玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*続・共同幻想論

2020年08月10日 | 捨て猫の独り言

 最後まで、どこにも所属しない「市井の思想家」だった吉本隆明の「共同幻想論」は「古事記」や「遠野物語」などの日本独自の物語から国家のありようを分析したものです。この自立する思想家には吉本用語と呼ばれる「逆立」「対幻想」「関係の絶対性」などがあります。それらのおおよその考えをテキストは教えてくれます。

 「共同幻想は個体の幻想と逆立する構造をもっている」と吉本は言います。講師の解説はつぎの通りです。「ここで逆立とは対立よりももう少し伸縮性をもった概念で、共同幻想に心が占拠されれば個人幻想は消滅し、逆もまた考えられます。二つは本来緊張関係をもっていなければいけない。とりわけ戦前の日本では緊張関係が失われたと吉本は考えていました」

 「共同幻想の発生には、もちろん対幻想(=家族という疑似性的関係)が関わっているのですが、さまざまな形の断絶や亀裂や違和があって、しかし最終的には国家になる」と吉本は考えています。講師は「エンゲルスが経済的理由から権力が発生し国家を誕生させたと説明したのに対し、吉本は「性(生)」と「死」に国家の起源を見出した」と解説します。このあたりがとても難解なのです。

「マチウ書試論」に出てくる「関係の絶対性」は否定的と肯定的の二つの意味が含まれると解説しています。「他者との間で形成される価値観は共同幻想に過ぎず、かつてのファシズムまた現代のポピュリズムのように正しくない(同調圧力)可能性がある。だから不断に個人幻想によって精査されなければならない。しかし、その個人幻想も独善に陥る危険があって、他者との関係によって生じる共同幻想に照らしてみる(確認しあう)必要がある。こうした循環構造が関係の絶対性ということばがもつ二つの意味になっている」解説により、より理解が進んだと思います。

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