古新聞(朝日)の回収日が近づくと、あわてて切り抜き作業が始まる。いつもはスポーツ面にまず目が行き、4コマ漫画から社会面へと流し読みする。むしろ切り抜き作業のときのほうが読みふけることが多い。日曜の歌壇・俳壇では私の知る郷土・鹿児島の二人の作品が最近掲載されていない。
夕刊に5月16日から野上隆生記者の5回連載の「命かがやけ!大浦湾」があった。当初は見逃がしていた。作家の目取真俊氏や大浦湾周辺で生活する人々が登場する。防衛省は環境保全措置として珊瑚の移植を行っているがつぎつぎに死滅しているという。欺瞞の移植が空しい。
一面の「折々のことば」にも注目している。例えば4月27日「節制も勇敢も過重と不足によって失われ、中庸によって保たれる(アリストテレス)」のあと鷲田精一の170文字の文章が続く。それを伏せて自分だったらどんな文章を添えるかを考える。自分では何も浮かばず、ただ鷲田氏の学識の広大なるを知るばかり。
編集委員の高橋純子の月一度の「多事奏論」も切り抜く。「歴史を振り返っても当世を見渡してもこの国のブレーキは大変に利きが悪い。答えを急がず、歴史を参照し、異なる意見を聞きながら迷ったり悩んだりする姿勢こそブレーキの役割を果たす。その姿勢を崩さぬ人はきっと、愚鈍な臆病者とそしりを受けるだろう。結構毛だらけ、私はそんな臆病者として生きたい」