アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

BEST 1997-2001

2006-04-23 21:07:46 | 音楽
『BEST 1997-2001』 小野リサ   ☆☆☆☆☆

 最近、よく小野リサを聴いている。ボサノバは私にとってリーチが短い音楽だと前に書いたが、小野リサは完全に例外である。いつ聴いても、どこで聴いても、どんな気分の時に聴いてもいい。もちろん、アストラッド・ジルベルトやジョビンより小野リサの方が好きだ。

 小野リサのアルバムは大別すると正統ボサノバものと企画物、つまりシャンソンやスタンダード曲を小野リサ流にアレンジしたものに分かれると思うが、このベスト版はその両方がバランス良く収められていて、彼女の音楽活動の全体像を掴むには最適だ。幅広いオーディエンスにアピールする内容だと思う。初期のベストである『セレソン』も良いが、こっちはもっと正統ボサノバ寄りである。 

 まず一曲目の『RED BLOUSE』が鮮烈だ。清涼水のようなコーラスとスキャットがはじける。そして二曲目の『MOONLIGHT SERENADE』でシックな雰囲気に。このベストは構成がとても良く、曲のつながりがナイスなのである。ボサノバ定番の『SAMBA DE VERAO』なんかも挟みつつ、映画音楽の『MOON RIVER』や『SMILE』、小野リサ・オリジナルの『PRETTY WORLD』『DREAM』などがバランス良く配置されている。最後はしっとりしたオリジナルの『ANGEL'S EYES』。

 色んなアルバムからとられているので、アレンジやミックスもそれぞれ違っている。アルバム『PRETTY WORLD』からの『PRETTY WORLD』『I WISH YOU LOVE』『MY CHERIE AMOUR』はリズムトラックがラウンジ系でキレが良く、都会的なアレンジだ。曲調もポップで、『PRETTY WORLD』なんて最高に愛らしい曲。かと思うと『FLOR DE YEMANJA』はハワイアン風で、ヴォーカルのエコーが包みこむように柔らかい。『MOON RIVER』はこのアルバムにしか収録されていないらしい。小野リサの声はどんな曲でも常に美しいが、この『MOON RIVER』の優美さはまた格別。

 このアルバムを聴くと、間違いなくそれぞれのオリジナルアルバムを聴きたくなる。そして不幸にしてまだ小野リサを知らなかった人は、こんなアーティストが日本人にいるということに驚くのである。


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