三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

櫻井義秀『霊と金 スピリチュアル・ビジネスの構造』3

2012年09月02日 | 問題のある考え

櫻井義秀『霊と金』は、まず神世界について書かれてある。
神世界が運営するヒーリングサロンで多額の金銭をだまし取られた被害が全国各地で発生した。

「ヒーリング・サロンというのは、一見したところスピリチュアリティ・ブームにのった現代的な霊感商法なのだが、日本の新宗教に固有の特徴をいくつか備えている」

神世界は大本から分かれた世界救世教(浄霊・手かざし)の分派である。

なぜ神世界のヒーリング・サロンが短期間に実績を上げられたのか。

櫻井義秀「答えは案外単純だ。「宗教をやめたこと」が成功の元である」
なるほどね、オウム真理教は「ヨガ教室に来ませんか」と勧誘していたし。

ヒーリング・サロンは「何より、敷居が低い」
「ヒーリング・サロンにおいては、本来の神霊治療に付加されていた修養・修行や教会生活を円滑にするための倫理規範が取り払われた」

ヒーラーたちの癒しの技法の特徴
①世界の諸現象を統一的に説明する論理を有している。
世界・宇宙には調和が求められるが、現在は人間の心身を含めて不調和な状態にある。これが身体・精神の病の原因とされる。

②癒しは病の元を除去することにつきる。

西洋医学は対症療法的であるために症状を生じさせる真の病因に迫ることができないと考えられている。
癒しの技法は、人間の力を利用したもの(ハンド・パワー、自然治癒力等)、器械や薬剤を用いるもの(オーラ、波動、パワーストーン、各種健康食品)、超自然的存在の活用(祈り、チャネリング、宇宙エネルギーの活用等々)の類型がある。

③ヒーリングは呪術や妖術に近い。

原因不明の病気や大けがをしたり、自然災害等に遭ったりしたときは、彼らの精神状態をケアすることも癒しである。
病の原因は祖霊の祟りや精霊の仕業、怨みを抱いた人の邪視などだから、霊を慰め、供物を献げ、呪術で相手を懲らしめる。

なぜ現代にヒーリングがはやるのか。

「それに対する一つの解答は、現代人が不可抗力である事態にたじろいだ際に、それを受け止める度量も世界観も失っているからではないか」

「宗教をやめたこと」が神世界の成功につながったということは、宗教の衰退ということだと思う。

病気が治ってあたりまえ、子どもが親の思うように育ってあたりまえ、幸せになってあたりまえ。
人生山あり谷ありと言いながらも、心の中にどこかそういう思いを持っている人は少なくないと思う。
ところが、現実はままならない。
うまくいかないのは何かが邪魔しているからだ、だったら邪魔しているものを取り除けばいい。
邪魔しているものとは霊とか業(カルマ)とかになるのだろうけど。

宗教がちゃんと根づいているなら、世の中そんなものだという、いい意味でのあきらめ(事実認識)があった。
ところが、宗教の影響が衰えるとともに、そうした受けとめ方を忘れてしまい、あやしげなセラピーやヒーリングにはまる人が増えたのではないかと思う。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする