玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

記憶

2006年06月12日 | 捨て猫の独り言

 機械に例えていえば私の記憶容量は少ない方だ。以前からその自覚はあった。先週の土曜日のことである。隣町において数では女性が優勢で十数名が参加する親睦会があった。私は焼酎のお湯割をいただいた。ところが店を出るぐらいの時から後のことをまるで思い出せない。アルコールによる記憶障害だ。同伴者にはこの事実は伏せておくことにした。

 その翌日、娘が赤ん坊を連れて泊りがけでやってきた。わが子の誕生で種々の手続きに追われている最中である。帰り際に娘の健康保険証がないという騒ぎが起きた。そのうち思いがけないところから出てくるよと何か引っかかるものを感じながら娘に言った。

 3日後に娘は再びやってきた。「ほーら、ほらほら、どうしたのよ、どうしたの」 と娘の母親が赤ん坊をあやしている。私は背中でその声を聞いている。その声で30年ぐらい前のある瞬間がよみがえった。今思うになかなか上手な子育てだったよな。さて保険証は私の机の上の分厚い辞書の間から出てきた。出勤前のあわただしさの中で何かに押されてふとその気になって見つけた。挟み込んだ記憶が欠落していて、見つけるのが遅れた。何とも面目ないことである。

 土曜日の出勤の前に 「今日の5時にSさん夫妻と食事に出かける約束ですよ。覚えているでしょうね」 と声がかかった。生返事でやりすごす。そうだあの日は折りたたみの傘を持参した。そっと傘の所在を確認する。ほっと一安心して玄関を出た。

コメント (1)
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