玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*縦書きと横書き

2013年12月03日 | 捨て猫の独り言

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 玉川上水の緑道はクヌギやコナラなどの落葉であつく敷きつめられている。しかし見上げると梢にはまだまだ黄葉や紅葉が十分に残っていて楽しめる。今回初めて気付いたのは黄葉の時期のマユミの美しさである。マユミはニシキギ科の落葉低木でその実をコゲラが好むという。マユミが黄葉し、マユミの桃色に熟した無数の四角い実は四つに裂け、それぞれに鮮烈な赤い種子が顔を出している。柔らかな陽射しの中に黄色、桃色、赤色をしたマユミが輝いている。そのまわりの木々の間を小鳥たちが飛び交っている。そこだけはまるで春のようである。

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 先週のこと半年ぶりぐらいに津田塾の公開講座「総合」に参加した。この日の講師は翻訳家で法政大学教授の金原瑞人氏だった。テーマは「ジョン万次郎、横書きの誕生」とある。漂流中にアメリカの捕鯨船に救助された万次郎は、ハワイからアメリカ東海岸へに行き、そこで読み書きそろばんの教育を受ける。その後ゴールドラッシュの西海岸へ、そしてハワイから琉球、薩摩、長崎、土佐へと驚くべき旅を経験する。この日の講演の本題はここからだった。アメリカを知る男である万次郎が英語を日本語に翻訳せねばならない。しかし英語は横書き日本語は縦書きなので翻訳併記するのに苦労したようだ。

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 かくて異文化との出会いによって日本に横書きの表記が誕生した。縦書きの漢字文化圏において革命中国では簡体字が採用されたこともあり、すでに横書きが主流になっている。縦書きが残るのは世界中で日本と台湾ぐらいのようだ。パソコンの普及でますます日本でも横書きが多くなっている。日本の新聞を観察してみると大部分は縦書きだが想像以上に横書きが混在している。縦横が混在する表記を持つ日本文化も貴重だと思わざるを得ない。教科書はどの教科も横書きだが、国語の教科書だけは縦書きだ。小説も縦書きを堅持している。ネット上の電子図書館の「青空文庫」の存在を今回初めて知った。源氏物語、カラマーゾフの兄弟、西郷南州遺訓などがここでは横書きである。

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 小説が縦書きなのに、幼児のための絵本は横書きが主流である。当然のように当初は国語学者の反対があったという。絵本が横書きなのは理由がある。横書きの流れの方向は左から右への方向である。縦書きの流れはその逆である。例えばある人物が立ち去る場面の絵を考えてみる。横書きならば絵では立ち去る方向は右でなくてはならない。翻訳した外国の絵本を縦書きにすれば絵の流れの方向に不都合が生じる。ならば裏返しの絵にすると今度は右手が左手になるという左右が逆転するという不都合が生じる。(写真上はオープンギャラリーにてマユミとコゲラ、他は小平アートサイトの作品)

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