駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

本物を見る

2009年05月08日 | 
 折角はるばる日本から来たのだからと、アムステルダムの国立美術館で小雨の中を一時間半も並んだ。日曜日だったために混んだらしい。行列している人達の会話からオランダの人よりも東欧や米国の人が多いように思えた。
 賢明と思ったのは、入館者数を制限していることだ。そのため、中に入れば芋を洗うようなことはなく、ゆっくり鑑賞できる。教科書で見た絵を目の当たりにして、その素晴らしさに圧倒された。
 十七世紀オランダの人物画の凄さを写真で伝えることは不可能だ。生きている光を写すことは無理だろう、土門でもどうか。平凡な感想だがレンブラントの迫真に言葉を失った。四百年の時空を超えて、今まさに目の前に栄華を誇ったオランダの人々が生きて集っている。話しかければ返事が返ってきそうだ。
 写実というのは写真以上というか写真を超えている。心象を描いているように思う。いつか見た青い空そしていつか見たあの面影。強く心に焼き付いた光景を再現している。人はそのように見てそのように記憶している映像を目の前にしている思いに囚われる。
 歴史を知っていることや絵の技法や描かれた背景を知っていることは鑑賞を深めるが、感動を変容させることはない。本物を目の前にすれば、何かが心に直に伝わり、感動が湧き上がってくる。
 美なのか真なのか何かはよくわからないが、本物に直に接して外に出ると世界が違って見える。単に出遅れて、残っていた航空券でスキポールに降り立ったわけだが、オランダに来てよかった。
コメント (4)
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