新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

細川さんちのお宝を拝見(その3)

2010-05-17 07:32:07 | 美術館・博物館・アート

細川さんちのお宝を拝見(その2)」のつづきです。


100517_1_1 「その1」で書きましたように、作戦を練って練って「細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション-」 に出撃した私でしたが、残念ながら宮本武蔵の筆になる「鵜図」を見ることができませんでした。というのも、この作品の展示は5月9日まで(したがって見られないのは織り込み済み)。

剣豪・宮本武蔵は、晩年、肥後・熊本藩に召し抱えられて、肥後で「五輪書」を書いたと伝えられていますが、私は、「どうして熊本?」 と不思議に思っていました。
そうしたところ、ようやく武蔵と細川家(肥後藩主家)との接点に気づきました(今さら…とお思いの方もいらっしゃるでしょうけれど…)。

武蔵と言えば、巌流島の決闘でしょう。その決闘は、慶長年間に、当時豊前小倉藩の領地だった巌流島で行われたという説が一般的ですが、慶長年間に豊前小倉藩主だったのは、細川忠興(三斎)公ときたもんだ
そして、武蔵を肥後・熊本藩に召し上げたのは三斎公の跡取り(三男)の細川忠利公なわけで、「おぉ、おぬしはあのときの! ほぉ、生きておったか…」といった感じかもしれませぬ。


   


さて、第一部の「武家の伝統 -細川家の歴史と美術-」の中盤は、書状が多かったり(信長だ、秀吉だ、家康だと、歴史に残る人たちの書状ですが、いかんせん、書は苦手です。全然読めませんし…)、藩主の肖像画が多かったりで、ほんの少しテンションが下がり気味(それでも、能装束能面のコレクションには圧倒されました

国宝の「太刀 銘:豊後国行平作」にしても、日本刀の良し悪しというのはよく判りません。やはり評価の高いものやそうでないものを何振もじっくり観て、審美眼とやらを磨かなければ無理のようです。「究極のミニマルアート」のようなものですから、日本刀は…。


   


そんな私、「第二部 美へのまなざし -護立コレクションを中心に-」で息を吹き返しました


まずは江戸中期の禅僧:白隠慧鶴(はくいん えかく)の作品群 大コレクター:護立氏にとって、コレクター人生を決定づけたアーティストなんだそうな。白陰慧鶴師の作品群が陳列された一角だけ、この展覧会では一風変わった雰囲気が漂っていた気がしたのは私だけでしょうか。

達磨図」は、今年初に九博での「妙心寺展」こちらの記事をご参照方)で出会えなかった大分・萬壽寺所蔵の「達磨図」のモノクロ版といった感じで、「おわぁ ようやくお逢いできました m(_ _)m」と思いました。
同じ白陰慧鶴師の「蛤蜊観音像」は、現代の新聞の片隅に載せたら、そのまま風刺マンガだと受け入れられそうです。
細川家400年(700年?)の歴史を背負い、過去を護らなければならないという使命感を帯びつつ、自分の眼が別の美に惹かれていく…。そんなキリキリした護立氏にとって白陰慧鶴師の作品は、ふぅ~~っと息を抜ける、それでいて、「一閑人」(こちらをご参照方)じゃないけれど、井戸の底にあるかもしれない深い世界を感じることができたのではなかろうか?


100517_1_2そんな勝手な想像を後押ししてくれる作品が、国宝「短刀 無銘正宗(名物包丁正宗)」でした。

その通称(愛称?)どおり、包丁とも見まごうようなずんぐりむっくりの短刀です。

見かけは若干ユーモラスですが、その刃物としての美しさや、この短刀の由来(右の画像をクリックした先の説明をご覧ください)は、まさしくアンビバレント

それと、この短刀と並んで展示されていた「(こしらえ:鞘や柄、鍔など、刀身と組み合わせることで、刀として使えるようにしつらえたもの)」、「梨地合口拵」との対比がとても面白かった…。

この拵は、この「名物包丁正宗」を護立氏の前に所有していた伊東治正氏か彼の父・祖父あたり(祖父は明治憲法の起草に参画した伊東巳代治)が、この短刀専用に造らせたもの(明治~大正時代製)だそうで、当然、鞘や柄は名物包丁正宗にぴったり合うはず。
ところが、見た目では、かなりスリムな拵で、とても名物包丁正宗は入りそうにありませぬ。
刀にも、着やせするタイプがあることを初めて知りました。


   


第二章 芸術の庇護者」の出品作品は、1867年制作のセザンヌの「登り道」を除いて、すべて20世紀の絵画。

100517_1_3 お目当ての菱田春草の「黒き猫はこのコーナーに陳列されていました。


うん。やはり、イイです。


平面的で動的な黄色の柏の葉と、立体的で静的な黒猫との組み合わせが観る人の心を穏やかにしてくれます。

ふと思ったのですが、猫ほどぢっと人と眼を合わせてくれる動物って他にいるのでしょうか。

猫と見つめ合っている(にらみ合っている)時は、ちょっとした緊張感が漂うものですが、この絵からもそんな「楽しい緊張感」が感じられて、それが心のコリをほぐしてくれるような気がします。


この絵、欲しい


このコーナーでもう一点、気になった絵を挙げるとすれば、横山大観下村観山とのコラボ作品「寒山拾得」でしょう。

観山が寒山(かんざんがかんざん)を、大観拾得をそれぞれ分担して描いて一幅の絵を完成させている作品です。
二人の描く線の違いが楽しめて、まるでレストランで「ハーフ&ハーフ」を食べているような感じでした。


残念ながら小林古径の「髪」は、展示期間を過ぎていて(5月9日まで)観ることができませんでした。


   


かなり良い雰囲気で観ていた「細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション-」 でしたが、それをちょいと邪魔してくれたのが、とあるオッサンの大声。異様に大きな声で「連れ」に話しているのですよ。
どうやら、ヘッドホンで音声ガイドを聞いているものだから、それに負けじと大きな声になっている模様。気をつけましょうねぇ


おっと、このシリーズ、もう1本で終わります。

つづき:2010/05/20 細川さんちのお宝を拝見(その4)

コメント (2)
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