西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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『星の王子さま☆学』

2012年06月13日 | サンド研究
『星の王子さま☆学』
片木 智年 著

「大のおとな」が『星の王子さま』について本を書いたという ので、実は今のところ、こそこそとしている。が、おりからの 新訳ラッシュ、日本でもこのサン=テグジュペリの遺品の価値が認知されて、おじさんだって『星の王子さま』ファンだと胸をはれる日も近いのではないか。
 それにしてもこの本、世界百数十の言語に訳され、聖書とも比較されるわりには、つまらなかったとか、あまり覚えていないという人が多すぎる。「児童書」という分類がいけないのだ 。もうないのかもしれないが「課題図書」といって、子どもが 強制的に読まされる仕組みも疑問だし、「童心賛歌」といった作品をおおう奇妙な神話もいただけない(そもそも童心って何?)。
「大切なものは目には見えない」「この世で唯一のバラ」など、いろいろ有名なモチーフが散りばめられた作品だが、原文を見直すと、さまざまな深いメッセージが見えてくる(「行動する作家」サン=テグジュペリは、執筆当時、ナチスの電撃作戦に屈した故郷フランスを離れ、安全なニューヨークへ亡命中。そんな状況も無視できない)。
 そもそも、この小品、ヨーロッパのアレゴリー文学の伝統を引き、いく層にも入り組んだ意味をもつ小説で、一筋縄でいかないのはあたりまえなのである。 
 ずいぶん長い間、この作品とは付き合ってきた。いい加減、 卒業しようと思って、この際、言いたいことを言って終わりにしようとした。が、書き終わった今、また、いろいろと疑問が浮かぶ。どうやらきりがないようだ。

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書評
日本経済新聞 2006年4月4日夕刊「文化」欄
週刊朝日 2006年2月24日号の「Books Browsing(話題の新刊紹介)(96頁)」で紹介されました。
出版ニュース 2006年2月中号(26頁)
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【目次】
はじめに
地中海の発見
大人になってからの『星の王子さま』

第一章 「星の王子さま学」ことはじめ
タイトルのいいたかったこと
所有の寂しさ――ちっぽけな君主さま
絆の魔法――「この世でたったひとりのひとになる」
「きまりがいるんだよ」――均質な時間と虚無の否定
「麦を吹く風」――意味を与えること
亡命生活と欧州戦線――「かんじんなことは目に見えない」
「月の色をした環」蛇との出会い
「王子さま」の秘密――もう一人の自己(アルテル・エゴ)か導き手か

第二章 『星の王子さま』と子ども時代
サンテクスと子ども時代=「誰もがそこからやってきたこの広大な領土」
「世のなかに一つしかない」バラ
心においしい水――「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているから」
成長の物語
「王子さま」とイエス・キリスト
「犠牲」の意味と Prince の救済
「おとなは、だれも、はじめは子どもだった」――誰のために書かれたか

第三章 『星の王子さま』とラブストーリー
「ホロリとするほど美しい花でした」――バラの花と愛のレッスン
「ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだ」――狐のレッスン
「それじゃ、ただ咲いてるだけじゃないか」――故郷のバラだけのために
『夜間飛行』と男と女
『人間の土地』と愛

第四章 奇妙な星の住人たち
七つの星と七つの罪
王さま(一〇章)
うぬぼれ男(一一章)
呑み助(一二章)
実業家=ビジネスマン(一三章)
街燈点燈夫(一四章)
地理学者(一五章)
スイッチマンとあきんど(二二、二三章)
戯画と幻想

第五章 『星の王子さま』小事典
レオン・ヴェルト (Leon Werth)
「ウワバミ」(boa)
象を飲み込んだウワバミ
中国とアリゾナ
少年の出現(cette apparition)
飛行機の故障
羊(mouton)と羊(belier)
「王子さま」の光
まっすぐどんどんいく
「おとなの人たちがよくない」
番号、数字
バオバブ
日の入り
おしゃれな花
きれいだなあ!
三つの火山
星の住人たち
はかなさ
毒蛇との契約
バラ

狩人とめん鳥
「かんじんなことは、目に見えない」
「ひまつぶし」
責任
もう狐どころじゃない
「人間の外がわ」=「ぬけがら」
バラとランプ
井戸の水
「古いこわれた石垣」
「機械のいけないとこ」
星への帰還


四六判/並製/224頁
初版年月日:2005/12/10
ISBN:
978-4-7664-1221-5

(4-7664-1221-4)
Cコード:C0098
税込価格:1,890円
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