ジャック・フットレル『思考機械の事件簿』の名探偵は「チェスの駒を初めて手にする者でも、論理的な思考能力さえ有効に働かせば、一生を盤面の研究にささげつくした専門棋士を相手にしても、容易に勝利をかちとることができる」とうそぶいて、チェスの全国大会で優勝した。
『思考機械の事件簿』は小説だが、実話を元にしたスティーヴン・ザイリアン『ボビー・フィッシャーを探して』では、7歳の少年が公園でチェスの試合を見ているうちに自然とチェスを覚え、世界チャンピオンをかつて負かしたことのある人と対等の試合をした。
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天才というのはそういうものだと思っていたが、フランク・ブレイディー『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』を読むと、チェスは才能だけで勝てるような甘いものではない。
チェスの天才であり、奇行で有名なボビー・フィッシャーはIQは180。
6歳でチェスを始め、14歳で全米チャンピオンになっている。
そんなボビー・フィッシャーでも、7歳のときにブルックリン・チェスクラブで試合をして、最初は全ての対局で負けている。
12歳でアメリカで一番強いマンハッタン・チェスクラブに通ったり、ジョン・コリンズの指導を受けたりした。
放課後になると図書館へ行き、チェスの本を読破し、棋譜を暗記した。
そして、9歳から11歳までのあいだに年間1000局、11歳から13歳までの間に年間2000局をこなしている。
そんなボビー・フィッシャーでも世界チャンピオンになったのは32歳のとき。
天才は1%の才能と99%の努力だというが、99%の努力をしつづけることができる人が天才なわけです。