三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

アメリカの格差、日本の貧困(2)

2008年09月23日 | 日記

日本の貧困層は600万人以上、20人に1人だと言われている。
今野晴貴氏(NPO法人代表)のインタビュー記事の見出しは「自己責任じゃない、責めるべきは失業者を救わない社会構造」である。

不利な労働条件で働く若者の多くは、「こんな職場を選んだ自分が悪い」と自分を責める。しかし、今野晴貴さんは「責められるべきは法令違反している企業側、労働者ひとりの力は微弱でも、仲間となら見えてくる解決法もある」と語る。


今野晴貴氏は「日本は欧米に比べて、〝自己責任〟という考え方が浸透している」と語る。
これは同時に、国民には最低限の生活をする権利があると考えている人が少ないことを指す。
憲法で保障された最低限の生活を保障すべき国家は何もしてくれないのにもかかわらず、日本人は声をあげることをしない。

「ワーキングプア 人間らしい生活を求めて」という講演会で、もやい(ホームレス・生活困窮者への相談、ワーキングプア状態についての相談、生活保護についての相談などを指定るNPO)事務局長の湯浅誠氏「反貧困 私たちにできること」という講演を聞いた。

貧困は社会の問題、社会のありようを問う。
派遣会社が給与を支払ってくれず、生活ができなくなって退職した20代の人の相談のメールに、日払い派遣の仕事を選ぶしかないが、働くとこが遠い場所だと交通費がないので働けず、資金は底をつき、ライフラインも停まってしまい、家賃は払えそうもない。
その人は「このまま追い出されてホームレスになるか、自殺しか方法は残されていないのでしょうか」と訴える。

27歳のホームレスは自殺も考えたが未遂に終わり、「生きていても死ぬか悪いことして刑務所暮らしするしかないのかとか考えたり」している。

もやいに相談する人は20代ばかりではなく、全国のあらゆる世代から相談を受ける。
彼らに共通するのは役所に相談するということを考えもしていないことである。
自己責任論に縛られていると湯浅誠氏は言う。

仕事があれば働くのだが、月給をもらえるまでの一ヵ月間の生活費(食費、職場までの交通費、家賃など)がないから、日雇い労働をせざるを得ない。
2千円でもお金があれば、人に頼ってはいけないと思う。
手持ちの金が100円とか20円になり、仕事探しもできなくなり、とことんどうしようもなくなって、やっともやいに相談する。

生活保護からももれて、最低ラインより以下の人が600万人から850万人いるが、この人たちの多くを家族が支える。
家族が社会保障を肩代わりしているのである。

では、家族が支えない場合はどうなるのか。
それが先ほどのメールで相談した人たちである。
この人たちは労働市場に戻ると、どんな低賃金、どんな労働条件でも働く。
風邪をひいてバイトを休んだらクビになっても、食っていくために文句を言えない。
労働力の安売りを本人がせざるを得ないわけである。
そうして労働市場の質の悪化という悪循環。

若い人は今さえ楽しければいいと思っているとか、自分の権利ばかり主張していると非難する人がいる。
しかし、多くは自己責任の呪縛にとらわれ、生きていくのに精一杯なのである。

大津和夫氏(読売新聞社)はこう語る。

この取材をしていると1週間ぐらい取材できなくなっちゃうんですよ。重たくて。あまりにも重たいんです。彼らは異口同音に『自分は無視されている』と語る。それは『自分がいてもいなくても、世の中には関係がないんだ』という意味です。まるで最後の言葉みたいですよね。僕の感覚からいうと、こういう状況って、いまだ多くの人に「見えていない」。


マザー・テレサに「この世で最大の不幸は戦争や貧困などではない。むしろそれによって見放され、“自分は誰からも必要とされていない”と感じること」という言葉があるが、「誰からも必要とされていない」人がカルカッタだけいるのではない。

正社員、パートなど、働き方の違いを問わず、雇用主が最低限支払わなければならない賃金が日本はとても低い。
正社員の3割が年収300万円以下で、貧困ラインに正規社員も入っている。
残業代をもらえない「名ばかり管理職」も多い。

知人からマスコミ業界は社員の平均年収1千万円以上という会社が普通だと聞いた。
時給800円で1日20時間、365日働いて、年収は584万円。時給1000円だと年収730万円である。
とてもじゃないが、パートで年に1千万円を稼ぐのは不可能である。

大津和夫氏はさらにこう話す

長時間労働は古くて新しい問題ですが、今の日本には目安があっても上限規制がないんです。つまり、企業側がずっと働かせ続けられる法体系になっているんですね。

7年間ネットカフェで寝泊まりしていた34歳男性が、友だちに連れられてもやいにやって来た。
彼は最初「ほっといてくれ」と言ったそうだ。
どうにもならないと自分に言い聞かせて生きてきた、こんなもんだと思わないと生きていけない、だから変な夢を見させて失望したくない、ということなのだろう。

社会から排除された人は、自分の尊厳が守れなくなり自分自身からも排除するようになる。
でも、この34歳の男性は生活保護を受けてアパートに住み、2ヵ月で仕事を見つけたそうだ。

お金をたくさん持っている麻生太郎氏に、セイフティネットや居場所作り、派遣労働や最低賃金の法整備などを何とかしてもらうようお願いしたい。

コメント (16)
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