三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

死刑について考える2 死刑と世論

2008年01月06日 | 死刑

世論は死刑制度を支持していると言われている。
政府による世論調査(2004年実施)ではこうなっている。

死刑制度に関して、このような意見がありますが、あなたはどちらの意見に賛成ですか
 (ア) どんな場合でも死刑は廃止すべきである ( 6.0%)
 (イ) 場合によっては死刑もやむを得ない     (81.4%)
    わからない・一概に言えない           (12.5%)


この設問はあまりにおかしい。
「死刑はなんかいやだな」と漠然と感じている人は結構いる。
そんな人でも「どんな場合でも」と聞かれたら、「場合によってはやむを得ない」と答えるだろう。
そもそも、死刑制度の賛否などといった、生活に直接関係しない問題なんて、大多数の人は関心を持っていないから、どうするかと問われると、現状維持の答えをするものである。
せめてこういう設問にすべきである。

1,どんな場合でも死刑は廃止すべきである
2,終身刑が導入されるなどの場合には死刑は廃止すべきである
3,場合によっては死刑もやむを得ない
4,どんな場合でも死刑は存続すべきである
5,考えたことがないからわからない、もしくは関心がない

しかし、
将来も死刑を廃止しない方がよいと思いますか、それとも、状況が変われば、将来的には、死刑を廃止してもよいと思いますか。
(ア) 将来も死刑を廃止しない (61.7%)
(イ) 状況が変われば、将来的には、死刑を廃止してもよい(31.8%) 
   わからない( 6.5%)

ということだから、死刑賛成の意見が多いことはたしかである。

では、どうして死刑制度を存続すべきだとかんがえるのだろうか。
死刑廃止、あるいは賛成の理由はこういうことがあげられている。

「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」という意見に賛成の理由はどのようなことですか。この 中から、あなたの考えに近いものをいくつでもあげてください。
(ア) 人を殺すことは刑罰であっても人道に反し、野蛮である(28.5%)
(イ) 国家であっても人を殺すことは許されない(35.0%)
(ウ) 裁判に誤りがあったとき、死刑にしてしまうと取り返しがつかない (39.0%)
(エ) 凶悪な犯罪を犯した者でも、更生の可能性がある(25.2%)
(オ) 死刑を廃止しても、そのために凶悪な犯罪が増加するとは思わない(31.7%)
(カ) 生かしておいて罪の償いをさせた方がよい(50.4%)
   その他( 1.6%)

「場合によっては死刑もやむを得ない」という意見に賛成の理由はどのようなことですか。この中から、あなたの考えに近いものをいくつでもあげてください。
(ア) 凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ(54.7%)
(イ) 死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない(50.7%)
(ウ) 死刑を廃止すれば、凶悪な犯罪が増える(53.3%)
(エ) 凶悪な犯罪を犯す人は生かしておくと、また同じような犯罪を犯す危険がある(45.0%)
   その他( 1.0%)

つまり、死刑反対の理由は、
1,死刑は野蛮であり、残酷である
2,国家であろうと殺人は許されない
3,冤罪、誤判のおそれ
4,更生の可能性
5,犯罪の抑止効果がない
6,生きて償うべきである

死刑賛成の理由は
1,応報
2,被害者感情、報復感情
3,犯罪の抑止効果
4,再犯防止

以上の理由がはたして正しいか、間違っているか、そこを確かめて判断しないといけないのだが、何となくのイメージで死刑は必要だと考えている人が多いだろうと思う。
たとえば、冤罪があるかもしれないから死刑は反対と考える人が意外と少ないのには驚くし、死刑を廃止したら凶悪犯罪が増えると誤解している人が結構いる。
死刑制度の実態、たとえば死刑囚の生活、死刑の執行などについて知るならば、死刑についての考えは変わるだろうと思う。

たとえば、冤罪まちがいなしと言われている袴田巌さんは20年以上前から精神を病んでいるし、三崎事件の荒井政男さんは目が見えず、足が不自由なので車椅子。
仮に本当に犯人だったとしても、こういう状態の人を死刑にしたり、拘置所に死ぬまで閉じこめておくのはどうかと思う。

死刑囚の処遇は拘置所によって違っている(死刑囚に限らず、未決や確定囚も同じ)のだが、そうじて厳しいらしい。
3畳程度の独房で一日中ずっと安座していないといけない。
横になるのはダメで、願箋を出さないと寝ころぶこともできない。
部屋の中で身体を動かして運動していいのは午前中15分、午後15分間だけ。
部屋から出るのは風呂と運動、そして面会(一日一組だけで、15分)があった時で、夏は風呂が週に三回、運動は二回、冬は風呂が週に二回、運動は三回。
拘置所によっては冷暖房どころか扇風機もないところがあるので、去年の夏は熱中症で死亡した人がいる(死刑囚ではないが)。

死刑の執行は当日の朝に突然告げられるのだから、毎日びくびくして暮らし、拘禁障害になる人もいる。
絞首刑は首の骨を折るから意識はすぐになくなるので痛みはない、と言われている。
とは言うものの、死刑囚の目は飛び出し、舌を出し、糞尿をもらし、心臓が止まるまで10数分かかる。
後始末は拘置所の受刑者が行う。

死刑囚の心臓が停止したかどうかを確認するのは医師の仕事である。
スコット・トゥロー『極刑』によると、
「イリノイ州医師会が死刑反対の立場、ヒポクラテスの誓いに反するという理由から、処刑を医師に手伝わせることに反対している」
そうだ。

団藤重光は
「わが国では死刑の実態については情報が極端に制限されていますので、それが世論形成に影響していることは、疑いありません」(『死刑廃止論』)
と言っている。
世論は情報と不可分である。
政府は死刑について情報を制約するから、死刑賛成の意見が多くなるんだと思う。
死刑についてももっと情報公開をしてもらいたいものだ。

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1 コメント

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その場合 (硝 煙)
2009-05-12 01:43:12
>仮に本当に犯人だったとしても、こういう状態の人を死刑にしたり、拘置所に死ぬまで閉じこめておくのはどうかと思う。

そうですね  そういう病気やらで もう十分罪は相殺されてるんじゃないでしょうか。
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