崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「栄転」と「左遷」

2012年04月04日 05時08分09秒 | エッセイ
 数日間の新聞をまとめて目を通して読んだ。3月の年度末から4月の新年度の始まりになって人事の変化が目立つ。公務員の人事異動からテレビ番組なども変わったものがあり、隣の大学長や新聞記者なども代わった。卒業式から入学式の記事も変化の節目を見せている。時間の流れの節目を強く感ずるが、一方、人の転入など地域的な移動も激しい季節である。2年間時々会った3人の記者が転出したことが分かった。中には下関から東京に転出した人がいた。電話で「栄転おめでとう」と言った。ある局長が転入した人を紹介するために一緒に訪ねてこられるという話もある。転入には一般的には「栄転」と「左遷」という意識が残っている。
 王朝時代には都から田舎へは左遷、あるいは島流しもあった。逆に上京は立身出世を意味した。韓国の諺に「人は都へ、牛馬は田舎へ」という言葉がある。しかし左遷と島流しの地から偉大な人物も多く出たことがある。私が心から尊敬する歴史的人物の二人が丁茶山と尹善道である。丁氏は島流されている間に500冊余を著述した。私が下関に赴任してまず尹の「漁夫四時詞」を読み直した。現在は辺鄙な地域、島流しの観念はなくなったが、もっと離島などに左遷されるかのように思う人はまだいるかもしれない。地域と密着して人生を磨くチャンスと思ってほしい。