カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

新谷さんの一首。

2024-06-21 06:02:50 | Weblog
歌誌『塔』六月号より。

国境といふ愚かさを自嘲して居るのか国旗降納式典/新谷休呆

耳にも目にもいっこうに慣れない〈国旗降納式典〉が国旗掲揚式典の逆バージョンだろうとはわかる。この一首は、国家の意気軒昂の象徴、主張として掲揚されてきた国旗が、ある事情から降ろされて箱に納められてしまわれることになり、厳かに恭しく降納式典が進行されていくのを目撃した作中主体が、〈この式典は国境といふ愚かさを自嘲〉と感じたことが眼目かもしれぬ。何故に国旗が降ろされるのか。何故に自嘲なのか。もしかしたら、他国への領土割譲などの理由によりもともと国境周辺のその土地に駐留してきた領土守備隊陣地が撤退することになったのかもしれない。領土を区分している国境線は人間の経済優先のご都合主義から引かれたもので、そもそも大地に線は引かれていなかった。それなのに後生大事に国境線が守られ、国旗を崇める儀式が厳かに行われていることに作中主体は違和感や疑問を抱いたのかもしれぬ。そんなところが自嘲の理由なのかもしれない。
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