三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『「心の専門家」はいらない』『心を商品化する社会』2

2011年01月12日 | 
何かよくわからないが、とにかくいいものだというカウンセリング信仰がある、と小沢牧子氏は『「心の専門家」はいらない』で指摘する。
「「心のケア」が、悩みの解決の合い言葉のようになってきた」

大学生はカウンセリングにどういうイメージを持っているか。
やさしく助言してくれる・つまずいたときにサポートしてもらう・よいヒントやアドバイスをくれる・導いてくれる・進むべき方向を指し示す・必要な情報を与えてくれるetc
学生たちのカウンセラーに対する願望。
苦しい自分をステキに楽にしてくれる・ラクに生きられる性格になおす・悩みやイヤなものを整理してくれるetc
「カウンセリングはきっと自分自身を発見させてくれる、自分らしさを引き出してくれる、本来の自分を見いだすことができる、よりよい自分になれる」

小沢牧子氏は若い世代がカウンセリングを求める要因をもう一つあげている。
「それは、悩みがあればそれを即座に解決したいという強い願望である。時間をかけ、時間にゆだねてものごとの展開を待つという考え方を受け入れにくい」
麻原に信者が求めたのも速やかな自己変革だと思う。
こうした願望にはニューエイジ・スピリチュアルと共通性がある。
つまりカウンセリングとは、現実の自分が受け入れられない人に、こうなったらいいなという願望を叶えてくれる魔法の杖なのである。

もちろんこれは誤解である。
実際のカウンセリングは悩んでいる人によいアドバイスを与え、やさしく導くものではない。
「カウンセリングは、若者たちが思い描いているような、手っとり早い助言や意見を率直に提供するわけではない」
しかし、このようなイメージを持っている人は多いだろうし、私も以前はそう思っていた。
行政にしても、何か厄介なことが起きた時にはカウンセリングで解決できると考えているらしい。
事故や犯罪に遭遇した被害者には心のケアをしなければならないと、専門家への依存が奨励される。
文科省も、スクールカウンセラーが問題や悩み事を解決してくれる、それも速やかにと期待している、というので小中学校にスクールカウンセラーを配置している。
さらにはカウンセリングは、問題が起こることを予防すること、そして成長促進にも役立つと思われているそうだ。

小沢牧子氏によると、こうした風潮は共同体が崩壊して悩み事を相談する人がいないということ、そんな中で心理療法家は安心して何でも話せるエキスパートだとマスコミを介して宣伝してきたことが功を奏したということがある。
小沢牧子氏はこうした風潮を批判し、心の問題を専門家にまかせることに否定的なのである。
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