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一日一句(1295)







秋の暮この世の聲の深さかな






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連作「夏草」








夏草






夏草や夢の跡には夢ひとつ


夏草をめぐるいのちの月日かな


夏草に一本天をめざすあり


思ひ出を生くる儚さ白日傘


原爆忌終つてはじまる戦あり


夏の月深閑としてデモの空


夏の月宿らば宰に悲のこころ


草の木の海の光の原爆忌


大統領もとをただせば裸の子


手花火や闇懐かしき聲満ちて


かなかなや死者は戦を許すまじ


八月や空き地にのこる空ひとつ


墓参けんちゃん少尉二十歳


八月の終ることなく七十年


そこのひと南瓜を煮るもまつりごと


あつてなき生死の境踊の輪


白日傘ほのと微笑を浮かべをり


端居して風のやうなるひとの聲


動く葉は天の果てなり大夏木


風鈴やひたと旅する星の音












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一日一句(1294)







色替へて渋谷の地下は秋深む






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詩的断章「すげん」







すげん


柿の木の
影が
畳みにきれいに落ちて
その光には
華やかな
しづけさ
があったから
晩秋ではなかったか
なぜか わからないが
午後だったように 
 思う

突然 はいはいの弟が
よちよち
歩きだしたのに
びっくりして
父に
報告に行った 五歳くらいだったか
これでしゃべったら
すげーな と
囃したてていると 突然

すげん

と低く鈍い聲が
深い眠りから
いま 目ざめたように
六畳に放たれた

しゃべった しゃべった
お父ちゃん しゃべったよ
すげーな すげーな

聲は聲に呼ばれ そして
もうひとつの聲をもとめる

おれ すげん
すげーさ すげーよ

後年
何回も
話題にしたが
弟はこの瞬間を
まったく憶えてない
裸のひとりの人間が
この世界に現れた
美しい瞬間だった

(金がないと
聲も出ない

残念ながら 真理である
大人になると 
社会が聲になる

わたしは
この世の最初の言葉を
なんと口走ったのか
とても気になるが
それを知っているひとはもういない
誉められた
感触だけが 春風のように
かすかに
残っている




初出:「浜風文庫」







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一日一句(1293)







色鳥や色とりどりの朝の聲






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一日一句(1292)







新米の力いただく朝かな






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一日一句(1291)







新米は湯気にうれしき白さかな






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一日一句(1290)







凩や東へ出れば中山道






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一日一句(1289)







スナックは演歌流るる十三夜






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一日一句(1288)







新米や腹の底から力出て






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