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頂いたコメントへのお返事~「元検弁護士のつぶやき」様

2006年08月28日 20時29分56秒 | 法関係
元検弁護士のつぶやき 無資格の助産行為(続報その2)commentscomments


お返事のコメントを頂いて有難うございました。長いコメントになりそうなので、記事に書くことと致しました。
まず、先のコメントでの非礼をお詫び申し上げます。見ると、不躾な書き方になってしまっていました。すみませんでした。


以前から思っていたことですが、法学関係者の方々は「具体的にはコメントできない」ということが多いと思うのですけれども、それは責任ある立場におられるので止むを得ないことなのだろうな、とは思っておりました。しかしながら、「法学の専門家」以外には、「法学的検討」というのは困難であることは当然でありましょう。法学の専門家以外であれば、所詮は「素人の思いつき」に過ぎないからです。私は今までに法関係の記事を書いてきましたが、いずれも素人考えの積み重ねでしかありません。警察の裏金事件に対する知事権限にしても、救急救命士の気管内挿管事件、市立札幌病院事件などにしてもそうです。結局、法学関係の方々が真剣に検討しない限り、同じ事が繰り返し起こってしまうのです。


素人の勝手な推測で申し訳ありませんが、立法趣旨から考えれば、医師法にしてもその他関連・類似法にしても、行為者の「免許」ということで国民の安全を担保するのと、同時に相応の責任を負うことから行為者の権利・地位を守る為に無免許者の「業」を禁止しているのであり、そもそも「医療従事者の行為」について、既に日常的に「業として行われているもの」の違法性を処罰する為に業の規定があるのではないと思います。刑事罰をもって特定医療行為の禁止を周知し、「通知」の解釈如何によって事後的に罰するというものではないはずなのです。行政側の通知というのは、出している役人の無知等から現場を無視したものであることも有り得るのに、その「通知」を金科玉条のように「絶対評価」として法的根拠・解釈とみなし、それに立脚して「刑事罰」を与えるという警察・検察があるのです。これは繰り返し起こっているのです。そのような毎度御馴染みの「法解釈論議」というのは、本当に医療を向上させるのでしょうか?国民に多くの利益をもたらしますでしょうか?国民の安全に寄与するでしょうか?そういうことを疑問に思うのです。


今回の看護師による「内診行為」に関しては、「違法性」というのは法律上明確なはずなのであり、この違法性が「元検事の弁護士」先生にも正確に理解できないとするならば、一体全体、日本の医療従事者で「元検事の弁護士」先生以上に正確に法学的知識・理解のできる人が誰かいるでしょうか?これも前から書いてきましたが、医療従事者それぞれ「個々の判断において」法解釈を行い、「絶対に」間違えることなく行為を行わなければ、「刑事罰を与えられる」ということなのですから。地方の行政担当者が「この行為は合法なのでしょうか?違法なのでしょうか?」と本省に問い合わせた所、「違法です」という回答(=通知)をした途端に、医療従事者は「告発」されるのです。それが、日本の医療に関する法の運用なのであり、それを行政も警察も検察も裁判所も法学研究者たちも、「何とも思わない」「正当である」と考えている、ということを疑問に思っているのです。


私は法学に関する知識というのは素人でしかないので、偉そうなことなど言えませんし、本当のところは判りません。でも、あらゆる法学関係者たちは、「口をつぐんで」何もしないのです。法解釈という分野に、素人たちが素手で立ち向かえ、ということなのです。それが日本の「法を司るものたち」の意志でもあります。


罪刑法定主義という言葉があるそうですね。ネット上で見かけることができ、それについてはWiki (罪刑法定主義 - Wikipedia)で読みました。
これによれば、
『「ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法律(この場合議会制定法)において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則」のこと。』
とあります。

厚生労働省通知による解釈によって左右される、「違法性」とは本当に罪刑法定主義に合致しているのでしょうか?どうやって医療従事者たちは「刑事罰」の境界を見極めればよいのでしょうか?法学的には素人に過ぎないものたちなのに。


助産師以外の「内診行為」を指示したということで、保健師助産師看護師法違反に問われ、刑事罰が成立してしまった医師が既にいるそうですよ。つまりは、法的には「違法性は明確」なのです。この医師は略式起訴(?、ちょっと正確には判りませんが、略式裁判というようなことかと思います)され罰金50万円の略式命令を受けたそうです。つまりは、刑事罰の形式としては、「確定的に」理解できているはずです。すでに刑は執行されているのに、今更刑事罰が成立するかどうか、などという議論にはならないはずです(この医師は医道審議会で、3ヶ月の医業停止処分という行政処分まで受けているのです)。「法律」が変わりもしないのに、去年まで違法行為で、今年から合法なんてことがあるのでしょうか。元検事の方にさえ判らないような立件であるというのなら、日本の検察は一体どうなっているのでしょうか。一般素人に理解できますでしょうか?その違法性が。


このような失礼なことを申し上げて申し訳ございません。ただ、法というのは、「違法である」というのが明確になっていなければ、一般素人などそれを理解し未然に回避するなどということは無理だと思います。数多く出た行政職員の裏金事件は、素人でも「誰がどう見たって」横領とか、公文書偽造とかです。これは素人でも明らかに「犯罪」と判るのです。それなのに、「違法性はなかった」「立件できない」と言うのです。だから、犯罪じゃない、刑事罰も与えられなくて済むのです。日本の法とはそういうものなのです。「誰の目にも明らかな違法行為」は刑事罰なし、「誰にもよく判らない医療行為」は違法として刑事罰、ということです。


こうした矛盾について、何故「法学関係者たち」は、誰も、何も、考えないのか?言わないのか?未だに判らないのです。弁護士も、検察官も、裁判官も、法学研究者たちも、数多く揃っていながら、というが、非常に残念でなりません。私はそういった「専門家にしかできないこと」をお願いしたいと思っているのです。

このようなことを書いて申し訳ございません。矢部先生が何も悪い訳でもございません。大変な失礼をしましたことを、重ねてお詫び申し上げます。



遅延損害金はグレー金利か?~消費者契約法と利息制限法

2006年08月28日 17時47分55秒 | 法関係
ちょっと前の記事(特例金利?なぜ?金融庁)に、「消費者契約法の規定によって、遅延損害金の上限金利は14.6%ではないか」ということを書きましたが、コメントで情報を頂いたので、どうなのか考えてみます。まず、基礎となっている利息制限法について見てみます。


利息制限法
(昭和二十九年五月十五日法律第百号)

(利息の最高限)
第一条  金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合          年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合     年一割八分
元本が百万円以上の場合          年一割五分

(賠償額予定の制限)
第四条  金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条第一項に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分につき無効とする。
2  第一条第二項の規定は、債務者が前項の超過部分を任意に支払つた場合に準用する。
3  前二項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。


第4条にあるように、最高限金利の「1.46倍」と規定されています。つまりは、順に29.2、26.28、21.9(%)ということになります。なるほど、各消費者金融会社はこの規定に基づいて、「遅延損害金」の条項を設けている、ということです。利息制限法に従えば、この通りですね。次に、消費者契約法について見てみましょう。


消費者契約法
(平成十二年五月十二日法律第六十一号)

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条  次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分


第9条第二号規定を判りやすくまとめてみましょう。
「支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日までに支払わない場合」=支払の遅延ということですね。
「損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」=契約に設けられている遅延損害金の条項、ということですね。
以下の条文は、簡単に言うと、支払うべき額(既払い分は除く)に年利14.6%分を日割(支払期日翌日から支払日まで)計算した額を超える部分、ということになります。


で、この超過部分(14.6%よりも高い金利部分)は無効ですよ、というのが主旨です。契約時の条項に、いかに予め入れておいたとしても、消費者が自意で契約したとしても、「無効ですよ」ということなのです。これは、消費者が正しく理解・判断できない場合もある為に、「悪巧みトラップ」(笑)を無効化するための条文ということになります。悪いヤツラはゴロゴロいますからね。


では、利息制限法に認められている遅延損害金の上限金利と、消費者契約法の上限とではどちらが優先されるのか、ということになると思います。これを検討してみたいと思います。


まず、金銭消費貸借契約は消費者契約法の範囲になるのか、ということを見てみましょう。

(定義) 
第二条  この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2  この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3  この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。


このようにありますので、消費者と事業者間で締結される全ての契約について適用になると考えてよろしいのではないかと思えます。そうなると、消費者金融会社と個人の契約は、「消費者契約法による制限を受ける」と結論されると思います。


次に、「利息制限法を守っているし、認められてるのだから、合法だよ」という主張も考えられるところであり、利息制限法の範囲を守ればよいのか、ということを検討してみます。


消費者契約法の立法趣旨ですけれども、第1条を見てみましょう。

(目的) 
第一条  この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。


この法律は僅か12条までしかない、非常に短い法律なのですが、この条文を読むとよく理解できます。どこのどなたが書いたものなのか判りませんが(笑)、消費者の置かれている立場をうまく表しており、素晴らしい条文だと思います。「消費者利益の擁護、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与」ですから。「情報の質及び量並びに交渉力の格差」というのは、まさにその通りであると思いますね。


で、この法律が制定された背景というのは、本来的には民法や商法などの基本的法規がある上で、たとえ「民法上では違法を問えない」という状況があっても、消費者にとって著しい利益侵害ということも起こってきたということがあるかと思います。所謂悪徳商法等ですね。であれば、制定が平成12年の消費者契約法は、昭和29年の利息制限法よりも「消費者保護」の観点からは望ましいと思われます。



でも、さっき問題を発見しました。ちょっとショックです。よく最後まで読むと、消費者契約法には次の条文がありました。


(他の法律の適用)
第十一条  消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法 及び商法 の規定による。
2  消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。


これはどういうことでしょう・・・・第11条第2項の「消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。 」というのがあります。「条項の効力」というのが問題ですよね。利息制限法の第4条がこれに該当するのかどうかは判りません。でも、普通に考えると債務不履行の賠償額を定めるものであるため、「条項の効力」を肯定するようにも思えるし、「他の法律に別段の定めがあるとき」になってしまいますかね、やっぱり。うーん、消費者契約法に基づく「遅延損害金」の上限14.6%は適用できませんか?でも、それって何か変なような気がするが。だって消費者保護の観点からわざわざ法律を作って、悪意的な損害賠償請求を「無効化」するためのものであるのに、それを超える損害賠償請求を可能とするのは、矛盾しているようにも思えるんですよね。


そうは言っても、私の解釈が間違っていたかもしれません。申し訳ございません。消費者契約法の条項無効化は及ばないのかもしれない、ということです。無念です。