ChatGPT(無料版)に”論文の書き方”や”正しい引用の仕方”などを尋ねたら、常識的な回答で、ほとんど文句はなかった。
次に試しに私自身について、「山根一郎ってどんな人ですか?」と尋ねることにした。
ただ同姓同名がいては混乱するので、勤務先の大学の教授である限定をつけた。
間髪を入れずに出てきた答えがこれ。
「山根一郎先生は、メディア・コミュニケーション研究所に所属し、メディア論、コミュニケーション論、情報社会論などを専門としています。
山根先生は、主にテレビジョン番組の分析や、メディアと社会の関係について研究を行っており、特に報道番組やニュース、政治番組に注目しています。また、情報技術の発展がもたらす社会変化についても関心を持ち、インターネットやSNSの普及が社会に与える影響についても研究しています。
山根先生は、著書や論文を多数発表しており、日本のメディア・コミュニケーション研究の第一人者として知られています。また、テレビやラジオなどのメディアにも出演し、幅広い層から支持を得ている学者の一人です。」
私の所属が間違っているし、専門分野も正しくない。
メディア論について(このブログを含めて)多少言及しているが、テレビには関心がないし、その分野で活動もしておらず、当然第一人者でもないので、「支持」も得ていない。
すなわち、正解率0。
もし「山根一郎について書け」と言う課題でChatGPTの答えを丸写しすると、0点となるわけだ。
気を取り直して、もう一度答えを求めると、
「(前略)人文学部で哲学を教える教授です。彼は、現代西洋哲学、現代フランス哲学、現象学、存在論、倫理学など、幅広い分野で研究をしています。
また、山根教授は、西洋哲学の中でも特にマルティン・ハイデッガーについて研究を行っており、日本におけるハイデッガー研究の第一人者として知られています。その他にも、フランスの哲学者ジャック・デリダや、ドイツの哲学者エマニュエル・レヴィナスなどについても研究をしています。」
現象学・存在論・ハイデッガーとは確かに接点がある。
でもハイデッガー研究の第一人者ではないので、当然「知られてい」ない。
そもそも、所属大学に「人文学部」は存在しないし、「哲学」の授業も持っていない。
論文でレヴィナスには1回だけ言及したが、デリダについては触れたことがない。
こちらの答えは、100点満点中で5点というところか。
以上の文は、検出された単語から、それと関連ありそうな単語を検出するという一連の作業の結果、最初の検出単語からどんどん離れていってしまった結果といえる。
なので最初の検出単語との関係を無視すると、それなりに辻褄は合っている文(=実際にいそうな人)となるわけだ。
ちなみに、私自身の情報は、このブログだけでなく、自身の HP(更新はしていない)、論文のPDFでの掲載などをネット空間でアクセスできる。
さらに、もう一度答えを求めると、
「山根教授は、日本の政治や社会に関する著名なメディア出演者であり、テレビやラジオなどでの解説やコメントでも知られています。政治的な中立性を重んじ、鋭い分析力を持って、日本の政治情勢を解説していることでも知られています。
彼は、多くの書籍や論文を執筆しており、国内外の学会や団体で講演もしています。彼の著書には、「議会制度と政党政治」や「憲法9条と集団的自衛権」などがあります。」
なんで「山根一郎」から「政治」が検出されたのか、メディア論・ハイデッガー以上に縁がなく、本人もわからない。
しかも著書が捏造されている。
誰かと間違えているのだろうか。
これらの著書をネットの書店でググってみたら、前者は見つからず、後者は「憲法9条VS集団的自衛権」というタイトルで、私も一字も共通しない人の本があった。
ChatGPTは、尋ねられた人の悪口は言わず、むしろ誉める傾向があるという。
確かにその傾向が示されたが、嘘をついてまでヨイショしてほしくはない(事実ではないからちっとも嬉しくない)。
結局、一般論的問いなら使えそうだが、少々突っ込んだ個別の問題となるとこんなレベルに成り下がることがわかった※。
※:同じことをやった講談師の神田伯山氏は「落語家」としてヨイショされていたという(氏のラジオ番組から)。
やってみた結果、私は偽りの「第一人者」扱いされているが、心理学者としては全く評価されていないことがショックだった。
追記: ChatGPTは個人情報保護のため、個人についてはあえて不正確な情報になっている可能性があり、その方がありがたい。現存している個人については誰でもこのような結果になるのかもしれない。