうだ。勇壮かつ重厚、それでいて叙情性と哀切さを湛えた見事なスコアで、あれで作品の魅力が3割方アップしている。伊福部さんは決してゴジラだけの人ではないのだ。が、本作の音楽は伊福部さんじゃない。これも魅力に欠ける理由の一つだ。おまけに、なんだか突然変なところで音楽だけどーんと盛り上がったりする。あれは何なんだろうな。

 『座頭市物語』の続編ということで期待した万里昌代の再登場もほとんど顔見せ程度だし、平手造酒の回想も刺身のツマでしかなかった。ただ、第一作でも思ったが、悪役である飯岡の親分(柳永二郎)はいい。腹芸がうまいんだかヘタなんだかよく分からない悪党オヤジで、ちょっとべらんめえ調のセリフ回しがいい感じだ。特に、陰でせこく座頭市の悪口を言っている時が最高である。

 あと、ラストもよく分からない。ブツ切れだ。斬新なエンディングにしたかったのかも知れないが、成功しているとは言いがたい。あの名作『座頭市物語』の直接の続編がなぜこうなってしまうんだろう。不思議だ。まあとりあえずこの作品は、座頭市シリーズの大ファンでなければ後回しにした方がいいと思う。


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