水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

ユーモア推理サスペンス小説 無い地点 <7>

2024年06月25日 00時00分00秒 | #小説

「そ、その異星人とやらは、また現れるんですか?」
「そこまでは…。私も人の子ですからのう…」
「ええ、それは確かに…」
 口橋は、そんなことは当たり前だろっ! と一瞬、言おうとしたが、口にするのが憚(はばか)られ、思わず唾を飲み込んだ。
「では、これで…。お伝えしたいことは、ぜぇ~~んぶ、お話ししましたですじゃ…」
 老婆はそう言うと、椅子からのっそりと立ち上がった。
「ま、待って下さい! まだ、お訊(き)きしたいことがございますので…」
「何ですかいのう? 私ゃ、こう見えて、結構、忙しいもんでして…」
 老婆は、ノッソリと椅子へ腰を下ろした。
「あの…その異星人とは、いつでもコンタクトを取れるんですか?」
「フフフ…結構、目はいい方ですじゃ。コンタクトなんぞ嵌(は)めとりゃせんですが…」
 口橋は、そのコンタクトじゃないっ! と言いそうになり、また唾を飲み込んだ。^^
「ははは…お婆さん。接触する機会のコンタクトですよ」
「こう見えても祈祷師の端くれですじゃ。そんなことは容易(たやす)いことです」
「そうですか…」
「また、何ぞありましたら、庵(いおり)までお立ち寄り下せぇまし…」
 老婆は、ふたたび椅子からのっそりと立ち上がると、「オオォ…ッ、呼んでおる、呼んでおる」と意味不明な言葉を発し、面会室を出ていった。^^


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