ちょっと前の記事(特例金利?なぜ?金融庁)に、「消費者契約法の規定によって、遅延損害金の上限金利は14.6%ではないか」ということを書きましたが、コメントで情報を頂いたので、どうなのか考えてみます。まず、基礎となっている利息制限法について見てみます。
利息制限法
(昭和二十九年五月十五日法律第百号)
(利息の最高限)
第一条 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合 年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
元本が百万円以上の場合 年一割五分
(賠償額予定の制限)
第四条 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条第一項に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分につき無効とする。
2 第一条第二項の規定は、債務者が前項の超過部分を任意に支払つた場合に準用する。
3 前二項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。
第4条にあるように、最高限金利の「1.46倍」と規定されています。つまりは、順に29.2、26.28、21.9(%)ということになります。なるほど、各消費者金融会社はこの規定に基づいて、「遅延損害金」の条項を設けている、ということです。利息制限法に従えば、この通りですね。次に、消費者契約法について見てみましょう。
消費者契約法
(平成十二年五月十二日法律第六十一号)
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
第9条第二号規定を判りやすくまとめてみましょう。
「支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日までに支払わない場合」=支払の遅延ということですね。
「損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」=契約に設けられている遅延損害金の条項、ということですね。
以下の条文は、簡単に言うと、支払うべき額(既払い分は除く)に年利14.6%分を日割(支払期日翌日から支払日まで)計算した額を超える部分、ということになります。
で、この超過部分(14.6%よりも高い金利部分)は無効ですよ、というのが主旨です。契約時の条項に、いかに予め入れておいたとしても、消費者が自意で契約したとしても、「無効ですよ」ということなのです。これは、消費者が正しく理解・判断できない場合もある為に、「悪巧みトラップ」(笑)を無効化するための条文ということになります。悪いヤツラはゴロゴロいますからね。
では、利息制限法に認められている遅延損害金の上限金利と、消費者契約法の上限とではどちらが優先されるのか、ということになると思います。これを検討してみたいと思います。
まず、金銭消費貸借契約は消費者契約法の範囲になるのか、ということを見てみましょう。
(定義)
第二条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
このようにありますので、消費者と事業者間で締結される全ての契約について適用になると考えてよろしいのではないかと思えます。そうなると、消費者金融会社と個人の契約は、「消費者契約法による制限を受ける」と結論されると思います。
次に、「利息制限法を守っているし、認められてるのだから、合法だよ」という主張も考えられるところであり、利息制限法の範囲を守ればよいのか、ということを検討してみます。
消費者契約法の立法趣旨ですけれども、第1条を見てみましょう。
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
この法律は僅か12条までしかない、非常に短い法律なのですが、この条文を読むとよく理解できます。どこのどなたが書いたものなのか判りませんが(笑)、消費者の置かれている立場をうまく表しており、素晴らしい条文だと思います。「消費者利益の擁護、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与」ですから。「情報の質及び量並びに交渉力の格差」というのは、まさにその通りであると思いますね。
で、この法律が制定された背景というのは、本来的には民法や商法などの基本的法規がある上で、たとえ「民法上では違法を問えない」という状況があっても、消費者にとって著しい利益侵害ということも起こってきたということがあるかと思います。所謂悪徳商法等ですね。であれば、制定が平成12年の消費者契約法は、昭和29年の利息制限法よりも「消費者保護」の観点からは望ましいと思われます。
でも、さっき問題を発見しました。ちょっとショックです。よく最後まで読むと、消費者契約法には次の条文がありました。
(他の法律の適用)
第十一条 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法 及び商法 の規定による。
2 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
これはどういうことでしょう・・・・第11条第2項の「消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。 」というのがあります。「条項の効力」というのが問題ですよね。利息制限法の第4条がこれに該当するのかどうかは判りません。でも、普通に考えると債務不履行の賠償額を定めるものであるため、「条項の効力」を肯定するようにも思えるし、「他の法律に別段の定めがあるとき」になってしまいますかね、やっぱり。うーん、消費者契約法に基づく「遅延損害金」の上限14.6%は適用できませんか?でも、それって何か変なような気がするが。だって消費者保護の観点からわざわざ法律を作って、悪意的な損害賠償請求を「無効化」するためのものであるのに、それを超える損害賠償請求を可能とするのは、矛盾しているようにも思えるんですよね。
そうは言っても、私の解釈が間違っていたかもしれません。申し訳ございません。消費者契約法の条項無効化は及ばないのかもしれない、ということです。無念です。
利息制限法
(昭和二十九年五月十五日法律第百号)
(利息の最高限)
第一条 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合 年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
元本が百万円以上の場合 年一割五分
(賠償額予定の制限)
第四条 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条第一項に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分につき無効とする。
2 第一条第二項の規定は、債務者が前項の超過部分を任意に支払つた場合に準用する。
3 前二項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。
第4条にあるように、最高限金利の「1.46倍」と規定されています。つまりは、順に29.2、26.28、21.9(%)ということになります。なるほど、各消費者金融会社はこの規定に基づいて、「遅延損害金」の条項を設けている、ということです。利息制限法に従えば、この通りですね。次に、消費者契約法について見てみましょう。
消費者契約法
(平成十二年五月十二日法律第六十一号)
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
第9条第二号規定を判りやすくまとめてみましょう。
「支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日までに支払わない場合」=支払の遅延ということですね。
「損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」=契約に設けられている遅延損害金の条項、ということですね。
以下の条文は、簡単に言うと、支払うべき額(既払い分は除く)に年利14.6%分を日割(支払期日翌日から支払日まで)計算した額を超える部分、ということになります。
で、この超過部分(14.6%よりも高い金利部分)は無効ですよ、というのが主旨です。契約時の条項に、いかに予め入れておいたとしても、消費者が自意で契約したとしても、「無効ですよ」ということなのです。これは、消費者が正しく理解・判断できない場合もある為に、「悪巧みトラップ」(笑)を無効化するための条文ということになります。悪いヤツラはゴロゴロいますからね。
では、利息制限法に認められている遅延損害金の上限金利と、消費者契約法の上限とではどちらが優先されるのか、ということになると思います。これを検討してみたいと思います。
まず、金銭消費貸借契約は消費者契約法の範囲になるのか、ということを見てみましょう。
(定義)
第二条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
このようにありますので、消費者と事業者間で締結される全ての契約について適用になると考えてよろしいのではないかと思えます。そうなると、消費者金融会社と個人の契約は、「消費者契約法による制限を受ける」と結論されると思います。
次に、「利息制限法を守っているし、認められてるのだから、合法だよ」という主張も考えられるところであり、利息制限法の範囲を守ればよいのか、ということを検討してみます。
消費者契約法の立法趣旨ですけれども、第1条を見てみましょう。
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
この法律は僅か12条までしかない、非常に短い法律なのですが、この条文を読むとよく理解できます。どこのどなたが書いたものなのか判りませんが(笑)、消費者の置かれている立場をうまく表しており、素晴らしい条文だと思います。「消費者利益の擁護、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与」ですから。「情報の質及び量並びに交渉力の格差」というのは、まさにその通りであると思いますね。
で、この法律が制定された背景というのは、本来的には民法や商法などの基本的法規がある上で、たとえ「民法上では違法を問えない」という状況があっても、消費者にとって著しい利益侵害ということも起こってきたということがあるかと思います。所謂悪徳商法等ですね。であれば、制定が平成12年の消費者契約法は、昭和29年の利息制限法よりも「消費者保護」の観点からは望ましいと思われます。
でも、さっき問題を発見しました。ちょっとショックです。よく最後まで読むと、消費者契約法には次の条文がありました。
(他の法律の適用)
第十一条 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法 及び商法 の規定による。
2 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
これはどういうことでしょう・・・・第11条第2項の「消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。 」というのがあります。「条項の効力」というのが問題ですよね。利息制限法の第4条がこれに該当するのかどうかは判りません。でも、普通に考えると債務不履行の賠償額を定めるものであるため、「条項の効力」を肯定するようにも思えるし、「他の法律に別段の定めがあるとき」になってしまいますかね、やっぱり。うーん、消費者契約法に基づく「遅延損害金」の上限14.6%は適用できませんか?でも、それって何か変なような気がするが。だって消費者保護の観点からわざわざ法律を作って、悪意的な損害賠償請求を「無効化」するためのものであるのに、それを超える損害賠償請求を可能とするのは、矛盾しているようにも思えるんですよね。
そうは言っても、私の解釈が間違っていたかもしれません。申し訳ございません。消費者契約法の条項無効化は及ばないのかもしれない、ということです。無念です。
金利を18%に下げるのは、消費者保護、多重債務が怒らないための経済政策ですから、14%になったほうが、さらに社会問題が小さくなります。だから消費者にとっては、14%がよいに決まっています。
金融庁が聞いたら、どう反論するでしょうか。
ただし、消費者契約法より、利息制限法が優先する根拠がどこにあるか。調べればわかると思います。
そもそも延滞だけでなく、15%ですら、違法になってしまいますから。
14%にしてはならない理由はあるでしょうか。
信用リスクから考えて、営業が成り立たないという業者側の理由でしょう。だから貸せなくなって、信用を与えられなくなり、信用逼迫すると。それでは18%にして、営業が成り立つのでしょうか。
本来リスクに見合った金利になるのが当たり前。
すでに18%でも貸せる範囲は限られます。
それならいっそ、消費者契約法の金利を適用するというのでは、どうしてだめでしょうか。
それに対して、金銭消費貸借は、金銭の費消の対価としての金利で、別ものでは?
確認ですが、これは元々の借入金利のお話ではなくて、支払日を過ぎて入金が遅れてしまった場合の「遅延損害金」の請求のお話なので、上限金利引き下げの影響を直接受けるわけではないので・・・利息制限法の金利でも今までよりは随分低くなります。
>×さん
>金銭消費貸借は、金銭の費消の対価としての金利で、別ものでは?
このご指摘は、実のところよく判らないです。条文だけを読めば「全ての契約」について(勿論金銭消費貸借契約も)有効と思いました。証券や保険などの金融商品等においても、この消費者契約法に拘束されていると思いますが・・・重要事項説明などの項目はそうだろうと思いますし、将来受け取る金額とか判断を狂わせるような「確実に儲かりますよ」「百万円くらい軽く儲けられますよ」のような誘い文句も封じられていると思われますが、どうなんでしょうか。
金融商品等の契約には有効で、金銭消費貸借契約は範囲外、というのも疑問に思えるのですけれども・・・
本文中にも書きましたが、遅延損害金の金利については、外れている可能性の方が大きいようにも思えます。
ところで、不動産賃貸契約などを見ると、いまだに「家賃の遅延損害金は年利36.5%」などと平気で書いているのがたくさんあります。いざというときに、騙されないようにしましょう。
利息制限法で「消費者契約法は適用しないと宣言した場合には適用にならない」ということであれば、本来遅延損害金の利率が消費者制限法に従うことになると思います。けれども、消費者契約法第11条第2項の「他の法律に別段の定め」というのは、利息制限法では第4条の「賠償予定額の制限」に関する規定が該当するのではないかと思いました。
契約での「遅延損害金を定めた条項」の効力をこれで規定しているのであれば、「別段の定め」に該当しているのかな、と考えた次第です。本当は消費者契約法の適用が望ましいとは思いますが、あんまり低いと遅延する人が増えてしまっても逆効果であったりするので、何とも言えないかな、とも思ったりします。
1 趣旨
民法及び商法以外の個別法の私法規定のなかには、本法の規定に抵触するものが存在する。個別法は、当該業種の取引の特性や実情、契約当事者の利益等を踏まえた上で取引の適正化を図ることを目的として規定されたものであるため、本項は、消費者契約を幅広く対象とする本法の規定と個別法の私法規定とが抵触する場合には、原則として後者が優先的に適用されることを明らかにする。
で、具体例の一つとして利息制限法もあります。
6 利息制限法(昭和29年法律第100号)
(条文略)
この規定は、金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定または違約金については、元本の額に応じ一定の額を超える部分を無効とするものであり、本法第9条第2号の規定と要件が抵触している。
利息制限法第4条の規定は金銭を目的とする消費貸借契約の特性をふまえ設けられたものであり、この場合においては、この規定が優先して適用され、本法の規定は適用されないこととなる。
というわけで、おっしゃる通りの解釈でよろしいようです。
もちろん、これはあくまでも法律を作った側が考えていた解釈であり、最終的には裁判所が判断することですが、おそらく裁判でも否定されることはないでしょう。
http://www.consumer.go.jp/kankeihourei/keiyaku/
大変勉強になりました。