三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

阿刀田高「小説家のふところ」

2009年05月31日 | 日記

以前、ローカル新聞に山歩きのガイドを二、三回書いたことがある。
原稿料はたしか6200円だった(原稿用紙何枚分だったかは忘れた)。
その時に思ったのが、文章を書いて生活するのは至難の業だということである。
というのも、原稿を書く前に、まず山を実際に歩かなくてはいけないし、山名の由来とかも図書館で調べたりするから、それだけで最低2日はつぶれてしまう。
原稿料だけで生活するためには、まずは原稿の注文をコンスタントに受けないといけないわけだし、その原稿をきちんと書いていかないとやっていけないわけで、フリーライターという人たちは楽ではないなと思った。

阿刀田高氏に「小説家のふところ」(『殺し文句の研究』)というエッセイがある。
日本にはプロの作家が何人いるだろうかと編集者に尋ねられた阿刀田高氏は、税金、必要経費込みで総年収1200万円はなきゃ駄目だと答える。
仕事場の確保、交際費、資料費、取材費、光熱費などを自分でまかなわないといけないから、1200万円かせいでようやく実収600万円。
で、日本には総年収1200万円の小説家は200人ぐらいだと、阿刀田高氏は結論する。

原稿を1日にどれくらい書けるかというと、何も考えずにただ書くだけで1時間に5、6枚が限界、1日20枚くらい。
何を書くかを考え、調査し、取材し、推敲を加え、書き変えるわけだから、毎日20枚も書けない。
思案2日、執筆1日として、1ヵ月に24日働いて、執筆は8日となり、1ヵ月の作業量は160枚。
年収1200万円として月に100万円、これを160枚で割ると、1枚あたり6250円。
これ以下の原稿料だと赤字労働になる。
実感から言うと1ヵ月100枚前後がほどよいところだそうで、それだと原稿料は1枚1万円。
それだけの原稿料をもらえればいいわけだが、そこまではなかなかもらえないらしい。

「素直なところ、まず平均レベルで一枚六千円を常時取れる書き手は、相当な書き手である。みなさんが、名前を見て、「あ、知ってる」くらいの知名度のある人と考えてよい」
「新人賞を取ったばかりくらいの小説家となると本業の小説では、せいぜい年に五百枚足らずの注文しか来ない(これは単行本一冊と短編三本くらいの注文、むしろ恵まれているほう)。一ヵ月四十枚。原稿料は、五千円くらい。月収二十万足らず。さまざまな経費を自分でまかなっているという事情を考えると、月給十万円程度の収入。かなり苦しい」

「小説家のふところ」がいつ書かれたのかわからないが、金額は今とはいくらかは違うだろう。
まあ何にせよ、ペン一本で食べていくのは楽ではないということです。

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