『星の王子さま☆学』
片木 智年 著
「大のおとな」が『星の王子さま』について本を書いたという ので、実は今のところ、こそこそとしている。が、おりからの 新訳ラッシュ、日本でもこのサン=テグジュペリの遺品の価値が認知されて、おじさんだって『星の王子さま』ファンだと胸をはれる日も近いのではないか。
それにしてもこの本、世界百数十の言語に訳され、聖書とも比較されるわりには、つまらなかったとか、あまり覚えていないという人が多すぎる。「児童書」という分類がいけないのだ 。もうないのかもしれないが「課題図書」といって、子どもが 強制的に読まされる仕組みも疑問だし、「童心賛歌」といった作品をおおう奇妙な神話もいただけない(そもそも童心って何?)。
「大切なものは目には見えない」「この世で唯一のバラ」など、いろいろ有名なモチーフが散りばめられた作品だが、原文を見直すと、さまざまな深いメッセージが見えてくる(「行動する作家」サン=テグジュペリは、執筆当時、ナチスの電撃作戦に屈した故郷フランスを離れ、安全なニューヨークへ亡命中。そんな状況も無視できない)。
そもそも、この小品、ヨーロッパのアレゴリー文学の伝統を引き、いく層にも入り組んだ意味をもつ小説で、一筋縄でいかないのはあたりまえなのである。
ずいぶん長い間、この作品とは付き合ってきた。いい加減、 卒業しようと思って、この際、言いたいことを言って終わりにしようとした。が、書き終わった今、また、いろいろと疑問が浮かぶ。どうやらきりがないようだ。
ーーー
書評
日本経済新聞 2006年4月4日夕刊「文化」欄
週刊朝日 2006年2月24日号の「Books Browsing(話題の新刊紹介)(96頁)」で紹介されました。
出版ニュース 2006年2月中号(26頁)
ーーー
【目次】
はじめに
地中海の発見
大人になってからの『星の王子さま』
第一章 「星の王子さま学」ことはじめ
タイトルのいいたかったこと
所有の寂しさ――ちっぽけな君主さま
絆の魔法――「この世でたったひとりのひとになる」
「きまりがいるんだよ」――均質な時間と虚無の否定
「麦を吹く風」――意味を与えること
亡命生活と欧州戦線――「かんじんなことは目に見えない」
「月の色をした環」蛇との出会い
「王子さま」の秘密――もう一人の自己(アルテル・エゴ)か導き手か
第二章 『星の王子さま』と子ども時代
サンテクスと子ども時代=「誰もがそこからやってきたこの広大な領土」
「世のなかに一つしかない」バラ
心においしい水――「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているから」
成長の物語
「王子さま」とイエス・キリスト
「犠牲」の意味と Prince の救済
「おとなは、だれも、はじめは子どもだった」――誰のために書かれたか
第三章 『星の王子さま』とラブストーリー
「ホロリとするほど美しい花でした」――バラの花と愛のレッスン
「ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだ」――狐のレッスン
「それじゃ、ただ咲いてるだけじゃないか」――故郷のバラだけのために
『夜間飛行』と男と女
『人間の土地』と愛
第四章 奇妙な星の住人たち
七つの星と七つの罪
王さま(一〇章)
うぬぼれ男(一一章)
呑み助(一二章)
実業家=ビジネスマン(一三章)
街燈点燈夫(一四章)
地理学者(一五章)
スイッチマンとあきんど(二二、二三章)
戯画と幻想
第五章 『星の王子さま』小事典
レオン・ヴェルト (Leon Werth)
「ウワバミ」(boa)
象を飲み込んだウワバミ
中国とアリゾナ
少年の出現(cette apparition)
飛行機の故障
羊(mouton)と羊(belier)
「王子さま」の光
まっすぐどんどんいく
「おとなの人たちがよくない」
番号、数字
バオバブ
日の入り
おしゃれな花
きれいだなあ!
三つの火山
星の住人たち
はかなさ
毒蛇との契約
バラ
狐
狩人とめん鳥
「かんじんなことは、目に見えない」
「ひまつぶし」
責任
もう狐どころじゃない
「人間の外がわ」=「ぬけがら」
バラとランプ
井戸の水
「古いこわれた石垣」
「機械のいけないとこ」
星への帰還
鈴
四六判/並製/224頁
初版年月日:2005/12/10
ISBN:
978-4-7664-1221-5
(4-7664-1221-4)
Cコード:C0098
税込価格:1,890円
片木 智年 著
「大のおとな」が『星の王子さま』について本を書いたという ので、実は今のところ、こそこそとしている。が、おりからの 新訳ラッシュ、日本でもこのサン=テグジュペリの遺品の価値が認知されて、おじさんだって『星の王子さま』ファンだと胸をはれる日も近いのではないか。
それにしてもこの本、世界百数十の言語に訳され、聖書とも比較されるわりには、つまらなかったとか、あまり覚えていないという人が多すぎる。「児童書」という分類がいけないのだ 。もうないのかもしれないが「課題図書」といって、子どもが 強制的に読まされる仕組みも疑問だし、「童心賛歌」といった作品をおおう奇妙な神話もいただけない(そもそも童心って何?)。
「大切なものは目には見えない」「この世で唯一のバラ」など、いろいろ有名なモチーフが散りばめられた作品だが、原文を見直すと、さまざまな深いメッセージが見えてくる(「行動する作家」サン=テグジュペリは、執筆当時、ナチスの電撃作戦に屈した故郷フランスを離れ、安全なニューヨークへ亡命中。そんな状況も無視できない)。
そもそも、この小品、ヨーロッパのアレゴリー文学の伝統を引き、いく層にも入り組んだ意味をもつ小説で、一筋縄でいかないのはあたりまえなのである。
ずいぶん長い間、この作品とは付き合ってきた。いい加減、 卒業しようと思って、この際、言いたいことを言って終わりにしようとした。が、書き終わった今、また、いろいろと疑問が浮かぶ。どうやらきりがないようだ。
ーーー
書評
日本経済新聞 2006年4月4日夕刊「文化」欄
週刊朝日 2006年2月24日号の「Books Browsing(話題の新刊紹介)(96頁)」で紹介されました。
出版ニュース 2006年2月中号(26頁)
ーーー
【目次】
はじめに
地中海の発見
大人になってからの『星の王子さま』
第一章 「星の王子さま学」ことはじめ
タイトルのいいたかったこと
所有の寂しさ――ちっぽけな君主さま
絆の魔法――「この世でたったひとりのひとになる」
「きまりがいるんだよ」――均質な時間と虚無の否定
「麦を吹く風」――意味を与えること
亡命生活と欧州戦線――「かんじんなことは目に見えない」
「月の色をした環」蛇との出会い
「王子さま」の秘密――もう一人の自己(アルテル・エゴ)か導き手か
第二章 『星の王子さま』と子ども時代
サンテクスと子ども時代=「誰もがそこからやってきたこの広大な領土」
「世のなかに一つしかない」バラ
心においしい水――「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているから」
成長の物語
「王子さま」とイエス・キリスト
「犠牲」の意味と Prince の救済
「おとなは、だれも、はじめは子どもだった」――誰のために書かれたか
第三章 『星の王子さま』とラブストーリー
「ホロリとするほど美しい花でした」――バラの花と愛のレッスン
「ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだ」――狐のレッスン
「それじゃ、ただ咲いてるだけじゃないか」――故郷のバラだけのために
『夜間飛行』と男と女
『人間の土地』と愛
第四章 奇妙な星の住人たち
七つの星と七つの罪
王さま(一〇章)
うぬぼれ男(一一章)
呑み助(一二章)
実業家=ビジネスマン(一三章)
街燈点燈夫(一四章)
地理学者(一五章)
スイッチマンとあきんど(二二、二三章)
戯画と幻想
第五章 『星の王子さま』小事典
レオン・ヴェルト (Leon Werth)
「ウワバミ」(boa)
象を飲み込んだウワバミ
中国とアリゾナ
少年の出現(cette apparition)
飛行機の故障
羊(mouton)と羊(belier)
「王子さま」の光
まっすぐどんどんいく
「おとなの人たちがよくない」
番号、数字
バオバブ
日の入り
おしゃれな花
きれいだなあ!
三つの火山
星の住人たち
はかなさ
毒蛇との契約
バラ
狐
狩人とめん鳥
「かんじんなことは、目に見えない」
「ひまつぶし」
責任
もう狐どころじゃない
「人間の外がわ」=「ぬけがら」
バラとランプ
井戸の水
「古いこわれた石垣」
「機械のいけないとこ」
星への帰還
鈴
四六判/並製/224頁
初版年月日:2005/12/10
ISBN:
978-4-7664-1221-5
(4-7664-1221-4)
Cコード:C0098
税込価格:1,890円