玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*謎解き

2011年01月11日 | 捨て猫の独り言

 この小寒の時期には、数は少ないが道路沿いにロウバイが咲いているのを見かける。ほとんどが変種のソシンロウバイというものだそうだ。小枝いっぱいに黄色の花が開花して、鼻を近づけると芳香に気付く。また師走から咲いている庭のネリネがいまだにその容色を保っていることは驚きだ。うっすらと霜の降りた庭の中に日の光を浴びて氷の結晶か何かのようにネリネが輝いて見える。また、あちらこちらの柿の木では、小鳥たちの貴重な食料である柿の実はほぼ食べつくされてしまっている。

 まことに静かな年末年始だった。今後ともこうありたいものだ。そのうちどこか海辺の温泉あたりで年越しを迎えられたらどんなにいいかと思う。いつもと異なり今年は初日の出を拝みに出かけた。日の出よりもその一時間近く前の時間帯のかすかに赤みがさしてくる曙がなんとも清々しいことかと思った。日の出の瞬間は人々のあいだにざわめきが起こり、ぽつりと「毎日のことなのにねえ」と老女がつぶやくのを聞くと私は神妙に同意する。昨年11月に年賀欠礼の葉書を少ない数だが出した。そして12月には福島山中の独居人から返信があった。謎とはその葉書のことである。

 「北もゆるせる尖閣もへのこもくなしりも竹しまもゆるせるゆるせぬのは少女を自死におひやるこの国この社会その大人たちこのおれ」とあって「石も泣け少女の自死が虎落笛」と自作の俳句で終わっている。ゆるせぬの中に「このおれ」と「おれ」が含まれているのが目を引く。この一蓮托生の精神は正しいと思う。昨年10月群馬県桐生市で小学6年の村上明子(12歳)さんが自宅で自死した。私の謎は「虎落笛」である。日本語辞典を引いても埒があかない。漢和辞典を引くと「虎落」が「こらく」または「もがり」とある。そこで再度日本語辞典で「もがりぶえ」にたどり着いた。「冬の強い季節風が柵や竹垣に吹きあたって発する笛のような音」とあった。

 葉書の前文には「辻邦生の西行花伝を読味しておる。いわく、身を捨つる人はまことに捨つるかは捨てぬ人こそ捨つるなりけれ」とあった。鳥羽院に出家のいとまごいに詠んだ歌は「惜しむとて惜しまれぬべきこの世かは身を捨ててこそ身をも助けめ」である。だから身を捨てるとは出家のことだ。「捨てぬ人こそ捨つるなりけれ」が私の謎である。これは西行が生涯歌を手放さず半僧半俗の人だったということを指しているのかなどと想像してみた。西行は旅に出ることが修行であった。この謎を解くために近く図書館で「西行花伝」を借りて読まねばならない。元旦の夜に福島山中から電話があった。山羊を飼うことにした。そのうちチーズを創るという。3カ国語を勉強しているという。

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5 コメント

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うかつでした。寝床で思いついて朝起きて実験しま... (ネットの威力)
2011-01-12 10:18:15
うかつでした。寝床で思いついて朝起きて実験しました。漢字3文字いや「虎落」の2文字をネットに入力した瞬間に「虎落笛」が表示されたちどころに「もがりぶえ」にたどりつきました。ネットの威力に脱帽です。ただし、あまりにも最短コースに過ぎて、寄り道して新たな広がりが起こるということなどは望めそうにありません。
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身を捨つる人は (ネットの威力2)
2011-01-14 07:53:49
身を捨つる人は
まことに捨つるかは
捨てぬ人こそ
捨つるなりけれ

以下ネットの引用です・・・

これは『詞歌和歌集』によみ人しらずではいっている西行の歌です。

世を捨て出家した人は本当に、その身を捨てたといえるのだろうか。
いや、出家によって悟りや救いを得て、自分を大事にすることになるのだから、
出家しない人こそ本当に自分自身を捨てているのだな。

これは、西行出家の心境を語った作品としてつとに有名な作品です。

・・・引用終わり
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前半は出家のことで後半は在家のことでしたか。出... (御教授に感謝)
2011-01-14 10:26:11
前半は出家のことで後半は在家のことでしたか。出家に際しての意気込みでしたか。教えていただきありがとうございます。
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まことに捨つるかは (回想の古文補習(ハルヤマ先生))
2011-01-14 22:34:42
まことに捨つるかは
「かは」の理解がポイントである。疑問の助詞「か」に詠嘆の助詞「は」が付いたもの。詠嘆を伴う疑問の意をあらわす。よって、本当にその身を捨てたといえるのだろうか(・・・いえない)、のつよい疑問の投げかけになる。
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西行が半僧半俗というのは誤った認識でしたね。辻... (御教授に感謝2)
2011-01-15 21:19:37
西行が半僧半俗というのは誤った認識でしたね。辻邦生の西行花伝では「浮世を出離し、ひたすら虚空を我が身に引き受け、そこに見えてくる存在(もの)を 言葉の器 に掬いあげる所存」と義清(西行)に言わしめています。恥ずかしながら「捨つ」という語の両義性を理解せずに混乱していました。
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