水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (92)インパクト

2022年09月24日 00時00分00秒 | #小説

 最近は便利になって、ボルト一つを外(はず)すのにも手を使わず、インパクト・ドライバーで簡単に外せるのである。手だと締め付けが足らない場合とかで、緩(ゆる)んで外れたりする。インパクトなら締め付けが足らないということはないから、滅多なことで外れる心配はない。ただ、インパクトで締め付けた場合は、手で外すのが厄介になることもあるから軽く、軽~~ぅく締める注意が必要となる。
 とある町のとあるベーカリーである。朝から焼きたてのパンが店頭に並べられる。開店を待つかのように店の前は黒山の人だかりだ。ここのパンは美味しい・・と評判が広がり、今では開店約二時間で完売してしまう繁盛ぶりだ。この日も黒山の人だかりが開店前から出来ていた。
 並ぶ二人の奥様の会話である。
「すごい人ですことっ!? 」
「ここのパンは、すっごくインパクトがあるでしょ?」
「奥さまっ! それも言うならボリュームっ!」
「もちろんボリュームもありますわ。加えて食感にインパクトがねっ!」
「それは言えますわね、ほほほ…」
 寒い朝である。二人の奥様はボリュームとインパクトを兼ね備えた厚着で並んでいた。
 対するコトに備えるには、ボリュームがあってもインパクトが足らないと物事は首尾よくいかないように出来ているのである。^^

                   完


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