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フランス語になった俳人たち(16)

■旧暦7月9日、金曜日、

(写真)新宿の空

今日は、用があったので、いったん4時に起きたのだが、なぜか、一日中、ひどい耳鳴りに悩まされた。午後、叔母を病院へ。夜になっても体調が安定しないので、江戸川へ虫の声を聞きに行く。夜の太極拳となる。深夜、マエストロにメールを書く。マエストロの小説の一つは、ルカーチの『小説の理論』を踏まえると、非常に示唆的なモチーフになっている。タイトルは「The Flying Dutchman」である。



"Watch out for that horse!
Watch out!"
mother sparrow calls

sore uma ga uma ga to ya iu oya suzume

それ馬が馬がとやいふ親雀

by Issa, 1818



雲をりをり人をやすめる月見かな  芭蕉

貞亨2年。『春の日』所収。『真蹟拾遺』では「西行のうたの心をふまえて」とある。西行の歌「なかなかに時々雲のかかるこそ月をもてなすかぎりなりけり」をふまえる。


Aux admirateurs de lune
les nuages parfois
offrent une pause


※Traduction de Corinne Atlan et Zéno Bianu
HAIKU Anthologie du poème court japonais Gallimard 2002


月をめでる人々を
雲が折々
休ませる


■意味は、フランス語訳者のとおりなのだろう。しかし、これだと三行詩の域を出ない気がする。このとき、「月見」という言葉が重要なポイントになると思うが、月見に相当するフランス語は、その習慣がなければ、たぶん、ないのだろう。les admirateursは男性形複数だが、この言葉で、月見をしている人々のジェンダーを始めて意識した。もちろん、男性形で男女混合の集団を表わしているとも考えられるが、原句だけを読む場合、こういったことは意識に上らない。そう言えば、庵の風流人と言われれば、無意識に男性をイメージしていないだろうか。長明、兼好など、中世的な価値の完成者たちが男性だからだろうか。



Sound and Vision




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