今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

南海トラフ地震が”迫っている”理由

2024年08月11日 | 防災・安全

日向灘の地震で、南海トラフの地震の危険性が高まり、 NHKの画面を見てわかる通り、多分ここ1週間は”警戒体制”を続けるだろう。
ただ、この1週間が無事に終わったら安心か、すなわち警戒を解除していいかというと、台風一過のようなわけにはいかず、危険性はその後も漸増し続ける(ただし天気予報並みの”その日に発生するか”という確率では1%以下のレベル※)。
※:地震はデータの蓄積がある降水現象と違って発生確率(=予測)の計算はほとんどできない(できたとしても数十年単位)。なので地震の確率の数値自体厳密に考える必要はない。
すなわち、今のようなお役所的やってます感を全面に出す必要はないが、警戒体制は維持し続けなくてはならない(経済活動を制限するほどではない)。

そもそもなぜ、南海トラフの地震の危険性が高いのか。
情報を整理してみよう。

元々は南海トラフの東端の”東海地震”(駿河湾震源)のみの危険性が言われていた。
なぜなら、前回の東海地震は幕末の1854年で、昭和の終わり頃には周期の100-150年に達していたから。
それに対し、東南海地震と南海地震は、終戦前後(1944,46)に発生したので、東海地震の危険性が言われ出した頃は、次の周期に時間があった。

ところが、本来ならすでに発生しておかしくない東海地震が、周期を過ぎても発生しない(2024年で170年目)。
それはいいことかというとむしろ逆で、東海地震の震源域のエネルギーがかつてないくらいに溜まっていることになる。
すなわち次に発生する東海地震は、今までの東海地震よりエネルギー(マグニチュード)が強いことが予想される。

そして、悪いことに、実は東海地震は、今まで単独で発生したことがなく、必ず東南海・南海地震と”連動”していた。
例えば1854年の東海地震は東南海地震と連動し、その32時間後に南海地震が起きた。
ということは、最も発生確率が高い東海地震が発生すると、周期のすでに半分を超えた東南海・南海地震をも連動させる可能性が出てきたのだ(100年周期とすると2040年以降に起きると予想)。
しかも、前回の東南海・南海地震は、エネルギーを出し切っていない規模だったので、2024年現在、周期以上にエネルギーが溜まっていると思われる。
とうことで、前々回の南海トラフ地震の宝永地震(1707年)以来の最悪の”3連動”地震(M9)になる可能性があるということだ。
ちなみに、宝永地震の後、トラフの延長上にある富士山が噴火し、巨大な宝永火口ができた(御殿場は死地となり、江戸に降灰があった)。
富士山も、これ以降噴火を休止している。

こういう日本最大級の大変動がやってきそうだということ。


防災の優先順位:備蓄は最後

2024年08月09日 | 防災・安全

南海トラフ地震のリスクが増した、と報道された途端、店から水や備蓄品が売り切れたそうだ。

こういうパニック的行動って、株価が暴落した時のパニック売りと同じ、素人的な馬鹿げた行動。

私は防災の授業で、以下の防災行動の優先順を質問している。

a.水・食糧の備蓄 
b.家具の転倒防止 
c.建物の耐震化 
d.避難用具の購入

さぁ、上のa-dのどれから手をつけるべきか。

優先基準を生命>財産>生活の質とするなら、優先順は耐震化>転倒防止>避難用具>備蓄の順となる。

それに対し、実行しやすさは、備蓄>避難用具>転倒防止>耐震化の順。
すなわち、多くの人は、備蓄をしただけで”安心”し、耐震化まで至らない(=備蓄品たっぷりの家の下敷きになって圧死)、という問題点を話している。
※:株価下落のパニック売りと合わせると、この種の人たちは(不安-安心という)感情原理で行動していることがわかる。すなわち動物的なシステム1で行動して、理性的なシステム2に準拠していない。システム1の特徴は反応は早いが不正確なこと。この不正確性を是正するために人類にシステム2が創発されたのに。

まさに”多くの人”はこの通りの行動をしているようで、こういう人たちと異なる行動をした方が正解と言えそうだ。

追記:この記事を書いている最中、神奈川内陸で震度5弱の地震があった。広い意味ではこの地震もフォリピン海プレートの沈み込みによるものなので南海トラフと無関係でない。
それにしても、震度とマグニチュードの対応(ともに5)は直下型の今回も該当した(昨日の日向灘の海洋の地震だと内陸の震度6<震源のマグニチュード7となる)。


南海トラフ地震の切迫性アップ

2024年08月08日 | 防災・安全

今回の日向灘のM7.1の地震。
 南海トラフの想定震源域内(トラフそのものではない)で起きた。
この地震そのものは陸地で震度6弱で、今のところ人的被害は慌てた人が怪我をするレベル(震度5以上で毎度発生)で済んだ(正確な被害状況は翌日にならないと判明しない)。
問題なのは、この地震によって、南海トラフ全体の巨大地震の切迫性がさらに高まったということ。

いよいよ”トラフが活動を開始した”(余震)、と解釈できるから。

気象庁の会見はそういう趣旨で、「皆さんいよいよ本気で対策してください」ということだ。
ちなみに、対策の中身は、私が大学の防災の授業で課題とした内容で、受講生は対策済み。

改めて言う。
最大級のM9.1(三連動)の場合、想定される死者・行方不明者は32万3千人と、スマトラ沖地震の(数カ国分の)死者(20万人)を上回る空前絶後の大災害となる。
駿河湾と遠州灘沿いの静岡県、それに紀伊半島の南半分と四国の南半分は壊滅。
東海道(新幹線・東名高速)も寸断。
名古屋や大阪にも津波がやってくる。

さらに、この巨大地震によって、本州内陸部にストレス(圧)がかかり、富士山の噴火(京浜地方に降灰)、愛知の猿投-高浜断層の地震(東海地震より愛知の被害想定大)、大阪中心部の上町断層の地震(想定死者4万人)を誘発する可能性がある。
※:フィリピン海プレートが本州を押している力
我が国開闢以来の国難ともいっていい。

読者の皆さん、まずは居住自治体のサイトを開いて、「防災」のページに行って、ハザードマップでの自宅の災害危険性※、最寄りの避難所を確認し、ついで地域固有の防災対策を参照しましょう。
※:津波、浸水、土砂災害、液状化は同じ自治体内でも危険度は地域によって異なる。


記録的短時間大雨情報の恐ろしさ

2024年07月26日 | 防災・安全

このブログでは過去にも記事にしたように、気象庁から「記録的短時間大雨情報」が発表されたら、その地は大雨災害(河川氾濫、浸水、土砂災害)がほぼ必発することを覚悟すべし。
なので私だったら、まず顔面蒼白になって身震いする(そして防災行動に取り掛かる)。

それほど生死に関わる重要な情報なのだが、そのネーミングの切迫性のなさが災いしてか、深刻に受け止められない感じがする。

事態の危機度では、「大雨警報」と「大雨特別警報」の中間段階で、後者はもう「家を出るな」(避難のタイミングを逸した)という最終段階なので、この情報は、まさに避難すべきタイミングに相当する(「大雨警報」は外にいないで屋内退避)。
※:具体的には、大雨警報が発令されている状況下で、追加情報として発表される。

毎年、梅雨末期は大雨被害が発生し、今年も記録的短時間大雨情報発表下で死者を出した。
気象災害は、地震と違って、精度の高い予測とリアルタイム実況が実現しているのだから、その情報を活用した(適切な)防災行動が可能で、最低限人的被害は防げるものと思っている。
ただ、情報の活用とそれに応じた防災行動については、私が実践しているように個々の家庭に応じた具体的指導を授業(ゼミ)でやるしかない。
高校までの教育では地震・火災を想定した避難訓練だけで、まともな防災教育がされていないようだ。


松山市の土砂災害を思う

2024年07月13日 | 防災・安全

7月12日未明に松山市内で起きた土砂災害(行方不明3名)は、松山城のある城山からの土砂が山麓の民家を直撃したもの。

そこの土砂災害警戒区域マップを見ると、平野の中にある残丘状の城山に沿った麓が急傾斜地崩壊警戒区域(黄色)と同特別警戒区域(赤色)に覆われている(下図)。

なんと城山の南麓には愛媛県庁の敷地がこれら区域内にある。
ということは、愛媛県庁は土砂災害に襲われても不思議でない立地だということ
※:土砂災害の危険箇所に建物がある場合に限り、警戒区域として指定される。洪水・津波被害想定区域内に建物、いや都市があるのも同じ。あらゆる災害から安全が保証された場所は日本にはほとんどない。だからみんなに”防災”が必要なのだ。

さて今回の土砂は、山頂三角点(131.4m)の右側にある2本点線状の道路から、東(右)に伸びる谷(標高数値〜東雲神社という文字の上)を通って麓の「緑町」に達した。
土砂が谷に沿って落下したのだから、土砂災害の中の「土石流」に該当する(他は、崖崩れと地滑り)

そして皮肉にも不幸なことに、発生した土石流は、急傾斜地崩壊警戒区域(黄色)が切れた部分、すなわちそこだけ土砂災害が想定されない隙間の狭い場所に達して、そこにあった民家を破壊した。

おおざっぱには、城山は周囲360°が急傾斜地崩壊警戒区域なのだが、なぜここ(谷の出口)が警戒区域から除外されているのか。
それは谷になってるため傾斜が緩く、急傾斜地の基準である30°に達してないからであろう。
また山地ではないので「土石流」の警戒区域でもなかった。
すなわち、土砂災害が発生するほどの傾斜も土石流が発生するほどの比高もないと判断されていたのだ。

ところが、山頂部の道路すなわちこの谷の源頭部分では亀裂が発生しており、その補修工事に取り掛かっていた(当時ブルーシートが掛かっていた)。
すなわち、土砂災害の前兆としての”地割れ”が発生していたのだ。
地面の内部で崩壊が進行していた折に大雨が見舞い、大量の水分が地層内部の崩壊を促進したのだ。
その場所は、皮肉にも土砂災害の危険性が最も低い傾斜の緩い谷地だった。
谷地は、急傾斜地崩壊の視点だと緩斜面なので危険がないが、土石流の視点だと谷地こそ危険。

かように、災害は人の判断の虚を突く。


中央構造線が目覚める?

2024年06月21日 | 防災・安全

昨晩、珍しく愛知県内(豊川市)で地震があった。
そして本日は四国の愛媛県中予で地震があった。

この二か所は数百キロも離れてはいるが、いずれも中央構造線沿いという共通性がある。

さらに「見える地震」というアプリでここ数日の震源地を地図上で見ると、奈良県中部・和歌山県北部、そして熊本県熊本地方と中央構造線沿いに震源地が連なっている。

さらに数日前に遡ると、中央構造線の東部(諏訪湖以東)沿いの埼玉北部や千葉県の利根川沿いでも地震が連続していた。

日本の地形を作った日本最大の活断層である中央構造線が目覚めようとしているのか。関連記事

関連記事で述べているように、”南海トラフ”と”首都直下”だけが警戒すべき地震ではない(能登半島地震が証明している)。


動く車の前と後ろに立ってはならない

2024年06月17日 | 防災・安全

観光バスのガイドがバスのバックを誘導中、バスと電柱に挟まれ頭部が破壊されて即死した。

バスガイドが、笛を吹きながらバスの後退を誘導するシーンは昔からあるが、
バスの真後ろで、自分もバックしながらの誘導は、どう考えても危険だ。
これをいまだに”業務”として平気でやらせていることが理解できない。

動く車の前と後ろには絶対に立たない、というのは例外ない原則だ。

基本はバスの後方側面に立って、バスの後退を真横から確認し、しかも運転手と顔を合わせられる位置(運転手はバックミラーで視認)で誘導すべき。
この方が隙間を高精度に確認しやすく、また危険がない。


予想される地震は南海トラフだけか

2024年04月19日 | 防災・安全

今回の愛媛の地震の震源は南海トラフの深層部だから、広い意味で南海トラフ領域の地震といえる。

台湾の地震も南海トラフの延長上(フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界)である。

実際、人々は”すわ南海トラフ地震”と色めき立ったが、予想されている南海トラフ(東海・東南海・南海地震の震源域)の動きは見られない。

言い換えれば、なんでも「南海トラフ」に結びつけようとするのは、それしか頭にないからだ。

東日本大震災の前、”東海地震”しか人々の頭になかった時に、私が「南海トラフ」の危険性を主張したら、一笑にふされたことがあった。

人々の地震に対する意識ってそんな程度(マスコミ依存)である。

例えば、今回の震源域は、日本最大の活断層である”中央構造線”の近く(南側)であり、それにストレスを与えているかもしれない、と考えられないだろうか。
和歌山〜四国を貫通する中央構造線に沿って震度2ー3の地震が一定の頻度で起き始めていることに注目している人はいないようだ。
※追記:記事をアップした2日後の4月21日朝、中央構造線沿いの紀伊水道でM3(=震度)の地震が発生。さらに同日21時の遠州灘(伊良湖岬沖)の地震(M4.2)も中央構造線沿い。かように中央構造線沿いに震源が東進している。

今後起きる地震は「南海トラフと首都直下の2つだけ」(マスコミがこの2つしか扱わないから)と思い込んでいる人たちに対して、熊本地震・能登半島地震などが、その思いが間違っていることを証明しているのだが、思い込みの強さは簡単には改善できない(しかも首都直下地震を関東大震災をもたらした相模トラフの地震と勘違いしている人もいる)

内閣府の中央防災会議がどのような地震を想定しているかは『防災白書』で公開されている(ネットで閲覧できる)のだが、それを無視しているマスコミに情報支配されている人は、居住自治体のハザードマップすら見ないようだ。
実際、大学で防災のゼミをやっているのだが、今年の受講者17名のうち、居住自治体のハザードマップを私が求めるまで見たことのある学生は1人もいなかった。

本気で(自分の頭で)防災を考えている人がいかに少ないか…


雷の予兆とは

2024年04月03日 | 防災・安全

まず今朝の台湾東海岸の地震、まだ被害の実態がわからないので、ここは南海トラフの延長上であることを指摘するにとどめる。

午後2時半過ぎ、宮崎の大学グラウンドに落雷があり、サッカーの試合に来ていた高校生2名が意識不明の重体に陥った。
こちらを問題にしたい。

当時は、気象庁から「雷注意報」が出ていた。
雷については、落雷地点の予想ができないので、地域を絞った「警報」ではなく、より広範囲な注意報レベルしか出せない。
すなわちそれが発令されている地域の特定地点にとっては「雷があるかもよ」程度の情報だ。
ということもあり、この注意報程度で、人々が行動を制限することは滅多にない(心理的に”注意”するだけ)。

日本サッカー協会の指針によると、試合中止の基準の中に「雷の予兆がある時」が入っている。

この”予兆”の判断が問題だ。

雷の予兆とは何か。

空に雷光(稲妻)があり、雷鳴が聞こえる状態が”予兆”だろうか。

最初の雷光・雷鳴がすでに起きた後だから、”予兆”ではない。
なので、この状態での屋外活動は”厳禁”段階。

雷光・雷鳴が発生するの状態が”予兆”のはず。

それは、雷を起こす本体=積乱雲が接近していること。

果たして、サッカー試合の運営者に、それがわかるだろうか。
知識さえあればわかる(知識がないとわからない)。

積乱雲は、地上から上空1万メートルにまで達する最大級に分厚い雲なので、空が暗くなる。
そして急に強い雨が降る(雹の場合も)。
雨が降らなくても不気味な乳房雲(写真)が雲底に現れる(乳房が不気味なわけではない)

実際、当時の宮崎ではあっという間に強烈な雨に見舞われたという。
これこそ、積乱雲が頭上を覆っていること、すなわち雷の”予兆”だ。

なので雷の予兆=積乱雲の存在(暗い空と強い雨)ということを知っていれば、判断できる。
この基本的な気象知識がなかったのではないか。
しかもサッカーは野球と違って、雨の中でも試合を続行する。
なので尚更、雨という実際の予兆に鈍感になったかもしれない。

ちなみに、テレビのニュースでは今回の雷を”前線の影響”と述べているが、
実際には、当時の宮崎は接近する低気圧の温暖前線と寒冷前線の間にあって、
これら前線の影響ではなく、その間の”暖域”という不安定な領域(低気圧中心の南側)に発生した単独の積乱雲だろう。
同じ積乱雲でも寒冷前線のそれは明確な雲列が向こうからやってくるから予想しやすいが、暖域では突発的に(30分で)発生・発達するので予想しづらい(晴れることもある)。
なので、あくまで積乱雲そのものに注視すべき
(気象予報士なら、暖域下にあることで警戒を喚起する)。

では、実際に”雷が来る”と判断したらどうすればいいか。
もちろん試合は中止して、だだっ広いグラウンドそのものから全員離れて、
体育館や校舎など大きな建物の中に避難する。
これしかない。

身に付けた金属類を外すという行為は無意味。
なぜなら人間の身体が(電気を通す)導体だから。


マグニチュードと震度は対応する?

2024年03月26日 | 防災・安全

3月21日の茨城南西部の地震はマグニチュード5で震度5
23日の岐阜西濃の地震はマグニチュード4で震度4

このように内陸直下型地震では、マグニチュード(地震のエネルギー)と震源地に最も近い観測点の震度(揺れの大きさ・被害の目安)とは相関どころか"一致"していることが多い。

震度は物理量ではなく単なる判断指標にすぎないのだが、
結果的に物理量によく対応していて、優れた指標といえる。

ということで、私は両者を同じ値になるものとして、マグニチュードが出れば、
その値を震度として被害の程度を想像する。

ただし震源が海洋だと、陸地の震度とは対応しないし、同じマグニチュードでも震源の深さによって地上の揺れは異なるので、あくまで”およその目安”だ。
なので「震度5弱」はマグニチュード5.0-5.4の間で、「5強」は5.5-5.9という細かい対応づけは無理。

また、震度は最大値が7だが、マグニチュードは8以上もある。
ということは、内陸最大の地震であった1891年の濃尾地震(マグニチュード8)は、
”震度8”という地上で空前絶後の揺れの大きさだったといえよう(実際、根尾谷断層が地上に出現した)。


千葉県東方沖のスロースリップ

2024年03月01日 | 防災・安全

今、本州から左右に出た両手、すなわち上向き右手の能登半島と下向き左手の房総半島の両方が群発地震の巣となっている。

房総半島の東側の千葉県東方沖は、以前も地震の巣となった所で、しかもスロースリップを繰り返している。

スロースリップとは、プレート境界が一挙に破壊されるのではなく、ゆっくりしたズレ。
すなわち加速度が小さい分、地震の力(=質量×加速度)が小さい。

それでもマグネチュード5(震源近くで震度5、周囲は4)にはなるが、
震災レベル(マグネチュード7〜)には至らないため、ありがたいともいえる。
震源の場所も、南関東の都市部からは遠いし。

すなわち、千葉県東方沖は、時たま震度5程度の地震が起きるが、
破壊的な地震には至らず収束する傾向をもつ(震度5-4程度で被害が発生するなら、防災的にそちらが問題)。

ちなみに、内陸の「茨城県南西部」も群発はしないがよく地震を起こす(震度3レベルだが)ことは関東で有名。

言い換えれば南関東で怖いのはここではなく、東京湾・相模湾を震源とする地震だ。


震災で家が全壊したら

2024年02月08日 | 防災・安全

地震などの災害で家が全壊した場合、「被災者生活再建支援法」に基づいて国から援助してもらえる額は最大300万円である(役所による全壊認定と申請の手続きが必要)。

300万円で再建できる”家”は存在するだろうか。
1桁足りない。

当然、足りない分は自腹で払うしかない。

持ち合わせが無い場合は、前もって地震保険に加入する手があるが、これは火災保険のオプションなので、その分の増額を覚悟する(火災保険だけでは、地震による火災は対象外)。

まずは、現在の家の耐震性をチェックし(ネットで簡易診断できる)、自宅の想定される最大震度をハザードマップ等で確認して、自宅の倒壊危険性を概算してみる。

耐震性が足りない場合は、事前に耐震補強自治体から半額ほど援助が出る)をした方が全壊の確率が減るので、絶対に安上がりで、もとより圧死の危険が下がる。

建物自体の耐震性は、鉄筋>木造、新しい>古い(特に1981年以前)、平家>2階家 ×瓦屋根 となっている。
すなわち、古い木造の瓦屋根の2階家が最弱の建物だ。

こういう家は、住民の高齢化率の高い”地方”ほど多い(奥能登もこのタイプの家が多かった)。
高齢者だと、改築はもとより耐震補強すらしたがらない傾向がある。

こういう家は倒壊確率が高いだけでなく、命は助かったとしても被災後に絶望感がやってくる。

「備えあれば憂いなし」という格言を肝に銘じておきたい。


1.28東京湾の地震から言えること

2024年01月28日 | 防災・安全

1月28日の8:59に東京湾北東部を震源とするマグニチュード4.8の地震が起きた(アプリ「地震情報」に基づく)。

最大震度は4なので、家の中の物が落ちる程度の軽微な被害で済んだ(はず)。
文京区にある我が家では、棚においてある置物のいくつかが倒れた(=震度4相当)。

私が注目したのは震源地で、”ここ”は想定されている「首都直下型地震」の震源地に近い。

言うなれば、「首都直下型地震」の前触れ、少なくともその軽いシミュレーションとみなせる。
シミュレーションとして参考になるのは震度分布。

 地震の最速報アプリ「PREP」によると(速報値なので修正される場合もある)、
震源に最も近い千葉県習志野市で3。
その周囲の千葉市・市川市、そしてTDLのある浦安市も3で済んだ。
それに対し東京では、中央区・港区・品川区・渋谷区で4。
さらに震源から離れた葛飾区と練馬区でも4。
23区から離れた内陸多摩地域の調布市と町田市でも4だった。

一方震源に近い江戸川区と江東区の台場、それに羽田空港では3だった(後二者は東京湾の埋立地)。
また墨田区は2とここだけ周囲より低い(これは修正されるかも)。

震源からさらに遠い神奈川県の川崎市と横浜市は湾岸だけでなく内陸(戸塚区・瀬谷区)においても4。

総じて見ると、震源の対岸(西)側の東京・神奈川の方が震度4と高かった。

地震の揺れは、震源からの距離地盤の硬さで決まるとすると、震度4の地域は後者の影響ということになる。
ただし、湾岸の埋立地よりも内陸(地盤が硬い)の練馬・調布・町田の方が揺れたということは、表層の地盤よりも地震波が伝わる層の性質が作用していたようだ。

震源の深さが80kmと深かったので、地震波は地表の地盤よりも、それなりの深層の地盤で伝わった。
そのレベルの地層では、東京湾が発信源の地震波は、西に大きく伝わる傾向があるということだ。
すなわち、首都直下型地震の場合、震源から距離がある東京・神奈川の内陸(多摩川流域)もそれなりに揺れるかも、ということだ。


地震に強い建物・弱い建物

2024年01月15日 | 防災・安全

能登半島地震で、ビルや観光施設が軒並み倒れた中、能登町の縄文遺跡に復元された竪穴式住居が無傷だったことが話題となっている。

確かに竪穴式住居は、断面が末広がりの三角形のため、接地面が広くて、屋根部分が上に行くほど狭くなり、重心が低くなって構造的に倒壊しにくい。
また屋根部分は分厚いが素材的に軽いため、たとえ倒壊しても、中の人が押しつぶされることがない。
実際、江戸時代でも、震災のあった藩では、防災のため屋根瓦が禁止され、屋根は茅葺が指定されていた。
瓦屋根は雨などの気象対策であって(ただし強風には弱い)、地震に対してはレンガと同じく逆効果であることは江戸時代から既知だった。

こう見ると、確かに竪穴式住居は、地震に強い力学構造になっている。
茅葺の分厚い屋根は、夏は涼しく冬は暖かい。
もっとも、窓などの開口部がほとんどないので室内は暗く、視覚的居住性は良くないが。
それに対し、能登半島の民家は瓦屋根の家屋ばかり。

一方、輪島市で横倒しになったビルは、基礎部分の杭が抜けたことで倒れた。
その杭は地下の硬い層に打ち込んでビルの横揺れを防ぐものだが、その硬い層の上の柔らかい層が地震で液状化して、ビルを支えることができなくなってしまったのだ。
このような地層構造は、東京湾などの都市の湾岸部の埋立地も同じで、むしろ人工的に埋め立てた分、軟弱地盤の層が厚い(その分杭も長い)。
ということは、首都直下型地震は、そもそも震源地が東京湾なので、これら湾岸(ベイエリア)の埋めて地に立つ高層ビル群は、地下層の液状化によって皆この横倒しの危険がある。
※:いまだに関東大震災を起こした相模トラフの地震と混同している人がいる。50年以上前の古い知識が更新されていない。

私は、もともと防災の観点からベイエリアには住むことはもちろん、足を踏み入れることすら遠慮しているが、ますますその思いが強くなった。

すなわち、地震に弱い建物は、瓦屋根の多い地方(の過疎地)と海沿いに高層ビルの多い都市部の両方に分布していることになる。


機内がパニックにならなかった理由

2024年01月05日 | 防災・安全

2日に起きた羽田空港での衝突事故。

テレビをつけたら、事故直後の中継で、旅客機から煙が出ていて、消火作業を続けられている中、火はどんどん燃え広がり、機体全体が炎に包まれた。
その中継時点では、乗客の安否についての情報がなかったが、もし機内に取り残されていたら、焼死は免れない状態(1994年の中部国際空港での中華航空事故を思い出した)。
その後、乗客乗員が全員避難済みと知らされ、安堵の息をついた。

この奇跡的避難が、世界中に紹介され、避難を担当した CAたちが称賛された。

世界中の人たちが、疑問に思ったのは、なぜ機内がパニックに陥らなかったのか、ということ。
言い換えると、このような事態になると、人々はパニック状態になる(パニックは個人心理(パニクる)ではなく集団現象)ものと思われているから。

防災心理学では、パニックが発生する4条件が確認されている(私は大学の授業で紹介)。

①差し迫った危険が存在するという認識が人々の間にある
②脱出の可能性がある
③脱出路に制約があり、全員は避難できそうにない
④正常なコミュニケーションが欠けている

以上のうち4つが同時に満たされてるとパニックが発生する
※:①だけでパニックなるという思い込みは「パニック神話」とう誤った認識なのだが、為政者レベルがこの認識だと、パニックの発生を恐れて危険情報が提供されなくなる(福島原発事故時の政府による情報隠蔽)。
言い換えると、1つでも欠けると発生しない(にくい)。

今回の着陸後の機内は、
①窓の外の炎、そして機内の煙で成立。
②空港に着陸しているので成立(1985年、御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機ではこれが成立しなかったので、パニックは発生しなかった)
③航空機は使用できる出入り口が少なく、狭い。すなわち構造的に成立しやすい。

以上から、状況としてパニックが発生しやすい条件が3つ揃った。

そこで決め手のなるのが④。
④だけが、その場に居合わせた人々で制御できる条件なのだ。
すなわち、実際にパニックが発生するかどうかは、④で決まる。

CAはこの④についてトレーニングを受けている。
もちろん、 CAとて①の正確な状況は把握していなかったし、 CAと機長、 CA間のコミュニケーションが物理的に遮断されていた。
なので個々のCAの判断・行動に頼るしかない状況だった。
そして CAは独力で判断することができた( CA間での意思疎通も可能に)。
炎と煙という目の前の情報のみで対応を考え、開けるべき扉を選定し(これを間違えたら機内に炎が入り込む)、あとは訓練通り、大声で断定的に避難行動を乗客に指示した。
すなわち①の危険が高まる中、④を起こさせないことで、③の成立も回避し、②の可能性を最大限にした(結果、”①だけの状態”にもっていった)。

一方、乗客も、このような事態では、 CAの指示に従うのが最善であると理解しているので、皆指示に従った。
この乗客の秩序だった行動が他国では成立しにくいと、他国の人(例えば中国)自ら認めている。
実は、我々日本人は、義務教育時代に全員、学校で避難訓練を体験していて、こういう時は各自が慌てず走らず避難することが体に染み付いている(避難訓練は大学でも実施。会社員時代、会社でも実施していた)。

すなわち、(幼い子どもを除く)日本人全員が、適切な避難行動をマスターしているのだ。
全員避難成功という奇跡は、このような理由で実現した。