崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「女性宮家」を反対

2012年04月11日 05時44分27秒 | エッセイ
 女性皇族がご結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設に有識者のヒアリングが行われている。その伝統は日本文化のもっとも骨格的なものであり、慎重にする必要があろう。文化人類学や社会学などは半世紀以上親族、家族に関する研究が集中しており、今もその研究は盛んな方である。世界的に広く父系制と母系制、また両系制の社会がある。それはそれぞれの社会の重要なルールとも言える。車や人の道路の右側通行あるいは、左側通行のような規則である。それを右通行、左通行を同時にすることはできない。それは右を優先するから左を差別することではない。差別の傾向がある社会では男女差別になることがあっても根本的には別の問題である。夫婦別姓も同様である。父系単系による「男系男子」制度を「父系女子」「女系女子」に広げるということになる。これらの学界の常識を踏まえた上で論じているのだろうか。ジャーナリストなど「有識者」とは誰なのだろうか。このような学問の成果をどこまで参考にしているか。懸念がある。
 そもそもなぜこの議論が始まったのだろうか。皇族の血統では男子が足りなくなるというところからであろう。次男系の男子がいる。血統は探せば無限につながっている。韓国の李王朝の25代の哲宗は血統により江華島の百姓から王になった例もある。今日本でそれに時代の変化、男女平等、皇族を広げる等々理由づけ、理屈、正当化を用意しながら政府主導で行っている。私には李王朝の話のように聞こえる。この論理を極端に尊重するなら天皇も選挙で選んでも良い。もう少し極端に言うと天皇制を無くしても良いのではないか。私は戦前の国家神道の専制国家の被害を知らないわけではない。しかしいわば「象徴天皇」の機能も大きいことを認めざるを得ない。私は「有識者」ではなく、ただの「識者」として現在の制度を守ることを提言したい。