三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

「正義は遂行された」

2011年05月05日 | 日記

オバマ大統領が緊急声明「正義は遂行された」
 オバマ米大統領は1日夜、ホワイトハウスでテレビカメラを前に緊急声明を発表し、2001年9月11日の米中枢同時テロの首謀者で、国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者を「米国が実施した作戦で殺害した」と語った。米国が遺体を確保しており、本人と最終確認した。米国が最大の標的と位置づけていたビンラーディン容疑者の殺害で、米国が遂行するテロとの戦争は大きな転換点を迎えた。
 米国は先週、ビンラーディン容疑者がパキスタン国内に潜伏していることを確認。パキスタン当局と協議の上、米情報当局が拘束・殺害に向けた作戦を実施した。オバマ大統領は声明で、「正義は遂行された」と語った。
産経新聞5月2日

「正義」と言われても、それはアメリカにとっての正義=独善であって、他国の領土で勝手にふるまうことは主権の侵害であり、テロと変わらないと思う。
パキスタンがホワイトハウスを急襲してオバマ大統領を殺害しても、アメリカ政府や国民は何も言わないのならともかくとして。
それなのに、日本政府は「テロ対策の顕著な前進を歓迎する。引き続き、国際社会の(テロへの)取り組みに貢献していく」と評価している。
自国の領土で外国の政府が何をしようと問題ないのなら、北朝鮮による拉致事件だってOKだということになる。
でもまあ、1973年に金大中事件という、日本のホテルに滞在していた金大中が韓国のKCIAに拉致された事件があったが、政治決着で終わってしまったしね。
諸外国の反応も同じで、
「各国、米軍の作戦成功を歓迎」とのことである。
報復の可能性を、各国の政府も危惧しているのに。

アメリカ人はどう思っているかというと、世論調査では「93%がビンラディン容疑者殺害支持」「圧倒的に強い世論の賛同を得ている」そうで、オバマ大統領の支持率も上昇している。
それも単なる支持ではなく、「喜び爆発」なのである。
「USA!」ホワイトハウス前、喜び爆発
「米同時テロ首謀者ウサマ・ビンラーディンが死亡」――。
 あの9・11からほぼ10年、行方をくらましたまま、2代の米政権と米国民をいらだたせてきた男が最期を迎えたとの報に、ワシントンのホワイトハウス前では日曜深夜にもかかわらず大勢の市民らが続々と集結し、星条旗を掲げて歓声を上げる姿が見られた。
 人々は、五輪などでおなじみの「USA!USA!」のかけ声を繰り返したり、米国歌を大合唱するなどして、「宿敵」の終わりに喜びを爆発させていた。
読売新聞5月2日

はしゃいでいる人たちの映像を見ると、この明るさは何なんだ、と思う。
世界貿易センターにジェット機が突っ込むテレビの映像を見て快哉を叫ぶイスラム諸国の人たちとイメージがダブる。
そういえば、広島高裁で光市事件の被告に死刑判決が出た時、高裁前にいた人たちから拍手が起こったけれども。

遺族の気持ちはどうなのか
、こう言っている人がいる。
 夫リチャードさん(当時54歳)を亡くしたコネティカット州のジュディ・キーンさん(64)は2日朝、毎日新聞に「うれしいと言えるかもしれないが、別の部分ではうれしいとは言いたくない。終わりに向けた一つのステップとは思う。人々が1人の死を喜ぶ姿には少しうろたえている」と心境を語った。
毎日新聞5月3日
「人々が1人の死を喜ぶ姿には少しうろたえている」ということは真っ当な感覚だと思う。

墜落した乗っ取り機に乗り合わせたエドワード・フェルトさんの兄弟ゴードンさん(ニューヨーク州在住)はピッツバーグの地元紙の取材に「何が起きようと犠牲者は戻って来ない。でもビンラーディン(容疑者)がこれ以上、死をもたらすことができないと分かり、少しは安心している」と語った。
 世界貿易センタービルの崩壊現場に出動した消防士の息子=当時(35)=を亡くしたニューヨーク州の母親は地元ニュースサイトに「息子は家族も仕事も愛していた。これで区切りがついたなどということはない」と話した。
共同5月2日
単純に喜んでいるわけではない。

 杉山晴美さん(45)は2日、テレビ速報を見て、締め付けられるような頭痛に襲われた。2001年9月11日の同時多発テロで、ニューヨークの世界貿易センタービル内に勤めていた夫の杉山陽一さん(当時34)を亡くした。(略)
 事件直後は同容疑者を憎んだ。しかしそのうちに、事件の背景の根深さから「テロリストの行為は正当化できないけれど、個人は憎めない」と感じるようになった。(略)
 事件の時は幼児だった小学6年生の次男(11)に同容疑者の死亡を伝えると「それでどうなるの?」と聞かれた。どうなるとも思えないんだよね、と答えたという。
(朝日新聞5月3日)

 杉山陽一さんを失った住山マリさん(71)は、ビンラディン容疑者殺害のニュースを手放しで喜ぶことはできなかった。
 「これで真実が分からなくなった」。真相が分からないままでは、息子の死を受け入れられないという。
(スポニチ5月3日)
死んでしまったら真相が分からないままだということ、これは死刑の執行でも言われていることである。
ビンラディンを殺さずに逮捕することも可能だったらしい。
ビンラディンは武器を持っていなかったし、目撃した娘「急襲作戦開始数分後、ビンラディン容疑者は米軍特殊部隊員に捕まり、家族の前で射殺されたと主張している」そうだ。

「我々遺族の胸の中に区切りはない。子どもが帰るわけでもなく、悲しさや悔しさが増幅するだけです」。同時多発テロで、富士銀行ニューヨーク支店に勤務していた長男和重さん(当時35歳)を亡くした広島市安芸区の元銀行員、伊東次男さん(76)は、かみしめるように語った。
 2日昼、報道機関からの電話でビンラディン容疑者殺害を知った。米国が大変な犠牲を払った答えなのだろうと思うが、「同じ悲劇が蒸し返されるようなことはあってほしくない」と報復テロの活発化を心配する。(略)
 度重なる訪米の世話になった知人から依頼されて約2年前、「原爆体験」を多くの人の前で語った。広島に生まれ、1945年8月6日の原爆投下で12歳の兄を失った経験を持つ。「息子の死」も重なり、平和への思いは募った。地元の中学校や原爆資料館で、平和の大切さを訴えている。「一方にとっての正義は、一方にとって悪である場合もある。どうしたら負の連鎖を断ち切れるのか。世界中の人に考えてほしい」と訴えた。
毎日新聞5月2日
戦争と死刑は同じことなんだと、あらためて思う。
ビンラディン殺害は戦争なのか、それとも死刑(処刑)なのか。
戦争も死刑も本質は、暴力に対して暴力で対抗することである。
それは暴力の連鎖を生み出すことになる。
死刑廃止がEU加盟の条件なのに、どうしてEU各国はアメリカを非難しないのか、おかしいと思う。

コメント
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