「挿絵で読んだ坂の上の雲」は、4年余に亘って産経新聞に連載された「坂の上の雲」を更に後年再連載した際、小説に併せて記者とカメラマンが小説の舞台を訪ね、日曜朝刊に別刷りしたものだ。身内や関係者へのインタビュー、随所の写真、とりわけ挿絵は物語に奥行きや臨場感を持たせ興味を深めてくれた。
挿画家・下高原健二氏は鹿児島出身だった。どの絵(人々、風景、戦争)も時代背景を彷彿とさせた。私の父も海軍学校出身で、父の写真帳には東郷の勲章を一杯ぶら下げた写真を始め、沢山の軍隊生活のシーンがあって、まるで父がそこに居るように感じた。TVドラマのセット作りや演出もかなりこの本を参考にしたのではと思える程似ていた。
東郷の項目で初陣は生麦事件に端を発した薩英戦争とあった。東郷家は「負くんな!」と気丈な母の激励を受けて15才の平八郎を含め父子4人が出陣した。互いに被害を被りながら、どちらが勝ったとも解らないまま錦江湾を去る英艦を見ながら「海から来る敵は海にて防ぐべし」と呟き、島国の海防の重要性がこの時胸に刻まれたのだろうとあった。年末私は原宿界隈を散策していてたまたま東郷記念館・神社に出くわした。故人は神格化されるのを固辞していたにも関わらず要望や寄付が相次ぎ、それは昭和15年海軍記念日に創建されたのだという。薩摩の「郷中教育」を知ったのもこの本で、日本の黎明期郷土の先人達が活躍したのも納得出来た。
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