江田島市で中国人が8人を殺傷した事件があったとき、妻が「中国人は怖いね」とつぶやいた。
日本人による殺人事件が起きても、「日本人は怖い」とは言わないのに。
正直なところ、私だって中国の食品衛生問題や大気汚染、あるいは中国人の自己主張の強さなど好きになれない。
といっても、私は中国に行ったことはないし、中国人の知人がいるわけでもない。
すべてはマスコミやネットを通した知識で「嫌い」になっただけのことである。
日本だって40数年前の高度経済成長のころに公害問題が騒がれ、エコノミックアニマルと揶揄されたし、今だって福島原発の汚染水は垂れ流し。
証券会社に勤める知り合いが「メディアはいいニュースは流さない。悪いニュースだけ」と言ってた。
メディアでは特殊なニュースは流れても、普通の人々の普通の生活についてはあまり報じられない。
しかも、我々は悪いニュースだけが印象に残り、いいニュースは忘れてしまいがちである。
多くの中国人は日本や日本人について誤解をしているだろうし、日本人が中国や中国人に対して持っているイメージも、実像とかけ離れているかもしれない。
実際のところはどうなのかということで、中島恵『中国人の誤解 日本人の誤解』を読む。
中島恵氏の知人、張(24歳)の話。
ある屋台の店主は「今日、釣魚島を盗られたということは、明日は海南島を盗られるかもしれないということだ。そして、あさっては私が住むこの家も日本に盗られるかもしれないんだぞ」と口から泡を飛ばして話していたという。
日本だって、「中国の狙いは尖閣諸島の次は沖縄だ」と言う人がいるし、週刊誌の見出しを見たら、一発触発、いつ戦争になってもおかしくない状態なのかと不安になるが、中国人も危機感を持っているのかもしれない。
考えてみれば、満州から河北省、上海と、日本が侵略した過去がある。
尖閣諸島の国有化だが、中島恵氏によると、中国では土地はすべて国家のもので、個人や企業は購入できないから、個人から国家が土地を購入するという行為は理解できないそうで、「国有化」を「領土拡大(侵略)」と受け止めた人が少なくなかったという。
2ちゃねるのような中国の掲示板に、日本への憎悪や憎しみを書き連ねるのはどういう人か。
2013年に言論NPOが発表した日中共同調査。
中国人で日本に渡航経験のある人は2.7%。
日本人で中国に渡航経験があるのは14.7%。
日本人と多少話ができる人や日本人に親しい友人がいる人は1.3%。
日本人は20.3%。
日本人を見たことがある中国人は少数派なのである。
日本人だって似たようなもので、中島恵氏はこんな経験を書いている。
中国には13億以上の人間がいるし、多数の少数民族がいる。
当たり前のことだが、同じ中国人でも一人ひとりみんな違う。
ところが、「個人の資質」を「国民性の問題」と受け取ってしまいがちで、個人の当たり前のトラブルや悩みが、「日中」の問題にすり替わってしまう、という中島恵氏の指摘になるほどと思った。
「日本人は~だから」「中国人は~だから」とレッテル貼りにつながる。
こういうレッテル貼りは私もよくするが、単純な二元論によるレッテル貼りは危険である。
どんな国にもいい人もいれば、悪い人もいるのに、レッテルを貼ると悪いところばかりが目につく。