カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

シュニトケの言葉から。

2010-07-24 11:17:37 | Weblog
シュニトケの言葉から。引用メモです。
(出典:アレクサンドル・イヴァシキン<秋元里予・訳>『シュニトケとの対話』春秋社、p296-299)


・画家や作曲家や作家のことを僕(註:シュニトケ)たちは、無意識のうちに、その人物が伝記的事実として何歳まで生きたかに関係なく、その作品全体から受ける印象で若々しいとか老成しているとか判断しています。だから、僕たちの思い浮かべる彼らの姿は、若者だったり老人だったり、だいたい常に同じ年齢です。音楽家を例にあげると、バッハは完全に熟年ですし、極めて天才的なモーツァルトは永遠に青年です。ヴァーグナーはどうか。僕は、彼は全く若くないと思います。そして、マーラーは、というと、青年と熟年の境あたりといえるかもしれません。ベルクとヴェーベルンについては、ベルクは若々しく、ヴェーベルンはけっして若くありません。


・僕(註:シュニトケ)は、若き日のマーラーが書いた《ピアノ四重奏曲》の習作の第二楽章断片を基にして、マーラーと同じ編成で作品を書いたことがあります。その作品では、マーラーの書いた主題は最後に現れますが、現れたかと思うとすぐに止まります。なぜかというと、その主題を僕はマーラーが書いたとおりのまま「未完」にしておきたかったからです。(中略)マーラーは、この《ピアノ四重奏曲》を第一楽章だけ全部書いて、第二楽章から先は数小節しか書きませんでした。とはいえ、書き残されている第二楽章の主題は実に天才的です。聴けば「これはマーラーだ」と1小節目からわかります。弱冠16歳の若者が書いた作品なのにですよ! 他に類がありません。主題は、ト短調からイ長調に転調して、その後ト短調に復帰します。なんとも「普通でない」音楽の進み方をしています。ちなみに僕は、マーラーが全部書き上げた第一楽章にはそもそも手を触れませんでした。断片の第二楽章に比べてそれほど魅力を感じなかったものですから。
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