駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

我が名はトム

2010年10月18日 | 身辺記

 五人兄弟の何番目だったかは知らないが、子犬が四匹身を寄せ合っている中、これだと二番手で御主人に選ばれ、引き取られることになった。はるばる40kmの道のりを篭に入れられ車に揺られてきたのはもう遠い昔になった。あれから既に十三年余、人間にすれば古稀を迎え、遂に御主人を追い越したようだ。
 毎日忠実に当家の番人として、十分働いてきた。若い頃は血気にはやり、ちょいと吠え過ぎて、隣家の奥方にそれとなくお小言を食らったこともあるが、最近は本当に怪しげな奴にしか吠えないことにしている。有り体に言えば、有象無象に一々吠えるのは億劫になったのだ。
 我が家も幾星霜、いつの間にか若いのが居なくなり、そのかわり小さいのが時々遊びに来るようになった。わしの方が偉いのだが、御主人の顔を立てて、「トム」と呼び捨てにされても大人しく言うことを聞いている。御主人の友人達は礼儀正しくきちんと「トム君」と読んでくれ、わしも吠えず丁重にお出迎えしている。
 なんだかブログの看板犬にされているらしい、ご挨拶せよとの要望があったそうで、古びた小屋から出てきてみた。
 「S家の忠犬トムと申します。どうも主人はいい年をして時々暴言を吐いているようですが、どうぞご愛嬌と読み流してくだされ。バウワウ」、いやこれはちょっと教養が出てしまった。

コメント (6)
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