今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

台風10号停滞の理由

2024年09月01日 | お天気
9月1日になって、台風10号が伊勢湾沖で停滞してしまった。
元々の遅速・迷走の理由は、東から張り出している太平洋高気圧の影響とされ、
また偏西風に乗り切れないためと言われていた。
前者は地上天気図で確認できるが、後者の「偏西風に乗り切れない」ことは地上天気図ではわからない。
※:皆さんがテレビ・新聞で見る普通の天気図の正式名称。ここでは地上でない天気図を紹介する。

ならなんでそれがわかるのかというと、気象予報士のアンチョコ、
予報の直接資料である高層天気図(数値予報天気図)によるもの。
※:なので気象予報士試験の「実技」は、これら複数の図を見て予想する出題。
その一部(複数ある高層天気図の1つのその地図の部分)をここに掲載する(下図)。
これは昨日・8月31日の午前9時時点の上空500hPaの高層天気図の地上台風付近の図である。
高層天気図は、等圧面の図で等高線が記されている。
見慣れている地上天気図は、地上(海抜0m:
およそ1000hPa)での等圧線が記されている。
かような違いはあるが、見方(解釈の仕方)は同じで、地上天気図のつもりで見て大丈夫。
図の上部の「5700」と記されてるところが、高度5700mを意味し(この図では一番低高度)、しかも等高線(60mごと)が密集しているので強風地帯を示し、ここは上空なので偏西風帯そのものと見なせる。
そして、紀伊半島にかかっている「L」印が、周囲よりも低高度核、地上でいう低気圧に相当する。
高層にある「L」は地上台風の上部ともいえるが、実は地上と無関係に発生することがある。
※:台風はものすごく強い上昇気流渦なので、大気の鉛直空間内で背が高く、高層天気図中にも反映される。
南に蛇行した偏西風の一部が切り離されて、そこだけ北からの寒気が残ってまった場合で、これを「寒冷渦(かんれいうず)という。
寒冷渦は、地上天気図には反映されないが、いわゆる「上空の寒気が」大気を不安定にして、思わぬ短時間強雨(「ゲリラ豪雨」はマスコミ用語で、気象学者は絶対使わない。私も同様)をもたらす。
すなわち、寒冷渦は、気象関係者だけが知っている(素人は知らない)、地上低気圧・前線以外の悪天候の原因なのだ!
台風10号はどうやら、以前からこの付近にあったこの寒冷渦に捕まったらしい。

するとどうなるかというと、まずは停滞する。
これが現在の状態。
 
そして台風自体は、力が弱まって、風速17m/sという台風の定義を満たさない「熱帯低気圧」に弱体化するので、強風の心配は減るが(暴風圏はその前に消滅)、大気の不安定さは残るので短時間強雨の可能性は残る。
ただし、この「L」の北西隣にW(Mの逆様に見える)すなわち暖気があるので
、寒冷渦としては強くない(この暖気は台風が上空に押し上げたものなので、台風が寒冷渦を弱めたといえる)。
やがて東側のH(背の高い太平洋高気圧)からの南風に押されて、北の偏西風に誘導されると見られている。

台風から東に離れた豪雨に注意

2024年08月27日 | お天気

台風10号が九州・南西諸島にゆっくり接近して、そちらの警戒が喚起されているが、
実際には東海地方に線状降水帯が発生しつつある。

これは、台風の東側かつ太平洋高気圧の西側の領域が、南からの暖湿空気(水蒸気を多量に含む)の流入路となっており、
それが北日本にかかっている秋雨前線に向かって吹いているからで、これで秋雨前線(水蒸気が結露する)が南下すると、
2000年9.11の「東海豪雨」時の気圧配置となる。

今回は、秋雨前線が北に離れているので、それに匹敵する豪雨にはならないだろうが、
ポイントは台風からかなり離れた東側で台風の雲とは別の線状降水帯が発生する状態になっていること。
すなわち、愛知・静岡あたりが要注意だ。
九州・山陽新幹線以前に、東海道新幹線が運休になる可能性がある。

追記:上の警告を発した当日の夜、愛知(蒲郡)で土砂災害が発生してしまった(死者3名)。

 


我が家に記録的短時間大雨情報

2024年07月31日 | お天気

先日、記録的短時間大雨情報の恐ろしさを記したのは、梅雨末期の秋田・山形の被害に対してだった☞記事

はっきり言って”他人事”だったが、なんとその記録的短時間大雨情報が、本日、我が家のある東京都文京区に発表された(洪水警報も発令され、「警戒レベル4」(避難指示)に該当した)。

外を見ると、滝のような大雨で、隣の北区では時間雨量105mm/hの強雨(気象庁用語では80mm/h以上を「猛烈な雨」※)。
1時間に50mm/hの雨(「非常に激しい雨」)で側溝が溢れるから、道路が冠水しておかしくない。
※:100mm/h以上の雨の呼称がないので、私は「瀑雨」(ばくう)と命名している。

我が私設「本駒込気象台」での最大瞬間降水強度は18時39分に311.mm/hの驚異的値(瞬間値だからすぐ下った)。
そして18時40-50分の10分間で20mmを越えた(時間雨量に換算すると120mm/h)。

我が家の総雨量は18時から20時までの2時間で99.4mmに達した。

そして降水の直前に、気圧は3hPaほど上昇した。
低気圧による雨と違って、背の高い積乱雲による降水の場合、まず露払い的に高さ1万mから下降流がやってくる。
すなわち空からの圧がかかる。

また降水によって気温も26℃まで下って、すごしやすくなった。

前の記事で「災害が必発する」と記した記録的短時間大雨情報発表下だったが、我が家は地形などの効果(台地で近くに河川がない)で被害とは無縁だった。
なお練馬・板橋区では道路が冠水し、車が水に浸った。


本駒込で40.2℃

2024年07月22日 | お天気

本日の14時22分、わが私設「本駒込気象台(東京都文京区)が最高気温40.2℃を記録した。
ちなみに北の丸公園内の涼しい林内にある「アメダス東京」の最高気温は36.6℃(12:26)。
樹木が作る日陰こそ気温に影響しないが、樹木は呼吸で”冷気”を出すので樹林帯は気温が下がる。

さらに本駒込気象台での体感温度指標である熱指数(湿度を考慮)だと53.9℃。
これは屋外に止めた車の車内温度に近くなる(日射を考慮した指数は別物)。
かように湿度が高い日本の夏は、同じ気温の砂漠より体感温度が高くなるのだ。

なので外出は基本禁止レベル。
それでも図書館に通う私は、日傘+アームカバー+ネッククーラーの装備で外出。

ちなみに義妹と小学生の姪は、不運なことに今朝から大阪旅行を予定していた。
始発からストップの東海道新幹線の払い戻しに東京駅で1時間待って、
北陸新幹線経由で大阪に向かうも、敦賀から先の在来線で落雷に遭ったとのこと。
泣きっ面に蜂の鉄道旅行。

明朝名古屋に帰る私は、東海道新幹線が無事運行される事を祈って、土用の二日前倒しとして近所の専門店で鰻重を注文。


「本駒込気象台」復活

2024年07月20日 | お天気

7月11日より更新されなかった私設「本駒込気象台」のネット配信が復活しました。

しばらく帰京できなかったため対応措置が遅れてご迷惑をおかけしました。
原因は、観測データをパソコンに送るコンソールの電池切れでした。

20日17時以前のデータはグラフに出ず、観測時刻も間違っていますが(コンソール起動後の時刻合わせをしなかったため)、本日の最高気温は38.5℃でした。

 


本日の強風の理由

2024年05月28日 | お天気

本日、名古屋での午後4時ごろ、会議のため大学に行こうとして、傘をさして駅に向かっていたら、一陣の強風で傘がバラバラに壊れた。
強い雨も降っていて、雨を防ぐ道具がなくなったのでびしょ濡れになって家に引き返し、着替えて車で大学に向かった。


さて、気になったのは、台風からずっと離れているのになんで強風が吹いたのか(雨は梅雨前線で説明可能)。

Windyというアプリで日本付近の風の分布を見ると、風速の分布では紀伊半島南方に強風域があり、そこの風向を見ると南西と南南西の風が収束(合流)している。

そして大さっぱに言うと、台風の東側一帯は南寄りの風になっていて、それが本州上の梅雨前線にぶつかっている。
そこに風の収束帯ができて、収束すると速度が増し(運動量保存の法則)、気圧が低下し(ベルヌーイの定理)、上昇気流を生んで低気圧が発生する。
※:とても重要な法則で、台風や竜巻だけでなく、ビル風や隙間風も説明できる。要するに、風の強さは、風ベクトルの方向に沿った気圧差と、そのベクトルに直角に作用する収束度合い(”風束密度”とでも言うべき)によって決まるということ。
この収束帯と小さな低気圧が、東海地方の強雨と強風をもたらした。

この現象はフィリピンの北にある台風1号の直接の影響ではなく、台風の東側に広がる南風帯が本州上の停滞前線にぶつかることで、収束による強風と低気圧化による降水をもたらした。


台風でなくても、あるいは天気図レベルで等圧線が混んでいなくても、風の収束帯で強風が発生するということは、天気図では情報不足で、Windyのような風の分布もチェックが必要だと痛感した。

ついでに、風の収束帯は停滞性の強雨をもたらす「線状降水帯」も作りうる。


愛知日進・東京文京区の気象観測値の閲覧

2024年03月31日 | お天気

アメリカDavis社製の気象観測装置(Vantegeシリーズ)を使って、
タイトルの2地点の15分ごとの気象観測データを個人研究用にサイトにアップしている(4月から 無料レンタルサーバーfc2に移転)。

自分がどこにいても現地の値をいつでも確認するためなのだが、
あくまで”参考値”として参照する分には問題ないので、誰でもアクセスできるようにしてある。
ただしごくたまに観測の異常値が発生するので、それを承知の上で参照してほしい。
また、両地とも更新タイミングが遅れがちとなっている(これは多分サーバーの都合で故障ではないので、容赦してほしい)。


2地点の観測態勢を以下に示す(それぞれ当地の私設気象台と名乗っている)。
観測表示画面に英語が混じるのは、表示テンプレートがアメリカ製のため。

我ながら実感するのは、経時グラフがとても参考になること。
とりわけ、気温・気圧の変動は気象病の原因とされるので、症状と変動との関係を事後的ながら確認できる。


私設日進気象台:愛知県日進市竹の山3。建物の屋上
日進市はアメダス名古屋・豊田から離れている。
URL:https://yamaneich.web.fc2.com/nissin/Vantage_Pro_Plus.htm
【使用機器】: Vantage Pro2
【観測項目】
①気温、相対湿度、体感温度、露点温度、気圧(海抜0m補正)、風向、風速、日射量、UVIndex、雨量(降水強度、積算雨量)
②それらの本日の極値
③それらの経時グラフ(8時間/3日間の交代表示)
④当地の日の出・日の入り時刻、簡単な予報(英語)

観測項目の説明は、ページ右の「観測値の説明」をクリックすると詳しい説明画面に飛ぶ。

【特徴】
①風速は気象庁では10分間平均風速で示されるが、ここのグラフは、あえて10分間の最大風速を示している。なぜなら、風害は最大風速によって起こされるから。
②気温のほかに複数の体感温度指標を示す(指標の説明は「観測値の説明」にて)
②有害紫外線量(UVIndex)が定量的に計測されるので、より適切な紫外線対策が可能。

【問題点】
①更新タイミングが遅れがち。
②ごくたまに雨量がありえない値になる(異常値とすぐわかる。3月30日にも発生)。そして年間雨量にその値が反映されてしまう。
③最大風速30m/sを越えると観測機が倒れ、その間風・雨の計測が不能となる。
④大学が保守点検の定期的停電時にデータが配信されない。


私設本駒込気象台;東京都文京区本駒込4。建物の屋上
URL:https://yamaneich.web.fc2.com/honkoma/Vantage_Pro_Plus.htm

【使用機器】: Vantage Vue
【観測項目】
上の①〜④から日射量とUVIndexを除いた項目。
ただし「観測項目の説明」リンクはまだ。

【特徴】
①上の①②については同じ。
②「東京」の気温とされる気象庁の「アメダス東京」は千代田区北の丸公園内の林に囲まれた地にあるため気温が低く計測される傾向にある(樹木から冷気を発する)。本機の気温の方が都心部の生活空間の気温に近い(特に夏季)。

【問題点】
①更新タイミングが遅れがち。
②設置場所の周囲に高いビル群があるため、風向が常に正しくない(南風が西風となる+90°の系統誤差が発生)し、風速も影響を受けているはず。
③ごくたまに気温がありえない低温になる(異常値とすぐわかる)。


私のように上の2箇所(愛知県日進市・東京都文京区)を同時に1画面で見たい場合
URL:https://yamaneich.web.fc2.com/duo/duo.html


天気の素朴な疑問に回答

2024年03月18日 | お天気

※このコーナーは、2024年3月に閉鎖される私のサイトからの転載です。

気象学超入門

天気の基本的な疑問に気象予報士の私が答えます。


ただし、気象予報士を目指すなど気象現象を科学的に理解したい人向けなので、気象(大気の物理現象)学の専門用語による説明を理解する意欲のあることを前提とします。

下の欄のどれでもクリックで飛べますが,知識の蓄積を必要とするので,できるだけ上から順を追って読んでください.

申し訳ありませんが、このコーナー続ける意味を感じなくなったので(この程度の情報なら他のサイトや本で充分)、記事の追加・質問への回答は停止しています。

1.山の上は太陽に近いはずなのに,なんで下界より寒いの:気温減率
2.なんで上層の冷たい空気は地上に降りてこないの:温位
3.雲はどうしてできるの:凝結
4.雨が降る雲と降らない雲との違いは:雲の名称
5.なんで低気圧だと天気が悪いの:擾乱

6.前線て何物?低気圧でないのになんで天気悪いの:収束

7.高気圧はなんで天気がいいの:発散
8.台風はなんで風が強いの:気圧傾度
9.なんで強い雨と弱い雨があるの:対流雲

10.台風は前線がないのになんで強い雨が降るの:潜熱

【読者からの質問】
1:天気予報をみると、全般的に夜から朝にかけて風は弱いが、日中になると強くなるのはなぜですか?

2:「空気が膨張すると温度が下る」というのがピンときません

3:成層圏には水蒸気量が少ないために温位の変化があまり無いように思えるのですがどうなのでしょうか?

4:対流圏上層では温位が下層より高いというのがピンとこないのですが

5 :約2平方メートル四方で、沢山の野焼きをし、周囲は高温になる。気温は、約23度、瞬間最大風速6.5m/s この環境で、つむじ風が生じる現象はありえますか?

6:なぜニュージーランドでは雲が近くみえるのですか?


中級講座
気象予報士試験受験者向け

1:収束・渦度の式の理解


露点温度から最高気温を予想できるか

2023年11月12日 | お天気

「露点温度」という気象観測項目の活用性を考えている☞「露点温度って使えそうだが

もっとも、露点温度を測る簡易な気象計は日本製では見当たらないので、ほとんどの読者には無縁の話となりそうだが。

露点温度(℃)は、その空気で結露する温度なので、空気の湿潤度合い、すなわち”湿度”の指標となる。
同時に、何らかの温度の指標にもなりそうで、まずはその空気で可能な最低気温の指標となる

なぜなら、その空気の温度は、露点温度以下には下がらない、ことがはっきりしているから。

あと、気温のように日射による影響を受けないので、暖気・寒気移流の確認に使える。

ならばもうひと推し、最高気温の予測に使えないか(実際には、天気予報を確認した方が早い)。
最低気温と違って理論的には使えそうもないので、そこは実測(統計)的に探ってみたい。

今、手元に名古屋地方気象台の2016年10月1日0時から2017年9月30日24時までの毎時データ(8761個)があるので、
それを元に気温と露点温度の差(気温露点差)を算出し、その年間の分布を見る。
すると年間を通じての75%が、気温露点差は10℃以下と出た。
すなわち、露点温度に10℃を足した値に、同時刻の気温の75%が収まっている。

ということは、朝の露点温度に10℃を足した値が、日中の最高気温の限度(それ以上には暑くならない)と予想してよいかも
(露点温度は日射に影響されないので、日中も朝と同じ値と仮定した場合)。
ありえる最高気温=露点温度+10,というのは頭に入れやすいので、露点温度計を所持している私にはありがたい。

ちなみに実際の気温露点差の分布の範囲は、最低の0℃(理論的最低値に等しい)から最高は31℃にも達している。
気温露点差=0というのは、空気が結露、すなわち湿度100%を意味する。
実際、高層天気図では、気温露点差が3℃以下で示される領域があり、その高度での雨天の指標とされている。
もちろん実際の計測でも気温露点差がマイナスになったことはない。

一方、気温露点差が31℃を超えたのは、5月7日の16時で、気温は24℃で露点温度は-7℃だった
(太平洋側では1-3月に露点温度が0℃を大きく下回ること多い)。
すなわち気温は夏日に近い一方で空気中の水分は冬レベルの乾燥した状態だ(その時の相対湿度は12%と年間最低値)。
GW頃の晴天は、気温が上がっても(30℃を越すこともある)、サラッとして蒸し暑くないわけだ。

これが梅雨〜盛夏になると、露点温度は20℃を常に上回るようになり、
気温が35℃になっても気温露点差は15℃以内に収まるのだ(盛夏でも露点温度が30℃に達することはない)。

ということで、5月を除けば、「今日の最高気温は、露点温度+10に収まる」と思ってなんとかなりそう(確信度75%)。

追記:早速の翌日(13日)、東京文京区にある私設本駒気象台では12:30で露点温度が1.1℃、気温が15.0℃で、「露点温度+10」に収まらない値となった。
考えてみれば、乾燥空気が残っている初夏が範囲外となるなら、乾燥空気が入り込む晩秋も範囲外となっておかしくない。
露点温度が0℃近くなったということは、冬の空気が入り込んできたことは間違いないと思う(実際、天気図は西高東低の完全な冬型気圧配置)。

追記2:そして14時すぎにそこでの露点温度はとうとう0℃を割り込み、14:53に-1.7℃まで下がった。その一方で、気温は14:44に本日の最高気温16.5℃を記録)。冬の空気が入ってきても、日射がまだ最弱レベルでないためだ。
また上記時刻に寒気移流は底を打ち、その後は反転してゆっくり上昇している。
すなわち明日14日は今日よりは寒気が緩むとみてよい。


今時の太陽光

2023年10月18日 | お天気

私設日進気象台における本日10月18日の日射量の最大値は729W/m2(11時43分)で、1250W/m2に達する盛夏時と比べて55%の値。
有害紫外線量の指標であるUVIndexは3.9(11時20分)で、12を越える盛夏時と比べて1/3(33%)に減っている。
かように夏に比べて太陽光が弱くなっている。

この変化は公転による太陽高度角の減少によるもので、その分太陽が視野に入りやすくなるため、人が感じる眩しさは増える傾向にある。

また日射量の減少に比べてUVIndexの減少率が大きいのも知っておく価値がある。
いいかえれば日射量(で測定される太陽光)を構成する他の周波数帯、すなわち可視光や赤外線などの長波は、紫外線ほどには減少(減衰)しないということ。
日の出・日没頃の空が赤いのも、短波長の紫〜青の光が(低高度によって)長い大気中を通るうちに減衰するのに対し、長波長の赤の光は減衰しないで届くから。

秋分(9/23)を過ぎて、立冬(11/8)に向かう今は、一年の黄昏(たそがれ)時に向かっているわけだ。


秋になった?

2023年10月02日 | お天気

10月1日までは夏だったが、2日からは秋になったようだ。

日較差が大きい気温ではなく、太陽光の影響を受けない露点温度(Dew point)を見るとその変化がはっきりする。

我が本駒気象台の観測グラフ(右図)によると、9月30日〜10月1日の間はほぼ同じ露点温度(22℃付近)だったが(この間気温は大きく2回上下している)、2日の明け方前に一挙に8℃下がって14℃になり、日の出を迎えた後も(気温は上がるのだが)、むしろ露点温度はさらに低下している(2日の1個目の縦破線は午前8時)。

前の記事(暑さ寒さも彼岸まで)で示したように、露点温度20℃のラインが、夏と秋との境と見ていた。

実際、夏のじめっとした空気から秋のさらっとした空気に入れ替わった感がする。
ちなみに厳冬期になると、露点温度は日中でも0℃を普通に下回る(→降水時の露点温度の挙動)。
ということで、露点温度は今後は下降トレンドとなる。


暑さ寒さも彼岸まで

2023年09月23日 | お天気

秋の彼岸中日の今日、小雨の降る東京・文京区の自宅(屋上での観測)での気温が21℃(午前9時現在)。
久しぶりにエアコンを止めて過ごしている。

天気図を見ると、秋雨前線が本州の南岸に沿って横たわっていて、その雨だ(昨晩前線が通過する時はかなり強い雨だった)。
ということは、東京は秋雨前線の北側にあるわけだから、秋の大気下に入ったことを意味する。
基本的には、この秋雨前線は北上しない(まだほとんど前線直下なので細かい上下はあリえる)。

なるほど、いくら異常気象下といえども、「暑さ寒さも彼岸まで」という俚言(りげん:言い伝え)は生きていると実感した。

気(陰陽)の理論でいうと、大気の陽気の極が夏至で、夏至以降は陽気が減衰し、陰気が伸長する局面となる。
そして衰えた陽気と伸びてきた陰気が等価になるタイミングが、秋分(彼岸中日)なのだ。
だから「暑さ寒さも彼岸まで」は、経験則であるだけでなく、陰陽理論からも演繹できる。

ただし気温は、大気状態というより太陽(陽気の源)の熱放射の影響を受けるので、天気によっては今後も暑くなることはある(同じ秋雨前線の北側の愛知・日進では晴天のため現在27℃)。
なので大気状態そのものを見るなら、気温より長周波(トレンド的)な変化をする露点温度の方がいい。
露点温度が20℃を切る状態が続くようになると、夏ではなく秋の大気状態に移行したとみなせる。

今現在の自宅での露点温度は昨日から5℃急降下して20.8℃(愛知・日進の露点温度もほぼ同じ変動)。
大気状態が秋になるのは、あと少し先のようだ。


秋空と雲の種類

2023年09月01日 | お天気

例年より暑かった8月を終え、9月に入った。

すると、空の様子も、今までのいかにも水分が多そうな濃厚な積雲から、厚さが減ってちぎれ雲のよう横に広がる層積雲に替わり、上空には秋空の象徴である巻雲が薄く筋を引いている。

このように雲の名称は、「いわし雲」「うろこ雲」などの俗名称よりも、気象学で使っている分類名称の方がシステマティックで理解しやすい。

それによると、雲は、縦に厚い塊の積雲、雨あがりの山の中腹に横に薄くたなびく層雲、そして高高度に濃淡の筋のある巻雲に分けられ、

積雲や層雲よりも高度が高い(巻雲よりは低い)ところに、団子状に広がる高積雲、横一面に広がる高層雲(曇り雲)がある(高巻雲というのは無い)。

そしてそれぞれの中間形態があり、積雲の高度には層積雲(厚さがあって横に並ぶ)、巻雲の高度には巻層雲(太陽を透す薄曇りの雲)、巻積雲(粒状の巻雲)がある。

この他に、積雲が巨大発達した積乱雲(あらゆる気象災害の原因)、典型的な厚い雨雲の乱層雲という乱れ形があり(乱巻雲というのは無い)、この2つ例外的に低高度から高高度までぶ厚い(なので雨をもたらし、昼でも暗くなる)。

さらにこれらの間で種類が変化する。
積雲が大発達する積乱雲は同種での変化だが、ほかにも巻雲にひびが入って巻積雲になり、その高度が下って(厚くなって)高積雲になり、それが凝集して高層雲になり、その厚さが増して乱層雲になる、という、温暖前線接近に伴って天気が悪化していく過程の変化も典型的。


巨大積乱雲が通過:雷雨に”ゲリラ”は不要

2023年07月12日 | お天気

午後3時からの防災の授業を始めた途端、一天にわかにかき曇り、雷鳴とともに大雨と強風にみまわれた。

もちろん窓を閉めた教室からの眺めなので、室内は安全。
そして30分ほどで、空が明るくなり、日が差してきた。

今日は、校舎屋上に設置してある気象観測器によると日中にUVIndexが8.6と、強い日射で紫外線が最高度に達した。
このような暑さなので駐車場に止めていた車の室内温度が上がるのを抑えるため、左右のドアの窓を少し開けていた。

だが、詳細な天気予報(アメミル)を見ると、午後3時に雨が降るというので、昼休みに車のドアを閉めにいった。

そうしたら、予報通りの雨となった。
積乱雲単体の通り雨(夕立)だが※、観測器では最大瞬間風速が15時6分に32.5m/秒を記録した。
※:私は決して「ゲリラ雷雨」というマスコミ用語は使わない。定義が不明確だから(通常の雷雨とどこが違う?)。少なくとも雷注意報が発令されているなら、戦闘行為の形容詞として”ゲリラ”とはいえない。

大型台風の中心付近の風速に相当する。
下手したら、観測器が倒れる強さ(足元にブロックを重ねて倒れないよう補強している)。
実際、名古屋市内で巨木が倒れた。
このような積乱雲が次々発生して帯状になる”線状降水帯”ではないので、この程度で済んだ。

今は大気が不安定なので、このような天気の急変(特に夕方前)に注意したい。
車の窓を閉めておいてよかった。


太陽熱=紫外線の強さではない

2023年05月17日 | お天気

真夏日(30℃以上)の名古屋。
実は真夏日(≠猛暑日)は毎年5月に迎えるので、異常ではない。

テレビ取材を見ていたら、今日の太陽光の熱さを紫外線の強さとみなしていた人がいた。

紫外線はX線と同じく人間には知覚できないので、人間はその強さを感じることはできない。

太陽光を浴びて感じる”熱さ”は、まずは気温(空気の温度)がベースとなって、それに太陽光の赤外放射の加熱作用がプラスされたもの(冬は気温が低いので赤外放射だけでは暖まらない)。
すなわち、紫外線ではなく赤外線の効果(赤外線も不可視だが、こちらは熱として感じる)。

ちなみに私設日進気象台での本日のUVIndex(有害紫外線指標)の最大値は6.0で、これは3月並みの値(盛夏には10を上回る)。
すなわち、決して高くはなく、黒づくめで防御する段階(8以上)ではない(私はつばの広い帽子を着用)。

世間の人は、太陽放射による電磁波を、感じる事ができないはずの紫外線一辺倒で判断して(マスコミ経由の気象予報士/美容皮膚科医の影響か)、紫外線・可視光・赤外線に分けて対応しない。

たとえば太陽放射の防御に有効な日傘(私も愛用)は、紫外線防御のためだけではなく、
赤外線放射による加熱も防御でき、それは熱中症予防に有効なのだ。
太陽放射を浴びた皮膚の表面温度は、赤外線効果によって気温をはるかに上回る温度に熱せられる(メラニン色素による皮膚の赤化反応は紫外線に対するもの)。
日傘は「持ち歩く日陰」として赤外線による皮膚温上昇(暑さの直接原因)も防いでいる。
それなのに、私のような男が日傘を差していると、男のくせに肌の美容を気にしていると勘違いしている女性がいるが、とんだ無知・無理解、ジェンダー差別だ。

計測値にもとづく知的な判断ができない社会が悲しい。