崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

麻薬「気持ちよさ」

2014年06月06日 05時24分29秒 | エッセイ
 麻薬に依存する人が多いという深層を分析する番組をみた。それを見ながら私はもっと深層の問題を考えた。それは麻薬の持つ快楽性にあると知っている。それはセックス、ギャンブル、アルコールなどに求める快楽性に近く、それと深く関わる物質が麻薬であろう。専門家によれば麻薬にはドーパミンがあり、「快感」を司る脳の各部位を巧みに刺激するという。人は疲れやストレスから開放され、「気持ちよさ」の快楽によって多かれ少なかれ幸せを求めている。しかし快楽に溺れてしまうと逆に不幸になる。人はそれぞれ快感を憶えているはずである。それは幸せな感情であり、生きる力にもなっている。加齢や趣味などの多様化によって身体的「気持ちよさ」より文化的な「気持ちよさ」に代わっていく。それは加齢による衰退であり、人生の完熟でもある。しかしニュースによれば日本で中高年世代に麻薬依存者が多く、さらに増えていくという。
 取り締まりの専門家たちは高度な知識を持って語っている。それを聞きながらもっと深層の問題を期待した。「気持ちよさ」は人間を幸せにするが同時に人間を堕落させる。聖人は言う。慾を抑制するようにと。社会は文化装置としてそれを発散、禁欲させている。幸せばかり求めるのではなく不幸も受け入れたバランスのある生活によって麻薬などとは縁を持たないようになるのではないだろうか。、