水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (82)落ちつき

2022年09月14日 00時00分00秒 | #小説

 落ちつきが足らないと何事によらず不首尾(ふしゅび)となる。
 治療法の確立やウイルス治療薬が開発されたことで、久しぶりに満員御礼の垂れ幕が国技館に掛けられている。土俵上は小結、表彰龍と関脇、海老錦の取り組みの真っただ中である。時計係が制限時間一杯を行事に告げる。
「待ったなしっ! 手をついてっ!」
 行事が偉(えら)そうに両力士に告げる。
「手をついてっ!!」
 そこまで言わなくても…と、両力士は思う。表彰龍はさほどは思わなかったが、海老錦は思い過ぎて落ちつきをなくす。そして、立ち合いとともに軽く表彰龍にいなされ、網打ちで表彰龍に敗れ去った。
 風呂場前でのアナウンサーの問いかけに答える海老錦のコメントである。
「落ちつきが足らないとダメっすねぇ~! 網にかかりました…」
 海老だけに・・という意味が込められたダジャレだ。^^
 落ちつきが足らないと失敗する一例である。^^

                   完


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