カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

短歌メモから。

2024-05-14 17:52:48 | Weblog

短歌メモから。

毎時毎時の五分ニュースに耳欹て朕は高級葡萄をくちに転がす

あのニュースは気に入らぬ放送局長に伝へろ 朕は手元の伝声管に怒鳴るけふも

放送局長はピクピク頬を引き攣らせ報道部長をけふも叱責

***

丸の内蔦紋透かし入り封筒の差出人名山崎庄兵衛長鏡とあり

この人は山崎長徳外孫にして青山豊後長正三男の長鏡だらうか

長鏡の封書に雨滴の染みはあり 切手の替はりに鳥形の染み

夜更け過ぎの路地駆け抜けたる早馬を見し人ありとか バス停の朝

有り得ないですよね、で全ての会話は閉ぢられぬ バス来てひとは黙つて乗り込む

長鏡は彼岸にゐるもラジオ・ヘビー・リスナーらし 〈このままでは日本が〉と思ひて筆執つた由

私が大聖寺町本光寺の墓所に参つたとき長鏡は山門脇にゐたらし

長鏡は今の日本を心配し三途の川渡りて封書差し出す

三途の川の河原にひつそりポスト立つ 早馬配達夫の住む小屋の脇

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わが死後に無花果を食ふ男ゐて。

2024-05-14 12:51:40 | Weblog

岡井隆先生の歌集『人生の視える場所』所収の一首。

詞書:最後に〈わが死後に無花果を食ふ男ゐて〉というのは彼の嫉妬だろうか。

顔の上までかかむりて眠るべし後世といふ驢馬(ろば)のいななき/岡井隆

詞書に引かれた俳句作品は、下村槐太という大阪で活躍した俳人の一句らしい。

参照記事:
〈下村槐太の俳句〉。
https://note.com/oho_kisui/n/n6b9db2b4a1f6?sub_rt=share_pw

岡井先生の上の一首は、〈創作なんていうやさぐれ稼業の我らは布団を顔の上まで被って眠っちまおうぜ。後世の批評家が声高にいくらこき下ろしてきたって、所詮そんなものは驢馬のいななきさ。〉ぐらいに解釈出来そうだ。詞書にある通り、下村槐太さんの一句に触発されて生まれた一首なのかもしれない。岡井先生らしい、詞書と作品本文とのギャップや、独特の発想の掴みが面白い。

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カンツォーネ。

2024-05-14 08:03:45 | Weblog
今朝は、理不尽に冷遇されて甚だ居心地の悪い席でそれでも一所懸命に作業をこなしている夢を見た。コロナ禍になって以降のここ何年か、母と電話でたくさん話をしてきた。母は母自身の幼少期からを振り返って多くの理不尽で心傷つけられて来た親や周囲の人たちとの記憶を掘り起こして語ってくれ、私はそこから私自身が理不尽に感じて来た様々な自分の記憶と重ね合わせて、私自身が不思議に思って来た生きづらさのいろんな謎が解けてきた。結局、自己肯定感の欠落している母も私も小さな頃から周囲の環境によってあまりにも理不尽なことをされ過ぎてきたために、自分を居心地の悪い場所に敢えて据えて不出来と思い込まされてきた駄目な自分を罰することを自然とするような不幸な心性を身に着けてしまったのかもしれぬ。そういうことに漸く気付けたことは、正直、今更感もないわけではないが、ここでの気付きを幸いと受け止めて感謝し、前に進んでゆかねばならぬ。今朝は、胸奥でヴァイオリンとオーケストラのカンツォーネが流れた。今日中に兎にも角にも、懸案の短歌十首を絞り出して清書し投函せねばならない。
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