verse, prose, and translation
Delfini Workshop
一字一書(4):愛(左手による)
2017-01-29 / 書
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/a6/bdaf82ec6e7ed81470d0f28409bc79ff.jpg)
愛の字の擦れて太し梅の花
※ この字ほど、人間にとって大切で実行するのが難しい字はないだろう。
白川静の常用字解は、たいへん、面白いことを言っている。
「会意。あい(漢字が出ない)と心を組み合わせた形。後ろを顧みてたたずむ人の形であるあいの胸あたりに、心臓の形である心を加えた形。立ち去ろうとして後ろに心がひかれる人の姿であり、その心情を愛といい、「いつくしむ」の意味となる。国語では「かなし」とよみ、後ろの人に心を残す、心にかかることをいう。」
愛は、立ち去るときにはじめて、現れる心情であり、必ずしも、人間だけがその対象ではないと思う、故郷や、モノ、自然なども入るだろうと思う。愛は、捨てる、立ち去る、そのときになってはじめてはっきりわかる。日本人の行く秋などの季節を惜しむ心情も、愛の典型的なものだろう。
愛の起源は、立ち去るときに心が残ることを言うから、対象や人と心がつながっていることを言うのだろうと思う。手本の中で、このイメージに近いのは、李白の書いた「愛」だった。現代では、そのつながり方は、かすかになっている。意外にも、代表的な手本である王義之や顔真卿には、「愛」の文字はない。愛は、きらびやかものではなく、ひっそりと、個人的で、不器用で、トンチンカン―そんなイメージがある。書きなれている右手ではなく、左手で書くことで、この「個人的」なイメージを出せないか、と考えた。
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