今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

逃げるならどの方角がいいか:関東

2011年03月20日 | 東日本大震災関連
関東のみの話題で申し訳ないが、
最悪の事態として、15日午前中のように関東に放射性物質が流れ込んだ時の1000倍、すなわち、毎時0.5μSvではなく500μSvクラスの放射性物質が流れてくる場合を考えてみよう。
この値は屋内退避基準にも達しないレベルなのだが、たとえば悪い事態が長期化しそうなのでいっそのこと脱出するとしよう。
くれぐれも、決して事態を悲観してのことではない。むしろ少し余裕ができたがゆえの思考実験のつもり。

どこに逃げるかの判断材料は、その地への空気到達量を規定する、距離風向地形である。ついでに風速も考慮する。
それと敵(拡散する放射線物質)がどの方向に拡がるのかを知ることも大事。これをメインに考えてみたい。

まず距離
距離が2倍になると濃度が1/4に薄くなるから、距離をかせぐのが一番効率がよい。
安全レベルになる地点まで行けばいい。
でも計器がなければ自分で判断できないだろうから、なんら指示の出ていない地域に入ればひと安心。
自力で判断したい人は、ネットで地域のデータを参考に。

次に風向
私がフランスのシミュレーション動画を評価するのは、拡散パターンの実際がよく分かるから。
理論モデルにあるように、風下に向かって扇型に拡散するのではなく、実際は蛇のうねりのように予測が難しい曲線運動をしている。
これは風向のきまぐれな変化のためだ。
ただ、基本は東の太平洋上に流れている。定常的な偏西風の影響による。
ということは、福島原発から空気中に放散された放射線物質は、基本(大部分)は太平洋に出て行くと考えてよい(これはうれしい)。
西風にのりやすいのは、周囲より温度が高い空気として(線香の煙のように)上昇するので、上空の西風域まで届くから。
ただ、ときたま内陸に拡がる。これは地上の風による。
逆に言えば、人の住む内陸側には長時間は居続けない傾向にある。

それと地形のせいもあるが、北と南には拡がりやすい。
冬は北風だから南(関東)に、夏は南風だから北(宮城)に流れやすい。
逆に西(新潟)には流れにくいようだ(間に山がたくさんあるし)。
ただし、地上の分布では、比較的値が高い領域(この3日間同じ)が、第一原発から北西方向にまっすぐ伸びている(図の31,32,33,61,62,63,2)。
これのダイレクトな原因となるはずの”南東風”は存在しない。海風(東風)と地形の相乗効果のためかもしれないが、正確なところは不明。

またシミュレーションでは、濃度の濃い部分が塊状態のままけっこう遠方まで拡がることもわかる(一時的だが)。
これも弱風を前提とした扇型モデルに合わない動きだ。
これは空気の塊が拡散する前に背後の強い風で押し流される現象で、強風がちの時におきる(風には強弱の”息”がある)。
つまり、強風の時は、距離の効果が減ずる。

ということは風速も考慮したほうがよい。
風速は風上の空気が流れてくる速度だから、距離をとりたいなら平均風速以上の速度で逃げる必要がある。

最後に地形
同じ距離でも測定される放射線量が異なるのは地形の要因が大きい。
たとえば、海沿いでは、昼は強い海風が吹くので、海風が原発からの風上と異なる方向であれば、吹き飛ばしてくれそう。
風上と一致すると却って悪い。
シミュレーションで高濃度部分が関東に深く入った時は、メインの南風で関東に入り、それに鹿島灘からの海風が内陸側に押し込んだ感じがする。
風上の原発との間に高い山があれば障壁となって遮られやすいのは誰でもわかるが、フェーン現象のように、山越えの下降流が起きて、障壁効果がおきないこともある。
地形は風向に影響を与えるが、実際どのような地形がどのように風向に影響するかは、複雑な流体力学的現象で難しい。

あまり参考になることを言えなかったのが残念。

コメントについて:お読みください

2011年03月20日 | 東日本大震災関連
コメントをいただけるのは基本的にはありがたいのですが、
以下のコメントについては、対応する余裕がないので、
今後は掲載もせず、返答もしないということにいたします(また消去することもあります)。
あしからず。
1.記事に関係ない方向への議論
2.最近の記事を読んでもらえれば書いてあることや初歩的すぎる質問。
3.揚げ足取りや粘着的なコメント
せっかくネットを使っているのですから、ご不明な点は検索でお調べください。

逆にありがたいのは、情報提供です。
現地情報、リンク情報など。
放射線関係の計測サイトは、自分で探しています(いいのが見つかったのでもうすぐアップします)。

励まし、ちょっとした感想などは、いただけるだけで励みになります。


21日の雨と放射線:安全アドバイス

2011年03月20日 | 東日本大震災関連
今夕から日本の南岸に前線を伴った低気圧が通る。
すなわち、雨になる。
原発事故から一週間、関東では雨がなかった。
なのでその間(特に15日)に飛んできた放射線物質が地表に蓄積している。
17日の計測では、地表は空気中の4倍の量を示した。

私のブログの読者なら、もうとっくに家の前の水まきはすんでいるだろうが、
今晩からの雨が、地表にたまった放射性物質を希釈して流してくれる。
それはいいニュースなのだが、ちょっと問題もある。

風は低気圧向かって反時計回りに入り込む。
なので、通過中のある期間、関東にとって、福島原発が風上になる。
気象庁の予報によると、たとえば東京では、明日21日の午前6時から午後6時くらいまで、北ないし北北東の風となる。
この期間、大気中の放射線濃度が高まり、それが雨滴にまじって落ちてくると考えられる。
どのくらい濃度が高まるのかは、その頃の原発の状態による。
きちんと定量的に判断したい人は、風向と実況に近い測定値をチェックしてほしい
(私のガイガーカウンタは防水でないので雨滴の計測はできない)。

ということで、当たり前だが、雨に濡れないほうがいい(あえて濡れようとする人はいまい)。
もし濡れたら、シャワーの湯で洗い落とす。

ただしこれは安全基準によるアドバイスなので、雨に濡れると危険(傷害に至る)を意味するのではない。

安全基準:健康のためには朝食を摂った方がいいが、それはただちに朝食を摂らないと危険であることを意味しない。

15日のセシウム137関東拡散の再現動画

2011年03月20日 | 東日本大震災関連
福島原発の事故も、現場での英雄的な活動のおかげで、曙光が見えてきた。
私も過去を振り返る余裕がでてきた。
フランスのIRSN(放射線防護原子力安全研究所)による、ここ数日の福島原発からの放射線物質セシウム137の拡散をシミュレートした動画を紹介する。
オリジナル:上の小さいのは静止画、ページの下にいくと動画
Youtube:上と同じ動画
これを見ると、東の太平洋に拡がっていた拡散域が、15日午前中に風向きがかわって南下し、東京を含む関東全般に濃い濃度域が拡がった。
その時、私は名古屋にいたので、自分では計測できず、忸怩たる思いで、東京日野の常時観測サイトを開いていた。
すると、そこの放射線量がぐんぐん上昇していき、青ざめた。
16日以降の名古屋での予定をすべてキャンセルして、16日に帰京する決心をしたほどだ(東京にいたら、”一家ごと名古屋へ避難”が頭をよぎったろう)。

その時、東京新宿区での最高値は瞬間的に500nSv/hr(0.5μSv/hr)に達した(平常値は40nSv/hr)。
0.5μSv/hrなので値としてはたいしたこないが(湯の島ラジウム温泉の浴室内と同じ)、
急激な増加率にあせったわけ。このままどんどん上昇していくのかと。
心配を胸に仕事(卒業式)に出て、戻ってチェックしたら、昼にはぐっと減少していたので安心した。

この時が瞬間最高値で、今の東京は平常値レベル。
茨城や栃木はこの時もっと高い値になった。
私の「リンク集」内の文科省の経時グラフで確認してほしい(もうじき範囲外になるので今のうち)。