先日、免田栄さんの講演を聞いた。
昭和23年に夫婦が殺され、2人が重傷を負った事件の犯人として免田栄さんは逮捕される。
はっきりしたアリバイ(証人が裁判で証言している)があるにもかかわらず、死刑の判決を受けた。
何度も再審請求を行い、そうして昭和58年に無罪、即日釈放となった。
免田栄さんが拘置所にいるころは、他の死刑囚と話をすることができた(今はできない)。
死刑囚同士が話していると何となくわかるもんだそうで、冤罪の人も何人かいたそうだ。
完全な無実ではなくても、事件現場にいたけど何もしていない人、知的障害の人、計画性がなかった人、死刑にするのはかわいそうだと思う人もいたそうだ。
刑務官も無実の死刑囚がいることを知っている。
しかし、執行に立ち会えと命令されたら断ることはできない。
顔面蒼白で、震えていたそうだ。
やはり死刑は残酷な刑罰だと思った。
免田栄さんは再審請求を何度もし、そうしてやっと無罪を勝ち取った。
再審請求ができたのは支援者がいたからである。
死刑囚の多くは再審請求のやり方を知らないし、支援者がいないし、お金もない。
だから、冤罪であっても、再審請求できなかった人がいるそうだ。
罪が重すぎるということだが、たとえば泥棒に入って、たまたま家人を殺したとする。
その場合、窃盗と殺人であるが、強盗殺人とされると、刑が重くなり、場合によると死刑になる。
ウィキペディアによると、窃盗とは、誰にも気付かれることなく、他人の物を故意に断り無く持っていくこと。
強盗とは、脅迫や実力行使などによって他人の物を無理矢理奪う犯罪。
強盗して人を死亡させたら強盗致死罪、死亡の結果につき行為者に故意があった場合、強盗殺人罪。
窃盗と強盗、故意かどうかで量刑がまるっきり違ってしまう。
しかし、故意かどうか、いくらベテランの裁判官でも判断が困難だと思う。
現在は、犯罪が増えていないし、凶悪化もしていないのに、刑罰だけがだんだん重たくなっている。
新受刑者の平均刑期が1994年は23・4月、1999年は25・6月、2004年は29・0月と増えている。
死刑や無期刑は近年ぐっと増えている。
弁護士会のHPに、死刑・無期刑判決の人員、確定数の表がある。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/deathpenalty/shiryou.html
死刑や無期刑が相当の犯罪が増えているわけではない。
買い物にたとえると、検察が値段を高めに設定し、弁護人が安くするよう交渉し、そして裁判所が適当な値段を決めるということだと思う。
本来は5千円程度の品に検察が1万円と値を付けていたのが、次第に高くなって、今は2万円の値段を請求するような感じである。
それに合わせて、裁判所もだんだんと高い値段にするようになり、今は検察の言いなりで値段を決めている。
つまりは刑罰のインフレ化が進んでいる。
たとえば、2005年、認知症のお年寄りが暮らすグループホームで、利用者の女性(84)にやけどを負わせて殺害した疑いで殺人罪に問われた元男性職員(28)の場合である。
検察は懲役13年を求刑し、地裁は懲役12年、高裁は懲役10年の判決、最高裁は控訴を棄却して懲役10年が確定した。
裁判での争点は殺意があっての殺人罪か、それとも殺意のない傷害致死か業務上過失致死罪かという点である。
女性は石油ファンヒーターを服の上から押しつけられ、やけどによる熱傷性ショック死。
殺意があったか、かっとして思わずやってしまったか。
男性は一人で夜勤しており、直後に遺書を残して自殺を図っている。
情状酌量の余地があると思うのだが。
免田栄さんが逮捕されたころの警察や検察とは違っていると思うが、冤罪だと判明した事件は今でもなくなっていないし、重い罪名にされるということも少なくないだろう。
再審請求をしている免田栄さんに、浄土真宗の教誨師が「前世の因縁でこうなったんだから、それを受け入れて死刑になりなさい」ということを言ったそうだ。
赤面した。
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