玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*公開講演会

2015年02月23日 | 捨て猫の独り言

 かつて津田塾大学と一橋大学小平分校とはどちらも玉川上水沿いにあって、二つの大学の間の緑道は「恋人たちの道(ラバーズレーン)」と呼ばれていた。歩いて10分もかからない。その後、小平分校は国立(くにたち)の地に移転した。跡地には放送大学多摩学習センターと一橋大学小平国際キャンパスが同居することになった。2月15日に「徒然草と現代」と題した講演会に出かけた。講師は放送大学教授の島内裕子氏である。私は講演を聞くために初めて学習センターを訪れた。

 入口に満員御礼の掲示があったから、参加をあきらめた人たちもいたのだろう。話の中で新鮮に感じたことなどを列挙してみる。8世紀の古事記や万葉集から20世紀の夏目漱石などの近代文学まで、約1200年間の中央に位置して、日本文学の分水嶺になっているのが14世紀の徒然草である。徒然草は思索の深化を簡潔、明晰に提示する批評文学である。17世紀の江戸時代にはレイアウトを工夫、読みやすさ、わかりやすさ、面白さに配慮した注釈書が数多く出版された。

 「テーマなし」というのが徒然草のテーマである。序段の「心にうつりゆく由(よし)無し事」の実体は「連続読み」で浮かびあがる。章段の区切り方など、室町時代の写本以来、現代までこぼれ落ちた章段もなく、多彩な内容が、しっかりと手を携えて、そのまま現代まで読み継がれてきた。元禄元年の「徒然草絵抄」の冒頭図版には「世の中をわたりくらべて今ぞしる 阿波のなるとは浪風もなし」という兼好作と伝えられている教訓歌が書き込まれている。江戸時代の人々は「人生訓」として理解していたのだろう。

 島内氏は徒然草は多彩な内容が次から次へと登場するので、テーマ別に分類して(=抽出読み)内容を把握しようとすると、しんと静まりかえった標本室のようになってしまい、徒然草の生気や香気が伝わってこないという。ところで中野孝次には徒然草を12のテーマに分けて、全部で59の段を解説した「すらすら読める徒然草」という講談社の単行本がある。これは中野孝次の最晩年の作品である。そして2013年には文庫本が出版されたのだが、おもしろいことに解説を島内氏が書いている。興味深くてその文庫本を買い、まず島内氏の解説を読んだ。

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