駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

そこまでは憶えていない

2010年10月19日 | 診療

 インフルエンザワクチンを打ち始めた。打つ前に簡単な予診をする。
 「インフルエンザワクチン打ったことがありますか?」。
 「去年打ったじゃあないですか」。あるいは「去年打っていただきましたよ」。
 と不満そうに不審そうに答えられる患者さんが居られる。正直なところインフルエンザワクチンを流れ作業の様にして打った千人近い人を一人一人憶えてはいないのだ。勿論、カルテと問診票で紙の上での確認は出来るのだが、本人に口頭で確認するのは手続きとして重要と考えている。患者さんにしてみれば、一大事?なので当然医者も記憶していると思われ、それが返事に表れるようだ。
 ありふれたこと、数多いことを憶えているのは難しい。癌の手術や身内の不幸などは自然に憶えていてそれとなく気に懸けている。小さいことでも独特なこと、おでん作りが好きで奥さんには手を出させず牛すじを串刺しにして、大根の面取りをして、一冬を過ごすTさん、折角の長崎出身なのに坂が多いのと素っ気なく懐かしそうでないN子さんとか、趣味や出身地などは記憶していて、話の接ぎ穂にしている。
 尤も、インフルエンザワクチンの注射だって、いい年をして大騒ぎするK氏などはスタッフ全員が「又来た」とよく憶えている。

コメント
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