◇バイデン氏「愛国心示せ」/ペイリン氏「仕事失わせる」
米大統領選の焦点の一つの税制問題をめぐり、民主党のバイデン上院議員と共和党のペイリン・アラスカ州知事の両副大統領候補が18日、火花を散らせた。バイデン氏が富裕層への増税政策について「(富裕層は)愛国心を示せ」と訴えたのに対し、ペイリン氏が「愛国心の問題ではない」とかみついた。
バイデン氏は18日、ABCテレビで、税制問題では中間層を重視する考えを強調。富裕層に対して「愛国心を示すときだ。米国を救うときだ」と述べ、増税に理解を求めた。民主党はブッシュ政権が実施している年収25万ドル超世帯への減税を廃止し、所得税の最高税率を35%から約40%に引き上げるよう提案している。
これに対しペイリン氏は遊説で「増税は仕事を失わせ、中小企業に影響を与える。愛国心の問題ではない」と反論。民主党大統領候補のオバマ上院議員について「稚拙な判断が問題だ」と批判。「オバマ氏は増税路線」と主張する共和党大統領候補のマケイン氏を後押しした。
バイデン氏は「税金を払うことは愛国心だと言っているだけだ」と反論したが、論争にマケイン氏も参戦。バイデン氏の発言を「あぜんとする」と痛烈に批判し、富裕層への減税継続を強調した。(毎日新聞9月20日)
共和党が金持ちの味方だということに納得したニュースだった。
不思議なのが、大統領選で貧困層がなぜ共和党候補に投票するのかということ。
もっとも、民主党が貧者の味方というわけでもないらしい。
2007年末までに1億ドル(約120億円)の大台に乗せないと戦えないと言われてきたが、大統領選全体では1人あたり5億ドル規模が必要との見方もあるとなり、さらには各候補の資金総額は初めて10億ドルを超えると予想されているそうだ。
https://www.asahi.com/international/president/system.html
民主党候補のオバマ上院議員は8月に獲得した選挙資金が6600万ドル(約70億円)、50万人が新たに献金し、献金者の総数は250万人以上、1ヵ月の資金獲得では史上最高額。
共和党候補のマケイン上院議員は4700万ドル(約50億円)。
これじゃ金持ちの損になる政策を両候補ともするわけがない。
アメリカ合衆国の貧困率は12.7%で、人数にするとおよそ3700万人が貧困ライン以下の生活をしている。
医療保険未加入者が約5000万人で、約3億人の人口の6人に1人が保険に入っていない。
国民皆保険制度を実施しようとするヒラリー・クリントンは民主党大統領候補になれなかった。
その一方、アメリカでは、保険会社は保険に入っている人に保険金を払おうとしないという実態をマイケル・ムーアは『シッコ』で告発している。
保険に加入していない人は医療を受けられないことをどう思っているのだろう。
時給6ドルや7ドルで働く400万ともいわれる女性たちに混じって、ウェイトレス・掃除婦・老人介護・ウォルマートの店員として働いたバーバラ・エーレンライクは、掃除婦の同僚に「客たちのことをどう思っているのか」と尋ねると、こういう答えが返ってきたという。
日本でも格差が広がっており、他人事ではない。
日本のジニ係数(所得分配不平等度)はOECD20ヵ国のうち下から6番目。
相対的貧困率は、日本はOECD17ヵ国のうち下から2番目(最下位はアメリカ)
自民党の総裁選や衆議院選で一番問題にしてもらいたいのは格差の拡大、そして貧困層を減らすことである。
そういう意識は政治家や官僚にあるのだろうか。
「ビッグイシュー」102号に大津和夫氏(読売新聞社)のインタビュー記事が載っていた。
最近の話だ。大津和夫さんの耳にある官僚の言葉が飛びこんできた。
「若者問題ってもう終わったよね。景気も回復してきたし、失業率も下がった。仕事のチャンスなんかいくらでもあるでしょう?」
聞き捨てならなかった。
いや違う。それは違うと、大津さんは反論した。
「その仕事はどんな仕事ですか? いくら稼げますか? 彼らがどういう働き方をさせられているか、あなたは知っているんですか?」
そこまで問いつめていくと、相手も黙ってしまい、もう何も答えられなかったという。