西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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『写真家ナダール』

2017年01月23日 | サンド・ビオグラフィ
『写真家ナダール - 空から地下まで十九世紀パリを活写した鬼才』
小倉 孝誠 (著)
単行本: 203ページ
出版社: 中央公論新社 (2016/9/7)
言語: 日本語


フェリックス・ナダール(1820-1910)、本名フェリックス・トゥルナションは、19世紀フランス文化を語るうえで逸することのできない名前である。
文化史的には、今日彼の名前はもっぱら写真術とその普及との関連で喚起されるだけだが、生前のナダールが関わりを持った世界はじつに多様で、手を染めた分野は多岐にわたる。
風刺画、ジャーナリズム、写真、気球飛行など、彼が活躍した領域が19世紀と深く切り結んでいるという意味で、ナダールはまさに時代の寵児だった。

その行動様式、活動分野、自己表現は近代フランスの変遷と共振する。
彼の逡巡、挫折、そしてある種の軽薄さまでもが、彼が生きた時代を映しだしている。
1820年生まれの彼は、作家で言えばボードレールやフロベールと同じくポスト・ロマン主義世代に属し、クールベら写実主義画家と同世代、印象派よりも少し年長であり、音楽家ロッシーニ、ベルリオーズらと交流があった。
第一次世界大戦が勃発する4年前に亡くなっているから、19世紀のほぼ全体を生き抜いたことになる。
当時としては稀有な長寿に恵まれたナダールは、進歩と加速化の世紀を軽快な足取りで通過し、時代のあらゆる重要な局面に遭遇した。
彼の生涯と業績をたどることが彼の時代を再構成することに繋がるのは、そのためである。

世界初の空中写真、地下水道の照明撮影、デュマ、ユゴー、サンドなどの肖像写真。ボヘミアン的作家、ジャーナリスト、風刺画家、気球冒険家、熱血共和主義者という多彩な顔をもつ近代写真術の開祖の生涯と業績を辿り、書簡と自伝的著作や様々な証言に依拠しながら同時代の文化空間を再構成する。初の本格的ナダール論。図版多数。

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