玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*天然ウナギの卵

2011年02月07日 | 捨て猫の独り言

 テレビ番組「日めくり万葉集」に「シリーズ万葉料理教室」がある。「石麻呂に 我物申す 夏瘦せに 良しといふものそ 鰻(うなぎ)捕りめせ」という歌は大友家持が親しい間柄の吉田石麻呂に呼びかけた歌という。鰻は蛋白質や脂肪が多いのでカロリーが高く、またビタミンAも多く眼にも良い。夏のスタミナ食である。番組では古代の鰻の食べ方が再現された。頭を落として、二寸幅にぶつ切りにする。削った竹に刺し炭火でこんがりと焼き、味噌をつけて食する。「うなぎの筒焼き」と呼ばれる調理法だ。炭は石器時代から使用されていた。

 このように鰻は古くから日本の食文化に深い関わりを持つ魚である。現在われわれが口にするのは、ほとんどが養殖の鰻だ。1月下旬から3月中旬に海から河川に遡上してくるシラスウナギ(体長約6センチ)を捕獲して、池の中で飼料を与えて育てる。資源であるシラスウナギ激減のニュースを私が聞いたのはそれほど遠い過去ではない。鰻は川や湖で成長した後、数千キロ移動して外洋で産卵するが、回遊ルートや厳密な産卵場所はこれまで不明だった。このたび謎の多かった鰻の生態解明の手掛かりが得られたという。

 東大大気海洋研と資産総合研究センターの研究チームが、天然のニホンウナギの卵を採集することに世界で初めて成功したのである。新月2日前の09年5月22日未明のこと。場所は、日本の南約2200キロのグアム島西側にある西マリアナ海嶺付近。今年の1月27日に東大キャンパスにおいて塚本勝己教授(62)による説明会見があった。また2月1日付英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(電子版)にも、このことは掲載された。卵の採集成功は、激減したウナギ資源の保全・管理につながると期待されている。

 産卵場調査が始まったのは73年で、91年にマリアナ諸島西方沖で10ミリ前後の仔魚の採集に成功した。しかし、その後14年間、成果のない苦しい時期が続いた。1回の航海は燃料代だけでも数千万円を要する。「科学でなくばくち打ち」との批判もささやかれた。「卵がふ化するまでの日数はわずか1日半。採集出来たのは幸運だった」オスとメスがどのように出合うのか。なぜ新月間近に産卵するのか。「つぎは産卵シーンを撮影したい」塚本教授は仲間とともに5月、再び研究航海に乗り出す。広大な自然界におけるウナギの生態が全面的に解明されることを期待しよう。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スポーツ青年の爽やかさ | トップ | 黎明期活躍した薩摩人 »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
このニュース、テレビで新聞で報道されていますが... (期待の発見)
2011-02-08 15:36:08
このニュース、テレビで新聞で報道されていますが、何十年もかけて太平洋の「点」を見つける研究者たちの根気、辛抱に驚きです。ガンその他難病の特効薬もどこかに隠れているのでしょうね。目先のことで事業仕分けしてはいけません。
返信する

コメントを投稿

捨て猫の独り言」カテゴリの最新記事