難渋した「たけくらべ」と違って、短時間で一気に読み終えた。正夫の2つ上の従妹の民子が死んでしまう。正夫の母が「民子は私が手をかけて殺したともおなじ。どうぞかんにんしてくれ正夫・・・私は民子のあと追ってゆきたい・・・」
「私は正夫・・・民子にこういったんだ。正夫と夫婦にすることはこの母が不承知だからおまえはよそへ嫁にいけ」母はもうおいおいおい声をたてて泣くばかり。ここまで読み進むと私の中に、いつもは経験したこともない感情がわき起こって始末に困った。(東村山市の北山公園の菖蒲祭り)
母の計らいで、二人だけで遠くの山に実った綿を摘みにでかける。山にはタウコギ、水蕎麦、蓼、都草、春蘭などが生え、野葡萄やあけびが実っている。そばの花が薄絹をひきわたしたように白く見える。「しかし民さんが野菊で僕がりんどうとはおもしろい対ですね。ぼくはよろこんでりんどうになります」
小説の書き出しは「後の月という時分がくると、どうも思わずにはいられない」である。十三夜と十五夜について調べた。陰暦の8月15日=十五夜=中秋の名月=今年2022年9月10日でこれは中国由来だ。後の月=陰暦の9月13日=十三夜である。この頃の方が天候も安定して、日本人は満月の直前を愛でたようだ。木下恵介監督の「野菊の如き君なりき」を見たというおぼろげな記憶がある。