玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*主催は奉賛会②

2007年12月19日 | 捨て猫の独り言

 壇上には発言順に左から原口泉(鹿児島大教授)、加藤紘一、佐高信、西郷隆文(西郷隆盛の曾孫)が並んだ。司会者は事前に四人のパネラーにそれぞれテーマを課していたようだ。すなわち学者、政治家、思想家、生活者としての西郷というわけだ。残念なことに年長の加藤は遅れて原口の話の後に到着し、佐高の話を聞き終わると早々と帰ってしまった。原口は私とは三つ違いの高校の後輩だと知った。面倒見のいい売れっ子教授というところだ。NHK大河ドラマ 「翔ぶが如く」 や 「琉球の風」 来年の 「篤姫」 の時代考証を担当した。西郷は2度にわたり合計して5年間の奄美での生活で儒教、陽明学、老荘の漢書を読むなどの機会を得た。また西郷と確執のあった久光はすごく学問に熱心であったとの発言があった。

 加藤は山形県鶴岡の生まれである。家の本棚に南州翁遺訓があり、なぜ薩摩の人のことがと不思議に思ったという。庄内は台風や冷たい風の被害がなくお米が良く取れる。とにかく生真面目一方の風土である。武装解除される側にとって薩摩軍は堂々として寛大であった。このことは庄内にとってはカルチャーショックだった。酒田には南州神社があって今でも月に一回の勉強会が開かれている。母に聞いた話だが父の清三が内務省時代に鹿児島県衛生部長として派遣され、幼児期の一年間を鹿児島で過ごし、その後青森に移った。親戚に昭和史に足跡を残した軍人の 「石原莞爾」 という男がいるがその評価については今でもいろいろな議論がある。加藤は西郷と石原の比較において何かを言いたかったのだろうか。私には未知の分野だ。 

 佐高は山形県酒田の生まれである。昨日も鹿児島でのシンポジウムに参加したばかりという。鶴岡が京都ならば酒田は大阪といえる。本棚に南州翁遺訓はなかった。西郷は勝者にして敗者だ。絶対値の大きい人だ。完成された人のごとくに扱うのは誤りだ。西郷と似ても似つかぬ人が西郷を称えることがよくあると田中秀征が言うのを聞いたことがある。教師は待てない。答えをすぐ与える。沈黙に耐えられない。西郷はそれができる人だった。斉彬に死なれて以後の西郷は死に場所を探し求め続けていた。そして僧の月照や相楽(さがら)総三のことは常に念頭にあったと思われる。

 西郷隆文は奄美での愛加那との子である菊次郎(京都市長)の孫である。それらしき風貌の持ち主だ。鹿児島県日置市の陶芸家だ。昨年NPO西郷隆盛公奉賛会が立ち上げられてその理事長に就任した。9月24日の命日にちなんで毎月24日に鹿児島市の南州墓地の清掃を行っている。文字通り奉賛会である。南州翁遺訓の青少年版である小冊子「西郷(せご)どんの教え」がこの11月に出版された。このように最近活動が始まったばかりのようだ。それで今回の東京でのシンポジウムの開催となったと思われる。最後に薩摩には現に西郷や大久保が存在していたから遺訓なんて必要なかったのだと庄内藩を意識した年輩者の声が響いたのはご愛嬌だった。参加者は約500名と見た。

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4 コメント

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原口君、委員会でいっしょでした。かわいい年下の... (ガーネット)
2007-12-19 20:35:21
原口君、委員会でいっしょでした。かわいい年下の男の子でしたよ。今は大活躍。
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ならば原口君とは二つ違いということですね。訂正... (捨て猫)
2007-12-19 21:09:47
ならば原口君とは二つ違いということですね。訂正します。たしかにかわいいと言いたくなるようないい男でした。総合司会をした若い女性アナは原口君の後輩ということでした。非番なら手伝えと先輩に呼び出されたと言ってました。途中で挨拶した薩摩士魂の会の年輩の男性も最初の言葉で俺は二中出身だと悪乗りしてました。
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西郷さんの5年間の奄美生活は、かならずしもうっ... (わけしり顔)
2007-12-20 09:54:23
西郷さんの5年間の奄美生活は、かならずしもうっ屈したものではなかったが、充電期間でした。その時はむだにみえても栄養をためる不可欠の時間。大久保には西洋見聞があり西郷にはなかった。奄美体験は逆。島は人格と情操を養うもののようです。久しぶりに江藤淳の「南州残影」をひもといています。冷静な評論家をして冒頭から感情没入させるほどの「全的滅亡の曲譜」。
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西郷隆盛に関する出版物はこれまでどれほどの数に... (魂消た)
2007-12-21 10:12:37
西郷隆盛に関する出版物はこれまでどれほどの数になるのでしょうか。折りを見て江藤淳のものを読んで見ようと思います。最近では稲盛和夫「人生の王道」西郷南州の教えに学ぶを新聞広告で見ました。
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