玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*「ロゴス」とは

2020年07月09日 | 捨て猫の独り言

 3日連続の10分番組「コロナ新時代への提言」をNHKBSで見た。人類学者・山極寿一、歴史学者・飯島渉、哲学者・国分功一郎がリモート画面に登場した。それぞれに興味深い指摘があった。ここでは山極氏が「言葉」に言及した箇所だけに絞る。人は信頼できる仲間を増やすように進化してきた。身体をぶつけあうことで、あるいは音楽で人と人は共鳴しあう。今回「言葉だけでつながる社会」に放り出された。どうやって言葉だけで信頼を作るのか。(華やかになった囲碁界)

 

 池田晶子は「ソクラテスは完全にロゴスの人ですから」と言う。その著作「14歳からの哲学」の中にはつぎのような記述がある。≪言葉より先に現実というものがあるのではない。「犬」という言葉がなければ犬はいないし、「美しい」という言葉がなければ美しい物なんかない。言葉こそが現実を作っている。言葉は自分の中にあると同時に自分の外にある。そういう不思議な存在なんだ≫

 生物学者・福岡伸一の「人もウイルスも制御できぬ自然」と題する寄稿文(6月17日朝日)を読んだ。まず「自然というもののありようをいま一度、きちんと考えてみたい」と切り込む。ついでに冒頭に記した国分功一郎の「哲学で大事なのは問いをたてること。問いを立てたからといってすぐに答えが出るわけではないんですけれども、問いを立てることで見えてくるものがある」との前置きもいい。前者は1959年、後者は1974年生まれ。

 福岡氏に戻る。「生命としての身体は、自分自身の所有物に見えて、決してそれらを自らの制御下に置くことはできない。私たちはいつ生まれ、どこで病を得、どのように死ぬか、知ることも選り好みすることもできない」「どこまでも自らの意志で生きているように思いこんでいる。ここに本来の自然と、脳が作り出した自然の本質的な対立がある。前者をギリシャ語でいうピュシス、後者をロゴスと呼んでみたい。ロゴスとは言葉や論理のこと」私はこの福岡氏の表現で、池田氏の言うロゴスをいくぶん理解できた気がする。

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