短歌メモから。
詞書〈その『日録』によれば、「窮鼠、猫を噛む」は本来、「九曾(きゅうそ)、根胡を噛む」と表記するのが正しいといふ〉
十三代将軍御側(おそば)の御役目(おやくめ)として御屁改(おへあらため)、九曾(きゅうそ)勘左衛門あり
九曾家は大陸渡来の医家にして勘左衛門の母は七十歳(しちじふ)
母の漬けたる瓜をぽりぽり食みながら勘左衛門は坐して書を読む
勘左衛門の登城は明け方、ひと仕事終へて朝飯前に帰宅す
古書店に『九曾勘左衛門日録』あるも、その朝私の財布に銭なし
仕方なく店内に『日録』手に取りて憶えて店の外(と)にて書き留む