verse, prose, and translation
Delfini Workshop
往還日誌(27)
■8時起床。昨日、アマゾンで2500円で調達した毛布が実によく機能してくれた。
上洛の夜や帰山の夜は、いつも疲れていて眠れないことが多く、翌日の仕事が苦しいことになる。
その反動で、その翌日、2日目はよく眠れる。
朝、御所の迎賓館横の新しいエリア、「森の博物館」を見つけ、そこで、ストレッチや筋トレ、気功を行う。
ここは、自然関係の本が小屋に置かれ、その周囲に、木製のベンチが配され、そこで親子で本を読めるようになっている。周囲は、植生豊かな自然なので、野鳥が多く来ている。
気功を切り倒された欅に座って行っていたところ、やまがらが二羽、次々に、すぐ近くまで挨拶に来てくれた。
天皇制のような王権に限らず、権力機構の内側にいると、その外に広大な自然の生態系が広がっていることを見失う。
人間の権力システムは、そうした生態系に浮く根のない(原理的根拠のない)浮島に過ぎない。人間に指図はできても、夏鳥が御所へ帰ってくることを、止めることはできない。
王権を考える際に、御所を貫く自然に注目してみようと思っている。
出町商店街で、衣類を調達するため、店を探したが、あいにく、サイズの合うものがなく、もう一軒の衣料品店は棚卸で閉まっていた。ゑびす屋で豆腐(きぬ、もめん、新もめん?)、長崎のかまぼこ、チーズ、牛乳などを購う。
あとは、ひたすら仕事。きょうは、目のことを考えて早く上がった。
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往還日誌(26)
■朝6時半に起きると、窓の外で鳶が啼いている。室温8.3度、湿度61%。
日が長くなったのが、京都へ戻るとよくわかる。夕日の色も明らかに冬夕焼けよりも優しい色になっている。
25日は珈琲の日だったので、初めて「ライオンキッチン」で食後に、アメリカンを飲んだ。美味だった。一定庵で珈琲を飲むために、白いライオンのカップを購入した。
「アイハート」で当座必要な食品の買い物。ファミマで水3本と京都新聞を購う。
詩人の柴田三吉さんからハガキが届いていた。詩誌『東国』165号に掲載した私の作品に対する感想をいただく。とても面白かったとのこと。一人で暮らすと、こういうハガキが嬉しい。
高崎線、新幹線、ともに車中は、ずっと、昨日締め切りの翻訳原稿の作業を行う。人身事故で、東京駅まで行かずに、上野で終点になり、のぞみに間に合うかどうか、少々焦ったが、間に合った。
一定庵でも、ずっと、このルカーチの『社会的存在の存在論』のドイツ語と向き合う。内容的には、かなり面白く引き込まれるが、難しい箇所が2、3あり、一応の解釈は出したが、まだ、読み込みが必要かもしれない。
原稿を送った後、エコノミストのTさんからラインで送っていただいた岩井俊二監督の1時間強の短編映画『チャンオクの手紙』を一通り観る。映像がとても美しい。
内容的には、年代や性の違いで、意見が分かれるかもしれない。そこに描かれた韓国の現代女性像は、言葉ではなく行動に注目すると、日本の男性から見た日本の望ましい女性像が、韓国の現代家族に投影されているように感じた。
フェミニズムの問題は、男性にとっては、言論ではなく、日常実践の中でしか、語れない(語るのではなく行動するのだが)。つまり、非常に身近な家族形成の中で、家族にどう評価されているのか、という点が原点だろう。
これは、本当に難しいことである。仕事に追われ心に余裕がなかったり、相性の問題があったり、育った環境や性よる解釈の違いがあったり。愛情というのは、それが実現し持続するのは、簡単なようで、至難のことなんだと思う。
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往還日誌(25)
■御所には、東エリアにグラウンドがある。子どもたちが野球をしている。
申し込めばだれでも使用できるそうである。
ぼんやり、子どもたちの歓声を散歩しながら聞くともなく聞いている。
その聲が、若宮の森の中学校のグラウンドの歓声の中に聞こえる。
校庭の歓声が御所の子どもたちの光景を一瞬、発現させる。
それは幻ではなく、確たる現実の詩である。
御所のグラウンドの歓声の中に、
森のグラウンドのソフトボールの女の子たちの歓声が聞こえたとき
それは、「原故郷としての森」――寂しさと郷愁と憧れの源泉となるのだろう。
一定庵に持ち込んだ炊事道具は、ひとわたり使用してみた。
この中で、面白いのは、便利だからと家人が買って持たせてくれたフライパンである。フライパンを二つ重ねた構造をしている。蒸し焼きにするためである。ここに、魚や野菜や肉を入れて、火にかけるだけで、それなりの料理ができる。
まだ、肉料理と野菜料理は試していないが、鯖の西京漬は焼いてみた。焼き具合はとてもいいのだが、一つ問題がある。それは、使用後に洗っても、鯖の油が完全には落ち切らずに、匂いが残るのである。
まだ、トースターがないので、このフライパンで食パンを焼いたのだが、上手く焼けるが、魚の匂いが移る。
さて、どうしたものか。
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